カソリの林道紀行(1)「九州縦断編」(その1)

 (『バックオフ』1998年8月号 所収)

第1本目のダートは、三大カルストの平尾台           
「門司→鹿児島」の九州縦断を目指し、“ダート300キロ組”のカソリ&B武田、東京港のフェリー埠頭に集合。バイクはカソリがGPSバージョンのDJEBEL250、B武田がXRバハだ。

 バイクともども意気揚々と19時10分発のオーシャン東九フェリー「おーしゃん さうす」に乗り込み、甲板に上がる。離れゆく夕暮れの東京に向かって缶ビールで乾杯。何かというとすぐに缶ビールで乾杯する2人なのだ。

 昨年(1997年)、カソリ&ブルダスト瀬戸のコンビで走った「東京→青森」のダート300キロはメチャクチャおもしろかった。で、今回はその第2弾、「門司→鹿児島」のダート300キロなのである。

 船中で2泊し、東京を出港した翌々日の午前5時、「おーしゃん さうす」は北九州の新門司港に入港。九州に上陸すると、まっ先に九州最北端の岬、部崎に行った。DJEBELのGPSを見ると、北緯33度57分22秒を示している。このGPSはすごい精度だ。

 部崎の灯台前ではなんと、昨年、一緒にモンゴルを走ったRMX250Sに乗る北川直樹さんにバッタリ出くわした。これが旅のおもしろさ。彼は九州林道まつりに行くところで、“旅は道連れ”とばかりに、一緒に走ることにした。北川さんはエライのだがBO(『バックオフ』)読者の中ではただ一人、林道まつりの皆勤賞をつづけている。

 九州縦断の“ダート走り初め”は、“日本三大カルスト”で知られる平尾台。どこから入っていったらいいのかわからずに、「あの山並みを目指そう」と、小倉南区の長野という集落から車1台が通れるくらいの狭い林道を走った。

 8キロのダートを走ると舗装路に出、貫山の山頂近くに登る。そこからダートを下り、平尾台に入っていった。

 平尾台ではドリーネ(円形の凹地)やポリエ(石灰盆地)、カレンフェルド(石塔原)などのカルスト地形が見られるが、B武田は「羊が群れているようですね、カソリさん」と、カメラマンらしい感性でいう。案内板を見ると、そのあたりは“羊群原”と名づけられていた。

 平尾台とその周辺のダート14キロを走り終えると、次に県道64号の味見峠の旧道を走る。ダート5キロ。その次は五徳越。少なくても4、5キロのダートを期待したのだが、ダート区間は1キロだ。

 R201に出る。田川から筑豊国境(筑前と豊前の境)の峠の烏尾峠を越え、飯塚へ。
 田川、飯塚といえば、かつては“黒いダイヤ”、筑豊炭田の石炭でおおいに栄えたところだ。時代が石炭から石油に変わり、さびれてしまったが、そんな歴史の移り変わりがもの悲しい。飯塚からは、さらに八木山峠を越え、篠栗へ。

 ここでは国道を離れ、荒田高原のダートを走った。4、5キロのダートを期待したのだが、わずかに2キロ。おまけに林道上に横たわる大きなヘビを見てしまい、ヘビが大嫌いなカソリは青くなった。

 福岡に出たところで、昼食にする。
 ここまで走ったダートは22キロ。道を間違えたり、入口がわからずにウロウロしたりと、大変な労力をかけた割りにはダートの距離が延びない。
「でも、まあ、いいか、おもしろい峠越えができたのだから」
 といって、自分で自分をなぐさめた。

 福岡から久留米へ。そして全線が舗装路の耳納山スカイラインで耳納山地に入る。高良大社のある高良山、発心山と通り、東に向かって走るほどに耳納山地は高度を上げていく。その途中でダート2キロの耳納林道を往復した。

 耳納山地の最高峰は標高802mの鷹取山。そこからの眺望は抜群。北側に目を向けると、“筑紫次郎”で知られる九州第一の大河、筑後川の流れがキラキラ光り輝き、その流域の平野には福岡県の田主丸から吉井、浮羽といった町並みがつづき、その右手には大分県の日田の山並みが連なっている。

 目を南側に向けると、福岡と熊本の県境に連なる筑肥山地の山々が一望できる。丸みを帯びたやわらかな山容の山並みだ。

 鷹取山の山頂では、裸になって日光浴しながらしばしの昼寝をした。
 この耳納山地の南側、上陽町のサロジ池キャンプ場が「九州林道まつり」の会場だ。

 会場に到着すると、九州での林道まつりをぜひとも開催したいと、1年がかりで準備を進めてきた清田幸一さんらに歓迎された。ここではなんともうれしい九州のライダーのみなさんたちとの出会いが待っていた。熊本からやってきた中年ライダーのみなさんには熊本名物の馬刺しをご馳走になったが、うまかった!

 同じく熊本の「世界一周」ライダー森永博文さんとは久しぶりの再会だ。一緒にオーストラリアを走った「豪州軍団」九州組の錦戸陽子さん、北川清二さんとの再会もうれしいものだった。「日本一周」に旅立ったもんがぁ~さとみさんも来ていた。

 いつものように焚き火のまわりでおおいに飲み、おおいに語り合ったが、これが林道まつりの大きな魅力だ。東京から飛行機で駆けつけてきてくれた「BO」編集長の瀬戸さんもトコトンつき合ってくれた。

“焚き火のカソリ”は最後まで起きているのをモットーにしているが、今回はとうとう夜が明けてしまい、6時を過ぎたところで2、30分、ゴロ寝しただけ。起きるとすぐに、大阪から遠征してきた“渓流浴ラー・ワニー”こと鰐淵渉さんの先導で、有志一同、近くの渓流で朝一番の“渓流浴”をする。これでパッチリと目がさめた。

 九州林道まつりがすべて終わったところで、大分県の天瀬温泉に行く。日田の奥、R210の旧道沿いにある温泉だ。林道まつりの参加者10数人が同行してくれた。ここには、玖珠川(筑後川の上流)の河畔に「薬師の湯」、「代官湯」、「益次郎湯」、「鶴舞の湯」、「神田湯」、「古湯」と6つの混浴露天風呂がある。

 そのうちの「薬師の湯」に入る。入浴料の100円は料金箱に入れる。もんがぁ~さとみさんと錦戸陽子さんが一緒で、我々は彼女ら2人を囲んで長湯した。これぞ、混浴! おかげで誰もがゆでダコのようになった。林道まつりに来ると、こんなにいいこともあるのだ。

林道を走り、名湯の共同湯に入り、熊本へ
 天瀬温泉で九州林道まつりの参加者のみなさんと別れたあと、カソリ&B武田の“ダート300キロ組”は、R210で水分峠に向かう。

 峠近くから自衛隊の日出生台演習場周辺のダートに入っていった。雨‥‥。まずはダート7キロの野倉林道を走り龍門ノ滝に出た。

 ここでも、うれしい出会いが待っていた。
「龍門茶屋」の諫山博幸さんだ。
「カソリさんに会えてうれしいですよ」
 といって喜んでくれた。

 XLR250に乗る諫山さんには日出台周辺のダートをこと細かく教えてもらった。
 さらにつくりたてのチマキをご馳走になった。素朴な味わい。チマキを包む笹の葉の香りがたまらない。我らオフロードライダーは会えばすぐに友達になる。

 龍門ノ滝からは裏平家林道に入るつもりでいたが、道を間違えた。行き止まり林道を往復したり、さきほどの野倉林道をまた走ってしまったりとさんざん苦労したが、やっとの思いでダート9キロの裏平家林道を走ることができた。そのあとダート12キロの森平家林道でカルト山を一周する。雨と濃霧にたたられ、なんとも不気味。

 R210に出、水分峠にテントを張って野宿した。
 水分峠からやまなみハイウエイを走り飯田高原へ。そこから九州でも一番豊かな自然の残る九重連山の黒岳山麓の道を走り、いったん湯平温泉に出る。共同湯で朝風呂に入り、扇山林道に向かっていく。ここでも入口を間違えた。行き止まり林道を1時間以上もウロウロしたが、ついにダート12キロの扇山林道を走りきり、飯田高原に戻った。

 飯田高原からは筌ノ口温泉の共同湯に入り、大分熊本県境の涌蓋山北側のダートを走る。ここでもさんざん道を探し、間違えて廃道寸前のダートに入ったりしたが、無事に3キロのダートを走り、熊本県側のはげの湯温泉に出た。

 はげの湯温泉から隣りの岳湯温泉にかけての一帯はすごいところで、あちこちから噴気が立ちのぼっている。地球の持つ膨大なエネルギーを感じさせる光景。その近くの山川温泉の共同湯に入る。湯の華が浮かぶ若干、白濁した湯。いい湯に満足し、小国の中心、宮原に出た。

 小国からはR387で熊本大分県境の下筌ダムへ。ダム周辺のダートを4キロ走り、下筌ダムの上を渡り、祝川林道に入っていった。やっとといった感じで“本格派林道”に出会う。それでもダート区間は8キロとけして長くはない。それを最後にR387に出、兵戸峠を越え熊本を目指した。

 新門司港から673キロを走り、JR熊本駅前に到着。ここまでのダートの走行距離は113キロ。ダートコースを探すのに苦労した「門司→熊本」だが、短いダートを走りつないでよく来たものだ。さあ、目指せダート300キロ!

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


カソリの林道紀行(2)「九州縦断編」(その2)

 (『バックオフ』1998年9月号 所収)

後半戦の出発点は熊本。阿蘇山麓で野宿大宴会だ!
 九州縦断の後半戦の出発点は熊本だ。
 熊本といえば、なんたって熊本城ということで、カソリ&B武田の“ダート300キロ組”は、日本の名城、熊本城の前に立った。カソリはGPSバージョンのDJEBEL250XC、B武田はXRバハ。熊本城は肥後54万石のシンボルだけあって見事な城だ。

 九州縦断の前半戦「門司→熊本」ではダートを113キロ走った。ダート300キロを達成するためには、「熊本→鹿児島」で187キロのダートを走破しなくてはならない。B武田に「なんとしても、300キロを突破しよう」と、重々しく告げ、DJEBELのGPSの目的地をJR西鹿児島駅に設定し、夕暮れの迫る熊本城前を走りだした。

 熊本からまずはR57で阿蘇に向かう。
 国道沿いのスーパーで缶ビール、日本酒、焼酎の酒類と食料をゴソッと買い込み、阿蘇山麓で盛大な野宿宴会。テント前にシートを広げ、そこをB武田との宴の膳にした。

 熊本名物の馬刺しを肴にカンビールをグワーッと飲む。
「ウメー!」
 と、カソリ、思わず絶句。

 さらにシイラとヒラメの刺し身、カツオのタタキを肴にする。これらは閉店間際に買ったものなので、すべて半額だ。“半額”というだけで、よけいにうまさが増し、あっというまに缶ビールを飲み尽くす。

 そのあと、ストーブで水餃子をつくり、肉を焼き、それをつまみに酒、焼酎を飲む。食べながら、飲みながら、B武田との話しが際限なくはずむ。これが野宿宴会のよさというものだ。最後はレトルトのご飯と味噌汁。目の前には阿蘇外輪山の黒々とした山並みが横たわっていた

 翌朝は夜明けとともに出発。
 阿蘇外輪山の大きな割れ目の立野を通り、阿蘇カルデラに入っていく。JR豊肥線の宮地駅前から阿蘇・仙酔峡へ。高岳、中岳から流れ出した溶岩がつくり出した峡谷だ。

 ここはミヤマキリシマの群生地で知られているが、残念ながら花の季節はほぼ終わっていた。仙酔峡は眺望抜群。阿蘇外輪山の向こうには、たなびく雲の上に、九重連山の山々が顔をのぞかせて連なっていた。

 宮地駅前に戻ると、ダート区間がわずかに残る日ノ尾峠を登っていく。幅の狭い峠道を登っていくと、高岳と根子岳の間の峠周辺に2キロのダート区間が残っていた。2キロといえども貴重な阿蘇のダートルート。ここ以外に、阿蘇にはダートの峠越えルートはない。

 日ノ尾峠を越えると、南阿蘇の高森の町。南阿蘇鉄道の終点、高森駅前にある食堂で朝飯にしたが、朝飯前の日ノ尾峠越えは心に残るものだった。

 高森から阿蘇外輪山の清水峠に向かう。
 阿蘇は世界最大の大カルデラ。その阿蘇外輪山だが、北阿蘇は風化されてなだらかなのに対し、南阿蘇は険しくキューンとそそり立ち、峠がはっきりしている。それだから“峠越え”には南阿蘇のほうがはるかにおもしろい。

 高森の周辺にはR265&R325の高森峠のほかに中坂峠、清水峠と阿蘇外輪山の峠があるが、そのうちの、清水峠を越えるのだ。

 だが…、道を間違え、ガレた山道に入ってしまった…。そのあげくに、倒木にリアを滑らせ、転倒。B武田にさんざん笑われた。それにもメゲずに、今度は清水峠への道に入り、峠を目指して登っていく。峠近くからの眺望は迫力満点だ。間近に眺める中央火口丘の“阿蘇五岳”はまぶたに焼きつくほどのものだった。

 清水峠を越え、R218の矢部に出た。
 さー、ここからいよいよ、九州ナンバーワン林道の内大臣椎葉林道に入っていく。

 矢部からR218を4キロほど砥用方向に行き、“内大臣”の標識に従って国道を左折し、7キロ走ると、緑川にかかる内大臣橋にさしかかる。橋の上にバイクを停め、下をのぞき込むと、あまりの谷の深さに目がくらむほどだった。

 内大臣橋を渡り、内大臣椎葉林道のダートに入っていく。内大臣川沿いの連続する小刻みなコーナーを走り抜けていく。

 内大臣川の流れを離れると、熊本・宮崎県境の椎矢峠に向かって登っていく。かなりラフな路面で、石ころをバンバンはね飛ばしながら走る。このあたりは九州山地でも最も山並みが高く険しいところで、九州山地の最高峰、国見岳(1739m)の山頂直下を通っていく。

 林道入口から25キロ走ったところで、標高1280mの椎矢峠に到着。熊本県側の目をやると、雲仙の普賢岳がはっきりと見える。峠周辺のみずみずしい緑が色鮮やか。いろいろな鳥のさえずりが聞こえてくる。

 椎矢峠を境にして熊本側の内大臣林道から宮崎側の椎葉林道に変わる。耳川の源流へと下っていったが、宮崎側のほうがはるかに路面が整備されていて走りやすい。

 こうしてダート38キロの内大臣椎葉林道を走りきり、さらに三方山林道と、標高1350mの峠、松木越を越えるダート16キロの松木内ノ八重林道を走り、椎葉村の中心、上椎葉に出た。

 九州の椎葉は関東の湯西川や北陸の五箇山、四国の祖谷などと同じ平家落人伝説の地。壇之浦の合戦で滅んだ平家の残党がこの地に逃げ落ちた。ここには平家屋敷の「鶴富屋敷」がある。

 椎葉の食堂で昼食を食べ、椎葉五家荘林道で宮崎・熊本県境の峠、椎葉越に向かう。
 何年か前に走ったときは20キロのダートコースだったが、今では全線が舗装路。県境の峠を越えて眺める九州山地の山岳風景は見事だ。

 峠を下ったところでT字路を左折し、ダートに入る。標高1645mの上福根山の山頂近くまで延びる林道なので“上福根山林道”とでもしておこう。

 上福根山林道のラフなダートを走り、尾根に向かって登っていくと、シカがバンバン飛び出してくる。すごい数のシカだ。やがて標高1500mを越える高さの尾根に出る。この上福根山林道は九州の最高所を走る林道なのだ。

 幾重にも重なって連なる九州山地の山々や足下にパックリとあいた深い谷を眺めながら走る。林道入口から20キロ地点で行き止まりになるが、この上福根山林道の往復40キロというのはオススメのダートコースだ。

 さきほどのT字路まで戻り、五家荘の樅木に下っていく。ところが樅木を目の前にしたところで大規模な崖崩れ。大迂回を余儀なくされ、椎葉からR265→R218→R445と走り、二本杉峠での野宿となった。

 翌朝、二本杉峠を下り、五家荘を走り抜け、「五木の子守唄」で知られる五木村に入る。ここでは全部で8本の林道、合計40キロのダートを走った。

 五木村から白蔵峠を越え、水上村の“球磨川水源”へ。ここでバイクを停め、“源流浴”をする。これはもう、クセになりそう。これからは目ぼしい川の源流までいったら、必ず“源流浴”をしようと思うのだった。

 くま川鉄道の終点、湯前の駅前食堂で昼飯の焼き肉定食を食べ、パワーをつけ、湯前からアクソー林道に入っていく。

 熊本・宮崎の県境近くまで行き西米良の山々を眺めたところで引き返し、湯前飯盛林道経由で熊本・宮崎県境の峠、横谷峠上の集落、横谷に出た。30キロのダートを走り、横谷から湯前にと下った。門司を発ってからのここまでのダート合計は294キロ。あと6キロで九州縦断ダート300キロの達成だ。

 湯前からR219で免田に行き、国道を左に折れ、前方に連なる白髪岳を中心とした山並みに向かっていく。山麓の上村の薬師温泉の湯に立ち寄ったあと、榎田大川筋林道に入る。林道入口から6キロ地点でDJEBELを停め、ダート300キロ達成をB武田と喜び合う。
「やったゼ!」
 という気分。

 そこからさらに2キロ走り、温迫峠に到達。眺望抜群。球磨川流域の盆地を見下ろす。その向こうには五木へとつづく山並みが霞んでいた。

 名残おしい温迫峠に別れを告げ、峠を下ると、そこは九州第2の大河、川内川の源流。宮崎県に入ると、榎田大川筋林道は狗留孫林道になる。この2本の林道は連続した27キロのダート。川内川上流の見事な渓谷の狗留孫峡を見ながら走り、R221に出た。

 えびの市の加久藤のスーパーでごそっと食料と酒を仕入れ、霧島を越えて鹿児島県に入る。霧島山中の林田温泉から九州縦断の最後の林道、日添林道の入っていく。目指すは山之城温泉だ。

 ダート3キロを走ると、山之城温泉に到着。すごいところで、川全体が温泉になっている。人工物は一切ない。ここでB武田との最後の野宿宴会。

 翌朝、さっそく2人で川の湯に入る。最高! 
 かなりの水量の川がジャスト適温の湯になっている。
 まさに大自然の驚異だ。 

 山之城温泉の湯を存分に堪能し、鹿児島へ。ゴールのJR西鹿児島駅前に到着すると、DJEBELのGPSには目的地マークのフラッグが出た。ダート327キロを走った九州縦断だった。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


カソリの林道紀行(3)「四国一周編」(その1)

 (『バックオフ』2003年6月号 所収)

 林道を次から次へと走りつなぎ、ダート300キロを目指す「ダート300キロ走破行」は最高におもしろい。「ダート命!」のカソリには、ぴったりのオフロードツーリング。

 今回の舞台は四国。
 東京からオーシャン東九フェリーで渡った徳島を出発点にしての「四国一周」。その間では1本でも多くの林道を走り、ダート距離を1キロでも多く延ばそうとした。その結果、前半戦の「徳島→高知」では8本の林道を走り、185キロのダートを走破した。

 メインは徳島県の日本最長ダートの剣山スーパー林道。
 高知県にも何本もの林道がある。
 四国はうれしい「林道天国」!!

日本最長ダートに突入
「ダート300キロ走破行」の第1弾は1998年の「九州縦断」だ。
 門司から鹿児島へと九州を縦断し、その間では26本のダートを走り、ダート距離の合計は目標の300キロを超え、327キロになった。

「九州縦断」は最高におもしろかったので、日本全域の「ダート300キロ走破行」をやろうと、そのとき固く決心したのだった。
「九州縦断」から5年の歳月が流れたが、ついに第2弾目の「四国一周」をやるときがきた!

 3月24日、東京港フェリー埠頭。
 オーシャン東九フェリーの徳島経由新門司港行き「おーしゃん いーすと」(1万1500トン)にDR-Z400Sともども乗り込んだ。『バックオフ』編集部の河合宏介さんが同行してくれる。河合さんはDJEBELだ。

「おーしゃん いーすと」は19時10分に出港。
 レストランでカツオのたたきとタコの刺し身を肴にビールを飲みながら、遠ざかっていく東京の夜景を見る。
「待ってろよ、四国の林道よ!」という気分。
 ぼくはフェリーで東京を離れていくこの瞬間が好きなのだ。 

 翌25日、13時30分、徳島港到着。
「さー、行くゾ!」と気合一発、DR-Z400Sの軽快なエンジン音を響かせ、「四国一周」の第1本目の林道、剣山スーパー林道に向かっていく。
 胸の高鳴りが押さえられない…。

 国道55号から県道16号に入り上勝町へ。林道を走る前に、まずは温泉。月ヶ谷温泉(入浴料500円)の打たせ湯に打たれ、大岩風呂の湯につかった。湯上がりに食堂で食べた押しずしのアメゴ(アマゴ)ずしがうまかった。これはおすすめだ。

 さて、剣山スーパー林道だ。
 上勝町の農協のスタンドでガソリンを満タンにする。農協のスーパーで食料を買い、酒店でカンビールを買い、いざ、出発。
 第1夜目は剣山スーパー林道で野宿する予定なのだ。

 上勝町の中心から1キロほど走ると「スーパー林道起点」の碑が立っている。そこから9キロ走ったところで待望のダートに突入。渓流沿いに走り、最後の沢を渡ると、一気に旭丸峠に向かって登っていく。

 林道起点碑から18キロで神山町との境の旭丸峠に到着。途中、短い舗装区間が2区間、新しくできていた。
「もうこれ以上は、舗装されませんように!」と祈りたくなるような心境だ。

 日本最長ダートだからこそ、多くの人たちが行くのであって、舗装林道になってしまったら、剣山スーパー林道はおもしろくも何でもない。
 ここまでが剣山スーパー林道の第1セクション。旭丸峠からは野間殿川内林道で神山町に下っていける。

 旭丸峠でテントを張って野宿する。里では桜が咲き始めたというのに、日が落ちたあとの峠の寒さは冬とまったく変わらない。寒さに震えながら河合さんと缶ビールで乾杯。お互いに世界を駆けめぐっている者同士、ぼくは今までに126ヵ国をまわり、河合さんは109ヵ国をまわった。そんな2人が剣山スーパー林道の峠でサハラ談義をした。

剣山に向かって走る!
 翌日は夜明けともに出発。
 四国山脈の稜線上を走り、国道193号と交差する土須峠へ。眺望抜群。吉野川の谷間の向こうには、讃岐山脈の山々が青く霞んで見える。旭丸峠から土須峠までが第2セクション。この間は8キロで全線がダート。ここではニホンカモシカを見た。

 土須峠からは第3セクションを行く。国道193号との重複区間の舗装路を走り、キャンプ場にもなっている「ファガスの森」の前を通り、19キロ走って川成峠に到着。ここまでが第3セクション。峠では建設中の木屋平木沢林道と交差する。

 第4セクションでは、四国山脈の南側の幾重にも重なり合った山々を眺めながら走ると、やがて正面に剣山が見えてくる。穏やかな、ゆるやかな山容。
 その剣山に向かってDRで突っ走る。
 四季美谷温泉に下っていく道との分岐までが第4セクションで24キロの全線がダートだ。

 いよいよ最後の第5セクション。
「山の家」まで登り、木沢村と木頭村の境のトンネルに入った。その瞬間、「あー!」と思わず声をあげて急ブレーキをかけた。トンネルの中央部には青白く輝く氷の塊ができていた。あやうくその氷の塊に激突するところだった。

 分岐から5キロの地点で、残念ながら引き返す。木頭村側が走れるようになるのは4月下旬。ここまでの剣山スーパー林道のダート走行距離は65キロになった。

 剣山スーパー林道を走り抜くことができなかったので、分岐まで戻り、四季美谷温泉の前を通り、木沢村、上那賀町経由で大きく迂回し、国道195号で木頭村に入った。

 国道沿いの手作りパンの店で昼食にし、第2本目の東川千本谷林道へ。木頭村側の剣山スーパー林道入口の手前で国道を左折。橋の脇から入っていく。林道の入口からダートなのがうれしい。

 千本谷の渓流沿いの道。林道には尻の白いシカや野ウサギが飛び出してくる。
 渓流を離れると、徳島・高知県境の駒瀬越に向かって登っていく。この前走ったときは県境までダートだったものが、その手前で舗装路に変わっている。駒瀬越のトンネルを抜けて高知県に入る。高知県側は全線が舗装路だ。

 駒瀬越から16キロ下った分岐を右折し、第3本目の張川林道に入っていく。
 この林道は標高832mの宝蔵峠を越える「峠越え林道」で、峠周辺からの眺めが抜群にいい。ダート距離も25キロあって走りがいがある。入口から出口まで、全線がダートなのも、我ら林道派ライダーにはうれしい限りだ。

 このあたりはもう太平洋にかなり近いのだが、海に近いということをまったく感じさせないほどに山深いし、連なる山々は険しい。畑山温泉に通じる舗装路に出ると前方はパーッと開け、やがて安芸市の太平洋の海岸に出た。

 国道55号で室戸岬の方向に走り、奈半利町で第4本目の須川林道に入っていく。いっぺんに山中に入り、国道から4キロ走った地点でダートになり、ゆるやかな峠を越える。その峠周辺からの眺めがよかった。稜線近くを走り抜け、分岐からは野川林道で北川村の国道493号に出、奈半利に戻った。

『ツーリングマップル』を見ながらのプラニングでは、ほんとうは須川林道をそのまま北に走りたかった。装束峠を越えてそれにつづく蛇谷林道を走り、国道493号に出、県道101号経由でさらにその北のロングダート、笹無池ヶ谷林道を走って徳島県の海南に出るつもりでいた。だが、夕暮れが迫り、残念ながら諦めざるをえなかった。

 すごく悔しいことだけど、ぼくはこの走れなかったことが後につづくと思っている。走り残したことがあると、それがいつも頭にひっかかり、次の機会にぜひとも「走ってやろう!」という気になるものだ。

 4本の林道、合計121キロのダートを走り終え、我らツーリングライダーのオアシス、物部村の「ライダーズイン奥物部」に向かう。夜須で国道55号から県道51号に入り、物部村へ。まずは「ライダーズイン奥物部」のレストラン「アクティブ21」で夕食。とんかつ定食(880円)を食べたが、ぼくはここのとんかつが好きなのだ。

物部はいいところだゾ!
 物部村の「ライダーズイン奥物部」では、忘れられない一夜を過ごした。
 なんとカソリが来るからと、「ライダーズイン奥物部」の山本和民さんと奥様、物部村役場の萩野貴子さん、高月陽生さんが、土佐の地酒、「土佐鶴」の一升ビンをテーブルにどんと置いてぼくを待ち構えていてくれた。

「土佐鶴」をグイグイ飲むほどに、みなさん方との話がおおいにはずむ。
 ぼくは1999年の「日本一周」のときに「ライダーズイン奥物部」に泊まったが、山本さんはそれをつい昨日のことのように覚えていてくれた。

 村役場企画室の係長をしている物部美人の萩野さんは、「地球元気村」の風間深志さんのことをよく知っていて、風間さんの話題でもおおいに盛り上がった。

 若い高月さんは大阪の高槻の人。バイク大好きの高月さんはツーリングで物部にやってきて、すっかりこの地が気に入り、なんと村の採用試験に受かって村役場の職員になった。
 ちなみに高月さんのバイクはDR-Z400S。名刺には「ライダーズイン奥物部」が写真入りでのっている。

 萩野さんの名刺は物部村の名峰、というよりも四国の名峰、三嶺(1893m)の写真入り。名刺の裏には物部村のひと口紹介がのっている。見ごろ見どころには別府峡・西熊渓谷の紅葉(10月中旬~11月中旬)が紹介されているが、とくに別府峡の紅葉はすばらしいもので、四国では面河渓の紅葉と並んで双璧を成している。
 物部のみなさんと話していると、ぼくまで物部村の宣伝をしたくなる!

 翌日は「ライダーズイン奥物部」を拠点にしてまわる。
 6時前に出発。朝飯前に第5本目の畑山中津尾林道を走る。物部川の支流、舞川沿いの道幅の狭い県道29号から畑山林道に入り、3キロのダートを走り抜けたところでT字路を左へ、中津尾林道に入っていく。中津尾の集落を通り過ぎたところでダートになり、稜線上へ。稜線を縫って走り、国道195号に下っていく。
 朝飯前にはちょうど手頃な、路面のよく整備された走りやすい林道だった。

「ライダーズイン奥物部」に戻ると、朝食を食べ、8時に出発。第6本目の祖谷山林道を目指す。雨が降りだし、雨の林道ツーリングになった。

 物部村の中心、大栃から県道49号で矢筈峠に向かっていく。その途中には笹温泉。ここは入浴のみの温泉で、入れるのは土、日、月の週3日。いつか入ろうと思っているのだが、なかなか入れない…。

 高知・徳島県境の矢筈峠まで舗装が延び、峠を越えて徳島県側に入ると、ダートの祖谷山林道になる。雨は激しさを増し、路面には大きな水溜まりができている。盛大な水しぶきを巻き上げながらDR-Z400Sを走らせ、ダート12キロの祖谷山林道を走りきって四国の名物国道、「与作国道」の国道439号に出た。

豪雨の高知に到着だ!
 国道439号で徳島・高知県境の京柱峠へ。四国一の絶景峠だが、大雨と濃霧で何も見えない。峠の茶屋で「しし肉うどん」を食べ、体をあたためたところで峠下の大豊町西峰に下っていく。

 そこから第7本目の楮佐古小檜曽林道に入っていく。国道から5キロ地点でダートに突入。西峰林道との分岐を過ぎ、急カーブのコーナーを曲がるごとに高度を上げていく。けっこう路面の荒れた林道だ。大豊町と物部村の境の峠周辺は平坦な地形でクマザサがおい茂っている。

 峠を越え、物部村の楮佐古へと下っていく。物部村側の方がはるかに路面が整備されていて走りやすい。修験の山として知られる高坂山への道との分岐を過ぎるとまもなく舗装路に合流。ロングダートの楮佐古小檜曽林道を走り抜けて出た楮佐古の集落は、楮佐古川の谷間に棚田が広がり、いかにも山村を感じさせる風景だった。

 物部村大栃の「ライダーズイン奥物部」に戻ってきた。
 ほんとうは時間に余裕があれば、懐かしの「林道まつり」の開かれた西熊峡に行き、そこから西熊別府林道に入り、別府峡温泉に立ち寄り、国道195号で大栃に戻ってきたかった。が、断念し、最後の第8本目の谷相林道に向かう。

 雨に濡れた「ライダーズイン奥物部」に手を振って別れを告げ、国道195号で隣町の香北町へ。町役場のある美良布で国道を右折し、物部川を渡り、谷相の集落を通り過ぎたところで谷相林道のダートに入っていく。激しい雨をついて走り、大豊町との境の松尾峠を越え、国道439号に出た。ダート14キロの谷相林道だった。

 国道439号から国道32号に入り、高知に向かう。
 もう、豪雨の様相。風も強い。
 根曳峠を越え、17時45分、高知のはりまや橋に到着。「徳島→高知」では全部で8本の林道を走り、ダート距離の合計は184キロになった。
「目指せ、ダート300キロ!」

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


カソリの林道紀行(4)「四国一周編」(その2)

 (『バックオフ』2003年7月号 所収)

「四国一周」の前半戦、「徳島→高知」では全部で8本の林道を走り、ダート距離の合計は184キロになった。「ダート300キロ走破」はすでに射程圏内だ。
 後半線の「高知→徳島」では1本でも多くの林道を走ろうと、「ダートの鬼!」になるカソリ。目指せ、ダート300キロ!!

出発点は高知駅前
 3月28日午前6時、DJEBEL250XCともども「四国一周」後半線の出発点、高知駅前に立った。空には一片の雲もない。抜けるような青空が広がっている。
 ダート300キロ走破を目指して、気分はいやがうえにも盛り上がる。

 ここでは四国をまわっているもんがぁ~さとみさんと落ち合った。彼女のバイクは13万キロも走っているセロー。これで世界最長ダート、オーストラリアの「キャニングストックルート」も走破している。
 そんなもんがぁ~さとみさんが一緒に走ってくれることになった。

「さー、行こう!」
 まず我々が向かったところは五台山だ。
 山頂の展望台からは高知の市街地を一望。目の前には奥深くまで切れ込んだ浦戸湾、その向こうには太平洋が広がっている。市街地のすぐ後まで山並みが迫っている。

 そんな風景を目に焼き付けたところで、高知からは国道32号で根曳峠を越えて大豊へ。大豊では樹齢3000年という「日本一の大杉」を見た。北大杉と南大杉の2本からなる夫婦杉の巨木には、まるで神々でも宿っているかのようだった。

 大豊からは「与作」で知られる国道439号を西へ。最初に郷ノ峰峠を越える。次に大峠を越える。日本各地にある大峠だが、ここでは「おおと」と読む。西日本では峠のことを「たわ」とか「たお」というが、四国ではそれが「と」とか「とう」になる。

 国道439号の3番目の峠、矢筈峠を越えると、四万十川の水系に入る。「日本一の清流」で知られる四万十川の流域は、四国でも、というより日本でも有数の「林道天国」なのだ。
  
四万十川の源流地帯へ
 国道439号の矢筈峠は短いトンネルで貫かれている。
 そのトンネル入口の手前を左に折れ、四万十川源流の山、標高1336mの不入(いらず)山の北東側の峠を越え、四万十川源流の村、東津野村に入る。そこからが待望のダート。今回は全部で22本のダートを走ったが、その記念すべき第1本目はダート2・1キロの、この東津野村道だった。

 峠を下っていったところで、分岐する船戸林道に入る。ダートを2・8キロ走ったところには「四万十川源流の碑」が建っている。

 何本もの川が大きく蛇行しながら流れる四万十川なので、どれが本流なのかわかりにくいが、この不入山から流れ出る船戸川が本流になる。船戸川は松葉川になり四万十川になる。河口近くでは渡川と呼ばれている。全長192キロ。中村市の下田港近くで太平洋に流れ出る。

 船戸林道の往復、ダート5・6キロを走ったあと、国道197号の船戸へ。ここはまさに「四万十川源流の里」だ。船戸から国道197号を西へ。ゆるやかな峠を越えると、今度は北川の流れになる。この北川も不入山から流れてくるが、四万十川最大の支流、梼原川に合流する。

 四万十川の源流地帯では、出会う川、1本づつを地図と照らし合わせて確認してみるとおもしろい。そうすることによって四万十川の全体像が見えてくる。

 国道197号から北川沿いに走る国道439号へ、そして3本目の林道の鈴ヶ森林道に入っていく。国道からすぐにダートになるところがすごくいい。

 四万十川上流の山岳地帯を一気に駆け登り、国道から7・1キロ地点で東津野村と大野見村の境の名無しの峠に到達。鈴ヶ森(1054m)のすぐ北側の峠だ。峠自体は切り通しで、見晴らしはよくないが、その手前では雄大な山岳風景が眺められた。

 峠でバイクのエンジンを停めと「ドドドドー」っと、キツツキの木肌を打つ音が聞こえてくる。同じ林道でも「峠越え林道」はおもしろい。峠をはさんだ2つの世界を見ることができる。
 峠から大野見村側を下っていくと四万十川本流に出た。鈴ヶ森林道はダート22・1キロで、四万十川の流域では最長だ。

 四万十川本流沿いの県道19号を南下し、窪川町に入ったところで県道を離れ、松葉川温泉に近い森ヶ内の集落から第4本目の森ヶ内久保谷林道に入っていく。

 この林道も峠越え林道。ダート突入地点から4・3キロで「春分峠」に到達。峠名の由来がちょっとおもしろい。昭和43年の春分の日に、この峠で林道の完成記念を祝い、そのときに「春分峠」と名づけたという。

 窪川町と梼原村の境の春分峠を下ると久保谷を通り、国道439号に出た。
 そこから来た道を引き返し、春分峠の手前で分岐する第5本目の中津川林道に入っていく。この林道も峠越え林道。梼原村と大正町の境の小松屋峠を越える。

 小松屋峠からは幾重にも重なり合った四万十川を取り囲む山々が眺められた。山深い風景。ここからの眺めは胸に残った。峠を下り、中津川の集落に出ると舗装路になったが、森ヶ内久保谷林道と中津川林道を合わせたダート距離は20・0キロになった。

 国道439号経由で国道381号に入り、四万十川本流に沿って下っていく。
 西土佐村の「四万十楽舎」で泊まった。
 その日はもんがぁ~さとみさんの26歳!?の誕生日。ワインで乾杯!

四万十川流域の林道群
 四万十川河畔の「四万十楽舎」には3泊し、ここを拠点にして、四万十川流域の林道群を走った。
 第1日目。まずは支流の黒尊川だ。四万十川名物の沈下橋のひとつ、口屋内沈下橋で対岸に渡り、黒尊川に沿って走る。最奥の集落、黒尊を過ぎると黒尊林道になるが、かつての四国を代表するロングダートも今では全線が舗装…。

 黒尊林道を走る。見事な渓谷美を見せる黒尊峡谷を通り、ぐんぐんと高度を上げて高知・愛媛県境の峠まで行く。ここまでが四万十川の水系だ。

 黒尊の集落まで下ると、分校跡のすぐわきから入っていく西谷林道で、愛媛県との境の大峠に向かっていく。峠までの全線がダート。山中では2度、3度と尻の真っ白なシカに出会った。峠で引き返したが、往復16・8キロのダート距離になった。

 次に黒尊川沿いの玖木の集落から玖木山林道に入っていく。西土佐村と宿毛市の境の名無し峠を越える林道。ダート15・9キロ。峠を下って宿毛に出ると国道56号で中村へ。県道20号で下田に行き、四万十川の河口を見た。

 第2日目。この日はまず四万十川支流の目黒川沿いに走る。西土佐村から愛媛県の松野町に入り、さらに目黒川沿いに走り滑床渓谷へ。駐車場にバイクを停め、遊歩道を歩いて雪輪の滝まで行った。ここは黒尊峡谷以上にみごたえのある渓谷美だ。

 次に国道441号に戻ると、沈下橋のある岩間から藤ノ川岩間林道に入る。水ヶ峠を越える峠越え林道なのだが、残念ながら全線が舗装林道だ。

 峠を下った藤ノ川の集落からは藤ノ川林道に入っていく。この林道はダートで、固く締まった走りやすい路面。西土佐村と中村市の境の名無し峠を越えると掃地谷林道。

 藤ノ川掃地谷林道はダート15・4キロ。峠下の掃地谷の集落を通り、国道439号に出た。
 四万十川の支流、後川沿いに中村へ。四国の名物国道「与作」の国道439号は起点が徳島で終点が中村になる。中村に到着すると四万十温泉「サンリバー四万十」の湯に入った。

四万十川から吉野川へ
 名残おしい「四万十楽舎」を出発。
 国道441号で愛媛県に入り、四万十川の支流、広野川沿いに走る。さらに国道320号でその支流の成川沿いに走り、「水分」バス停のあるゆるやかな峠を越える。ここまでが四万十川の水系。峠を越えると、わずかに5キロで宇和島の市街地に入っていく。

 宇和島からは国道56号を北へ。鳥坂峠周辺の林道群、全部で5本の林道を走って大洲に出た。
 大洲からは肘川の上流へ。
 愛媛・高知県境の韮ヶ峠を越え高知県に入ると四万十川の水系。ダート8・5キロの中ノ川井桑林道を走り、山上道で四国カルストを見ながら国道440号の地芳峠に出た。

 ここまでが四万十川の世界。四万十川に別れを告げ、地芳峠を越えて愛媛県側を下っていく。
 ほうじが峠周辺の2本のダート、県道340号と不二峰林道を走り、国道33号で三坂峠を越え、松山に出た。

 松山から徳島へ。
 松山から国道11号で西条へ。西条からは国道194号を南下し、寒風山トンネルを抜けて高知県に入る。その夜は「四国三郎」で知られる四国一の大河、吉野川の源流地帯の本川村で野宿した。

 翌日は夜明けととも走り出したが大雨だ…。予佐越峠まで登り、次に寺川の集落から白猪谷林道(舗装)経由で吉野川源流林道に入り、かなりラフな路面の林道を2・3キロ走ったところで行き止まり地点に着く。そこは瓶ヶ森(1896m)の山頂直下で、吉野川の最初の一滴が岩壁から流れ出している。我々は感動のシーンを見た!

 吉野川源流地帯の本川村と、その南の池川町、吾北村にまたがる一帯には何本もの林道が網の目状になって走っている。激しく降りしきる雨をついてそれらの林道群を走った。このエリアだけで68・9キロのダートを走った。

 一番長かったのは池川町側から弘沢林道を走り、峠を越えて本川村に入り、奥南川林道で国道194号に出るまでのルート。ダート27・5キロになった。すさまじい雨に打たれながら走ったが、平気な顔をしてぼくについて走るもんがぁ~さんは正直いって驚きだった。すごい!

 本川村からは吉野川の流れを見ながら下っていく。
 吉野川水系最大の早明浦ダムを過ぎたところで吉野川の本流を離れ、県道264号経由で奥白髪林道に入る。本山町から峠を越えて大豊町に入ると、仁尾ヶ内林道になる。2本の林道連続して走ると、ダート18・8キロになった。

 仁尾ヶ内林道を下ると、土佐藩の番所跡が残る立川に出た。
 そこからはかつての四国の南北を結ぶ幹線ルートの笹ヶ峰峠を越える。
 愛媛県に入り、吉野川支流の銅山川に沿って走り徳島県へ。吉野川本流を渡り、吉野川支流、祖谷川の渓谷の道を走った。

「与作」の国道439号に入り、剣山下の峠、見ノ越で野宿。国道439号は、ここでもう1本の国道438号と合流し、2本の国道は重複して徳島市内へとつづいている。
 徳島へ。その途中では最後の野間殿川内林道で剣山スーパー林道の旭丸峠へ。0・2キロがダートだった。

 こうして4月2日午前11時、我々は徳島港フェリー埠頭に到着した。
 後半線では全部で22本の林道、ダート241・1キロを走り、「四国一周」のダート合計は434・8キロになった。
 目標の300キロを大きく超えた!

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カソリの林道紀行(5)「四国一周編」(その3)

 (『バックオフ』2003年7月号 所収)

「四国一周・後編」で走った林道、越えた峠、食べたものを紹介しよう。

(林道編)
1・東津野村道不入山線
四万十川源流の不入山東側の村道。国道439号の矢筈峠から入ったが、仁淀村との境のゆるやかな峠を越えると短いダートになる。ダート2・1キロ

2・船戸林道
四万十川の源流、不入山の中腹に建つ「四万十川源流の碑」に通じる林道。行き止まり林道。ダート5・6キロ(往復)

3・鈴ヶ森林道
四万十川流域の最長ダート。国道439号から入り、鈴ヶ森北川の峠を越え、四万十川本流沿いの県道19号に出た。走りごたえがある。ダート22・1キロ

4・森ヶ内久保谷林道
鈴ヶ森林道よりも南の「峠越え林道」。県道322号がそのまま林道になる。春分峠を境に窪川町側が森ヶ内林道、梼原町側が久保谷林道。ダート6・3キロ

5・中津川林道
森ヶ内久保谷林道の春分峠近くで分岐する。稜線近くを走り、小松屋峠を越え、中津川の集落に下っていく。ダート13・7キロ(久保谷林道と合わせた距離)

6・西谷林道
四万十川の支流、黒尊川沿いの黒尊の集落から入る。愛媛県境の大峠まで行き、そこで折り返した。なお愛媛県側は大峠林道。ダート16・8キロ(往復)

7・玖木山林道
四万十川の支流、黒尊川沿いの玖木の集落から入る。橋を渡るとすぐにダート。宿毛市との境の峠を越える。ダート15・9キロ

8・藤ノ川掃地谷林道
西土佐村の藤ノ川の集落から入った。堂ガ森(867m)の南側、中村市との境の峠を越える。峠周辺からの眺望抜群。ダート15・4キロ

9・松明林道
愛媛県の宇和町と野村町の境、大野山から大判山につづく一帯には何本もの林道がある。その1本目がこの松明峠を越える松明林道だ。ダート4・8キロ

10・大判山林道
大野山から大判山へとつづく山並みの中腹を縫って走る林道。稜線の東側、野村町側の林道になる。枝道注意。宇和町側に下る道もある。ダート10・0キロ

11・白髭林道
大判山林道と分岐して野村町の白髭の集落に下っていく林道。そのまま走れば国道441号に出る。このあたり一帯は何本もの林道が交錯。ダート1・8キロ

12・大野山林道
野村町の国道441号の渓筋の集落から入った。国道から1・5キロ地点でダート。寺谷川沿いに走りかなり登ったところで大判林道に合流。ダート5・0キロ

13・水ヶ峠林道
松明林道の松明峠の北側から入った。梅川の集落への道との分岐点からダートになる。水ヶ峠に通じているが崩落地点で引き返す。ダート3・6キロ(往復)

14・中ノ川井桑林道
韮ヶ峠を越える県道379号から入った。林道入口から1・7キロ地点でダートに突入。「四国カルスト」の南側、稜線の直下を縫って走る。ダート8・5キロ

15・愛媛県道340号
愛媛県の小田町から久万町にかけての一帯には、何本かの林道が走っている。そのうちの1本、ダート県道340号でほうじガ峠まで走った。ダート4・7キロ

15・父二峰林道
小田町と久万町境のほうじガ峠とその周辺では何本かの林道が交錯しているが、そのうちの父二峰林道で国道33号に出た。ダート11・0キロ

16・吉野川源流林道
吉野川源流、本川村の県道40号から入る。最奥の集落寺川から白猪谷林道(舗装)を経由。ラフな路面。行き止まり地点が源流。ダート4・6キロ(往復)

17・伊留谷林道
本川村とその周辺は林道の宝庫。まずは長沢ダムを渡り、東谷大森川林道経由で伊留谷林道を走り、越裏門(えりもん)の集落に出た。ダート16・6キロ

18・奥南川林道
本川村の中心、長沢に近い長沢ダムを渡り、東谷大森林道経由で大森川ダムを渡り、奥南川林道を走って国道194号の程ヶ峠に出た。ダート24・8キロ

19・弘沢林道
池川町の県道362号から弘沢林道に入る。大雨の峠を越えて本川村へ。峠を下ったところで再度、奥南川林道を走り、程ヶ峠に出た。ダート27・5キロ

20・奥白髪仁尾ヶ内林道
高知県本山町の県道264号から奥白髪林道に入った。県道から9・0km地点が大豊町との境の峠。大豊町側は仁尾ヶ内林道になる。ダート18・8キロ

21・野間殿川内林道
神山町の中心街から入っていった。かつてはほぼ全線がダートだったこの林道も、今ではほぼ全線が舗装。旭丸峠近くにわずかに0・2キロのダートが残るのみ。


(峠編)
1・根曳峠(高知)
四国縦断の幹線、国道32号の峠。南国市と土佐山田町の境。南側の高知側は長い登りがつづく。峠には根曳の集落。峠を越えた北側は吉野川の水系になる。標高384m。

2・郷ノ峰峠(高知)
四国横断の国道439号の峠。土佐町と吾北村の境。大豊側から完成まもない全長765mの郷ノ峰トンネルを抜け、峠を越えると、仁淀川の水系に入っていく。

3・大峠(高知)
四国横断の国道439号の峠。「大峠」で「おおと」。四国では峠を「と」とか「とう」という。かつての難路も新大峠トンネルが完成して越えやすくなった。標高664m。

4・矢筈峠(高知)
四国横断の国道439号の峠。仁淀村と東津野村の境。仁淀川と四万十川を分ける峠で、峠のトンネルを抜け、東津野村側に入ると、四万十川の水系になる。標高942m。

5・鈴ヶ森林道の峠(高知)
四万十川流域のロングダート、鈴ヶ森林道で越える峠。鈴ヶ森(1054m)のすぐ北。大野見村と東津野村との境。四万十川本流と支流の北川を分けている。峠は切り通し。

6・春分峠(高知)
森ヶ内久保谷林道の峠。窪川町と梼原町の境。峠を境に窪川町側が森ヶ内林道、梼原町側が久保谷林道になる。四万十川本流と支流の梼原川を分ける峠。峠に碑が建っている。

8・中津川林道の峠(高知)
森ヶ内久保谷林道と分岐する中津川林道の越える峠で梼原町と大正町の境。峠を南に、梼原川の支流、中津川沿いに下っていくと中津川の集落に出る。四万十川の山村の風景。

9・黒尊林道の峠(高知・愛媛)
現在では全線が舗装化された黒尊林道の越える高知・愛媛県境の峠。ここまでが四万十川の水系。愛媛県側に入ると鬼ヶ城山(1151m)を通り宇和島へ。

10・大峠(高知・愛媛)
黒尊川沿いの黒尊の集落から西谷林道を走り、高知・愛媛県境の大峠へ。峠は素掘りのトンネルで貫かれている。中は暗い。愛媛県側は大峠林道になる。

11・玖木山林道の峠(高知)
黒尊川沿いの玖木の集落から入った玖木山林道の峠。西土佐村と宿毛市の境。ここまでが四万十川の水系。峠を越えると宿毛湾に流れ出る松田川になる。

12・水ヶ峠(高知)
西土佐村の藤ノ川岩間林道で越える峠。「四万十楽舎」に近い国道441号の岩間の集落から入っていく。峠周辺からの眺望は抜群。峠から一気に藤ノ川へ。

13・韮ヶ峠(愛媛・高知)
愛媛県側の肘川の水系から韮ヶ峠を越えて高知県に入るとまた四万十川の水系に戻ってくる。峠を下ると支流の四万川。「坂本龍馬脱藩の道」で知られる峠。

14・地芳峠(高知・愛媛)
国道440号の越える峠。ここまでが四万十川の水系。峠では「日本三大カルスト」の「四国カルスト」横断の県道383号と交差する。標高1084m。

15・三坂峠(愛媛)
四国縦断の幹線、国道33号の越える峠。ここまでが太平洋に流れ出る仁淀川の水系になる。前方には瀬戸内海と松山の市街地を遠望する。標高720m。

16・予佐越峠(高知・愛媛)
高知県本川村の吉野川最上流部を走る県道40号の峠。県境の峠で右に行けば山上を走る瓶ヶ森林道になり、左に行けば石鎚スカイラインに通じている。

17・奥白髪林道の峠(高知)
本山町と大豊町の境。この峠をはさんで本山町側が奥白髪林道になり、大豊町側が仁尾ヶ内林道になる。白髪山(1470m)の北側。見事な山岳風景を一望。

18・見ノ越(徳島)
四国第2の高峰剣山(1955m)直下の峠。ここは剣山観光の拠点になっている。合流する国道438号の丸笹山西側の峠まで行くと、剣山が目の前だ。標高1450m。

19・川井峠(徳島)
重複国道の438号と439号の越える峠。木屋平村と神山町の境。このあたりは道幅が狭く、曲がりくねった険しい峠道。要注意。木屋平村の中心が川井。

20・旭丸峠(徳島)
神山町と上勝町の境。神山町側から登ったが、峠で剣山スーパー林道と交差する。そのまま直進して峠を下れば上勝に出るし、右折すると山上道で土須峠へ。


(食編)
1・ゴリの唐揚げ
中村の郷土料理店「いなか」で食べたもの。これは四万十川でとれたゴリだ。四万十川産の青のりの唐揚げも食べたが、舌で四万十川を味わう。

2・ばらずし
神山温泉の「保養センター」の食堂で食べたばらずし。東日本では「ちらしずし」というが西日本では「ばらずし」になる。東西食文化の違い。

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カソリの林道紀行(6)「関西編」(その1)

 (『バックオフ』2003年12月号 所収)

 九州、四国につづいての「ダート300キロ走破行」の第3弾目は関西編。
 前編の「紀伊半島編」と後編の「播但編」の2度に分けてまわった。

 まずは紀伊半島。
 かつてのダート林道の宝庫も急速に舗装化が進み、ロングダートは消えてしまったが、我らオフロード派にとってはいまだに関西圏屈指のフィールドだ。

南紀の林道6本走破!
 今回の「300キロダート走破行」の相棒は関野温さん。
 ぼくがDR-Z400S、関野さんがDJEBEL250XCに乗り、10月6日、『バックオフ』編集部を出発。川崎・浮島港から19時10分発の宮崎行きフェリー、マリンエキスプレスの「フェニックス エキスプレス」に乗り込んだ。

 我々が目指すのは南紀の那智勝浦港。
 乗船するとすぐに展望大浴場に入り、湯から上がると、レストランでのバイキングの夕食だ。
 関野さんと「紀伊半島」に乾杯。いやがうえにも気分は盛り上がる。

 マリンエキスプレスのフェリーは紀伊半島ツーリングには絶好。那智勝浦港到着が5時50分なのでまる1日、存分に紀伊半島を走りまわることができる。

 夜明けの那智勝浦港に到着すると、さっそく走り出す。
 国道42号を南へ。
 太地、古座、本州最南の町、串本と通り、すさみ町に入ったところで待望の第1本目のダートに突入だ。

 第1本目の林道は大鎌椎平林道。
 入口がちょっとわかりにくいが、そこには「みき食堂 めしうどん」の大きな看板が立っている。国道から1キロ走ったところで舗装が途切れ、ダートになる。ダートを走り出す瞬間はいつものことだけど、胸がドキドキドキッとときめく。

 峠に向かって登っていくと、やがて眼下に南紀の海と入り組んだ入り江の風景を見下ろす。国道から5キロほどで峠に到達。峠からの見晴らしはよくないが、峠近くにはミツバチの箱が置いてあった。天然の木を使ったもの。山人の生活を垣間見る。

 峠を下ると、大鎌の集落。そこで舗装路になったが、ダート6・1キロの大鎌椎平林道。大鎌の山間の稲田では盛んに稲刈りがおこなわれていた。

 大鎌椎平林道を往復して国道42号に戻ると、次に県道36号でコカシ峠を越えて内陸に入り、宮城川林道と大瀬矢野口林道の2本を走った。山々が海まで迫る南紀では、一歩、内陸に入ると、いっぺんに山深い風景に変わる。3本の林道を走って串本に戻ると国道42号沿いの「サンワ」で昼食。南紀名物めはりずしとサンマずしを食べた。

 串本から古座に戻ると、古座川から樫山林道に入っていく。しばらくは舗装林道がつづく。その間では2つの峠を越える。山々が複雑にからみ合ってあって連なる南紀には、いくつもの峠がある。
「峠越え」には絶好なのだ。

 2つ目の峠を下ったところが樫山の小集落。そこから樫山林道のダート区間に入っていく。「あーっ!」と驚きの声を上げてしまった。

 岩の間を抜けて太田川の支流の渓流沿いを走るのだが、道幅は狭く、ガードレールもなく、コーナーを下手に回り込むと、そのまま渓流に転落しそう。素掘りのトンネルが2つ、3つと連続し、一種異様なおどろおどろした風景をつくり出している。ほかではまず、見られないような林道だ。

 それだけに、ダート6・0キロの樫山林道を走りきり、幅広の高野林道に出たときはホッとした気分。それにつづいて走った西中野川林道は全線の舗装化が間近だった。

 こうして南紀の6本のダート林道を走り終え、太地温泉の国民宿舎「白鯨」に泊まった。ここの名物は鯨料理のフルコース。数えてみると、なんと8品もの鯨料理が膳に並んでいる。関野さんと歓声を上げながら食べるのだった。

豪快な稜線上のダートを走破
 第2日目は太地を出発すると、新宮から国道168号を走り、川湯温泉から大塔林道へ。残念ながら崩落で途中で引き返した。

 熊野本宮大社に参拝したあと、全線舗装の龍神本宮林道を走り、それに接続する2本のダート林道、東ノ川林道と坂泰林道を往復して龍神村へ。
 国道425号から橘川林道に入っていったが、舗装区間が延び、やっとダートに入ったと思ったら、わずか2・0キロで峠に出てしまった。

 龍神温泉からは国道425号で和歌山・奈良県境の峠、牛廻越に向かう。峠下から猪笹林道に入り、5・3キロ走った分岐からは、稜線上を行く猪笹今西林道に入っていった。 この分岐点が県境で、幾重にも重なり合った山々を眺めながら、奈良県側の稜線を行く。豪快な迫力満点のダート林道。思うようにダート走行できなかったウップンを一気にこの林道で晴らす。
 気分がいい。最高にうれしくなってくる。

 稜線上のダートを東に向かって走っていくと、青空は消え、深い霧の中に突入した。すぐ下は目のくらむような深い谷なので、コーナーではガクンと速度を落とした。15・6キロのダートを走り切ると、幅広の舗装林道の川津今西林道とのT字に出、そこを右折し、今西に集落へと下った。

 紀伊半島縦貫の国道168号に出、北に走り、川津から県道733号に入った。この道が奥千丈林道に通じている。奥千丈林道に入っても、舗装路はつづく。2ヵ所に短いダートが残っていたが、すっかり舗装された奥千丈林道を登りつめ、稜線上に出る。奥千丈林道の舗装区間はグッと延び、高野龍神スカイラインに出る手前の2・0キロ区間に、わずかにダートが残るだけだった。

 もう、全線の舗装化が間近。奥千丈林道は紀伊半島を代表するロングダートだっただけに、なんとも寂しい気分を味わって高野龍神スカイランに出た。

 高野龍神スカイラインの笹の茶屋峠からは湯川笹ノ茶屋林道を下った。4・8キロのダートを走り、清水温泉の「あさぎり」に泊まった。
 槇の木の湯船がじつに気持ちいい。共同湯「健康館」の湯にも入ったが、ここも同様に槇の湯船だった。

紀伊半島最長のダート林道走破
 第3日目。清水温泉を出発すると、板尾沼谷林道、湯川有中林道と2本のダート林道を走り、国道480号で高野龍神スカイランの和歌山・奈良県境の箕峠に出た。

 無料化されたばかりの高野龍神スカイラインで護摩壇山まで走り、そこから南谷城ヶ谷林道のダート区間を往復した。ここも急速に舗装化が進み、かつてのロングダートもダート区間は5・1キロを残すのみ。全線の舗装化が間近だ。

 箕峠まで戻ると、奈良県側に下り、イタツゴ奥千丈林道を往復した。谷底から稜線上の奥千丈林道との分岐まで全線ダートなのがうれしい。稜線の周辺からの展望も見事だ。

 川原樋川林道、平川釜落林道を走り、国道168号を南下。
 十津川村で国道425号に入り、白谷峠を越え、下北山村で国道169号と交差。
 池原ダムのダム湖畔から備後川林道に入った。そのまま紀伊半島最長ダートの佐渡林道へとつづいている。峠を越え、国道42号にぶつかるまでの全線がダート。ダート距離は15・8キロ。

 こうして22本の林道を走り終えた。ダート距離の合計は166・6キロになった。
 その夜は熊野灘の砂浜で野宿。十四夜の月が熊野灘を照らしていた。光る海を眺めながら関野さんとカンビールで乾杯。次は兵庫県西部の「播但編」だ。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


カソリの林道紀行(7)「関西編」(その2)

 (『バックオフ』2003年12月号 所収)

今回まわった紀伊半島の林道・峠・温泉・食を紹介しよう。

(紀伊半島の林道)
1・大鎌椎平林道
国道42号から1・0キロ地点でダートに突入。大鎌までの6・1キロのダートを往復。

2・宮城川林道
県道36号から3・1キロ地点で峠。峠からダート。大瀬手前まで9・2キロのダート。

3・大瀬矢野口林道
宮城川林道との分岐から峠を越え、県道36号に出るまでの全線がダート。8・9キロ。

4・樫山林道
県道227号から入った。樫山の小集落から先が渓流沿いのダート6・0キロ。

5・高野林道
幅広の林道。ダート2区間3・6キロ。舗装化進む。極狭路の樫山林道とは対照的。

6・西中野川林道
県道43号から入ったが、ダート区間は入口の0・5キロのみ。全線舗装化が間近。

7・大塔林道
川湯温泉から入る。ホイホイ坂林道との分岐まで舗装。3・6キロ地点で崩落通行止め。

7・東ノ川林道
稜線上の舗装林道の龍神本宮林道から入った。ダート4・7キロを往復。舗装進む。

8・坂泰林道
龍神本宮林道から入ったが、気分よく走れるダートだ。8・8キロのダートを往復。

9・橘川林道
龍神村の国道425号から入った。舗装化が進み、残されたダートは2・0キロ。

10・猪笹林道
国道425号の牛廻越下から入った。稜線へと一気に登る。ダート5・3キロ。

11・猪笹今西林道
猪笹林道分岐から川津今西林道(舗装)分岐まで稜線を行く。ダート15・6キロ。

12・奥千丈林道
高野龍神スカイラン側の入口近くに2・0キロのダート区間を残すのみ。全線舗装間近。

13・湯川笹ノ茶屋林道
高野龍神スカイラインとの分岐、笹ノ茶屋峠から4・8キロがダート。舗装化進む。

14・板尾沼谷林道
沼谷林道(舗装)との分岐から6・4キロがダート。岩坂観音前からは絶景を望む。

15・湯川有中林道
花園村の恐竜ランド前から入った。舗装化が進み1・0キロのダートを残すのみ。

16・南谷城ヶ森林道
かつてのロングダートも両方向から舗装化が進む。5・1キロのダートを往復。

17・イタツゴ奥千丈林道
箕峠を下った弓手原の先から入った。奥千丈林道との分岐まで7・4キロがダート。

18・川原樋林道
川原樋川の峡谷に沿っている。ダート8・0キロ。適度に荒れておもしろく走れる。

19・平川釜落林道
県道734号から1・7キロでダート。峠を越え、県道53号まで5・7キロがダート。

20・白谷池郷林道
おおいに期待して行った林道だが、国道425号との分岐から0・2キロ地点にゲート。

21・備後川佐渡林道
備後川林道は大半が舗装。そのまま佐渡林道に入っていく。ダート15・8キロ。

(紀伊半島の峠)
1・大鎌椎平林道の峠
大山(544m)南側の串本町とすさみ町境の峠。峠からの見晴らしはよくない。

2・コカシ峠 
標高330m。県道36号の峠。国道42号の江住から登っていく。峠道からは南紀の山々を一望!

3・宮城川林道の峠
県道36号から入っていくと舗装区間が途切れたところが峠。峠からダートに突入。

4・大瀬矢野口林道の峠
大瀬から矢野口に向かって行くと、矢野口側の林道出口近くが切り通しの峠だ。

5・県道225号の峠
名無し峠だが、ぼくにとっては初めて越える峠なので、峠上では思いっきり「万歳!」。

6・香ノ塔峠 
標高390m。県道225号の2つ目の峠。内陸の小河内と海岸の見老津を結ぶ。超狭路の峠道だ。

7・樫山林道の峠(その1)
樫山林道の舗装区間の峠。峠には明和5年(1768年)の石仏。峠下は楠本。

8・樫山林道の峠(その2)
樫山林道の舗装区間の峠。楠本と樫山の中間にある。峠には「樫山林道」の木標。

9・高野小森川林道の峠
高野林道から舗装林道をそのまま行ったところにある。峠はトンネルで貫かれている。

10・県道43号の峠
峠では西中野林道と高野林道が分岐している。この県道は「峠越え」が連続する。

11・ホイホイ坂林道の峠
大塔林道との分岐から峠までは全線舗装。

12・上田路越
橘川林道の龍神村と美山村境の峠。峠を越えた美山村側は県道29号まで全線舗装。

13・川合峠
川合勝ノ又林道(舗装林道)の美山村・龍神村境の峠。

14・笹ノ茶屋峠 
標高1080m。高野龍神スカイラインと湯川笹ノ茶屋林道が交差する峠。峠を下ると清水温泉。

15・清水毛原林道の峠
清水毛原林道(舗装林道)の清水町・美里町境の峠。

16・地蔵峠
県道115号の美里町・花園村境の峠。「地蔵峠」は日本に多い峠名。

17・箕峠 
標高950m。高野龍神スカイラインと国道371号が交差する和歌山・奈良県境の峠。

18・平川釜落林道の峠
南側の県道734号と北側の県道53号を結ぶ峠。峠には林道完成記念碑が建つ。

19・白谷峠
国道425号の十津川村と下北山村の境の峠。「白谷トンネル」で貫かれている。

20・備後川佐渡林道の峠
「紀伊半島編」最後の佐渡(さわたり)林道の峠。夕暮れの峠に立ちカソリ感動!


(紀伊半島の温泉)
1、清水温泉
清水の町並みを見下ろす丘の上にある。足下を有田川が流れる。町営の温泉宿「あさぎり」に隣り合って、ログハウスの共同湯「健康館」(入浴料600円)がある。高野槇を使った八角の浴槽。木の湯船は最高に気持ちいい。有田川の上流には花園温泉、下流には二川温泉もある。

2、龍神温泉
群馬県の川中温泉、島根県の湯ノ川温泉と並ぶ「日本三大美人湯」で知られる。和歌山県の最高峰、護摩壇山下の日高川に面した温泉。龍神高野スカイラインが無料になり、土日はこの温泉を訪れる人がどっと増えたという。風情のある数軒の温泉宿と共同浴場の「元湯」(入浴料600円)。「元湯」の檜の内風呂と露天の岩風呂の湯は肌がなめらかになる美人湯だ。


(紀伊半島の食)
1、鯨
南紀の太地は宮城県・牡鹿半島の鮎川と並ぶかつての日本の2大捕鯨基地。その伝統は今でも残り、沿岸捕鯨などでとれるクジラが太地港に揚がる。太地温泉の国民宿舎「白鯨」では鯨料理フルコースを5000円で食べられる。コロ、内蔵、竜田揚げ、ベーコン、おつくり、おばけ、ゴマあえ、鍋と8品が出た。

2、めはりずし&サンマずし
南紀の名物といえばめはりずしとサンマずし。めはりずしは高菜の漬物の茎を細かく刻んで飯に混ぜ、おにぎりをつくり、残りの葉で包み込んだもの。
めはりずしは本来はソフトボールの球ぐらいもある大きなものだが、店で売られているのはそれよりもはるかに小さい。「めはり」はその大きさに由来している。
サンマずしのサンマは産卵後の熊野灘まで南下したものだ。腹開きにしたサンマに塩をあて、酢に漬け、すし飯をのせ、すし箱でつくる押しずしだ。

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カソリの林道紀行(8)「関西編」(その3)

(『バックオフ』2004年1月号 所収)

 今回の「播但編」の「播但」というのは、兵庫県西部の「播磨」と「但馬」を合わせた旧2国のエリア。播磨が瀬戸内海側で但馬が日本海側になる。

 この「播但」は関西圏では「紀伊半島」に並ぶ林道の宝庫。県境の峠を越えた鳥取県側にも何本かの林道がある。

 中国道の山崎ICを出発点にし、鳥取県側をも含めて「播但」の林道群を走り、関西ダート300キロを目指した。

山崎ICが出発点
「紀伊半島」のダート166・6キロを走破してから1ヵ月後の11月11日、「播但」の林道群を目指し、午前0時に『バックオフ』編集部を出発。前回の「紀伊半島」同様、相棒は関野温さん。

 ぼくがDR-Z400S、関野さんがDJEBEL250XCに乗り、東名→名神→中国道と夜通しの高速道一気走り。だが途中で猛烈な雨に降られたり、睡魔に我慢できずに寝たこともあって、東京から633キロの中国道山崎ICに到着したのは9時だった…。 山崎から国道29号を北上。山々が間近に迫ってくる。

 一宮町では播磨の一の宮の伊和神社に参拝。波賀町に入った野尻の集落から待望の第1本目の林道、野尻林道に突入。阿舎利山(1084m)に向かって走り、峠を越え、国道29号の日ノ原に向かった。走り抜けられるであろうと当たりをつけて入ったのだが、残念、林道入口から9・8キロ地点で行止まり。

 国道29号に戻ると、次に音水渓谷沿いの音水林道に入った。林道沿いの紅葉の美しさには目を奪われた。この音水渓谷とその南の赤西渓谷は関西圏でも屈指の紅葉の名所なのだ。音水林道では鳥取県との県境を成す稜線まで行けるのではないかと期待したが林道入口から8・7キロ地点で行止まり。

 国道29号に戻ると、さらに北へ。
 引原ダムの音水湖を見渡す「湖畔29」で昼食。バイクで切る風は冷たく、店内の赤々と燃えるストーブがありがたい。

 この店は「お好み焼き」がメイン。「豚玉」と「イカ玉」の2種のお好み焼きを関野さんと食べたが、その味は「関西」を感じさせるものだった。

因幡の林道も走った
 国道29号をさらに北上し、戸倉峠を越えて鳥取県に入った。
 鳥取県は東部の因幡と西部の伯耆の2国から成っているが、東部の因幡には何本かの林道がある。

 中国地方は我々オフロードライダーにはちょっと辛い「林道不毛地帯」だが、そのなかにあって「播但」と境を接する「因幡」は例外なのだ。

 まずは糸白見の集落から糸白見林道に入った。
『ツーリングマップル』に「ロングピストン ダート15・5キロ」のコメントがあるので期待したが、残念ながら国道から6・9キロ地点にゲートがあり、そこから引き返さなくてはならなかった。

 次に国道482号に入り、兵庫県との県境の名無しの峠まで行く。
 そこから東因幡林道に入る。大荒れの林道でクマザサが道の両側に茂り、路面には大きな水溜まりが連続した。15・2キロのダートを走りきると、畑ヶ平林道とのT字の分岐に出る。そこで引き返し、国道482号の峠まで戻った。

 波賀町まで戻り、波賀温泉に泊まった。
「お~、温泉のありがたさよ!」

播磨から但馬へ
 翌日は国道29号を北上して戸倉峠まで行き、峠のトンネルの手前で国道を右折し、氷ノ山林道に入っていった。
 気温がグググッと下がり、小雪が舞っている。強烈な寒さ。ハンドルを握る手がジンジン痛んでくる。11月中旬の氷ノ山林道はすでに冬の顔。

 氷ノ山の中腹を縫って走り、波賀町から大屋町に入る。この町境が播磨と但馬の国境。但馬側になるとダート、舗装、ダートの繰り返し。横行林道との分岐まで来ると、横行渓谷沿いのこの林道を往復したが、すでに全線が舗装化されていた。

 氷ノ山林道に戻り、大屋町から関宮町に入る。舗装林道の鵜縄安井林道との分岐を過ぎると、スキー場のある福定の集落までが2・7キロのダート。かつての関西圏屈指のロングダートは、その区間を合わせても14・4キロのダートだった。

 次に関西圏のスキーのメッカ、ハチ高原から瀞川林道に入った。瀞川山の山頂近くを通る稜線上の林道。展望台からの但馬の山々の眺めが目に残る。ダート10・9キロの瀞川林道を走りきり、村岡町の大糠で国道9号に出た。
 氷ノ山、瀞川の2本の林道を走りつないだダート距離は25・3キロになった。

 湯村温泉経由で日本海へ。山陰の海岸美を眺めながら走る。
 但馬の名湯、城崎温泉に立ち寄り、冒険家、植村直己さんの故郷の日高町へ。
 神鍋温泉の「ゆとろぎ」の湯に入り、民宿「中屋」に泊まったが、なんとも辛い冷たい雨に降られぱなしの1日だった。

ダート300キロ達成!
「播但編」の第3日目。
 但馬の神鍋高原最奥の集落、稲葉からダートに入り、日高町と村岡町の境の峠へ。

 そこから南へ。幅広のダート、蘇武妙見林道を走る。標高1074mの蘇武山の山頂下までがダート。アクセスの区間を含め11・6キロのダート。そこには展望台があり、晴れていれば正面には扇ノ山、左手には氷ノ山、右手には兵庫・鳥取県境の蒲生峠が見えるのだが、残念ながら濃霧で視界はまったくナシ。ちなみに「扇ノ山」、「氷ノ山」ともに「山」を「せん」と読む。

 この蘇武山こそ植村直己さんが初めての本格的な登山で登った山。まさに「植村直己の原点」なのである。

 稜線上を走る蘇武妙見林道から国道9号へと下り、笠波峠、八井谷峠と越えて関宮町の関宮へ。そこから関宮町と大屋町境の加保坂まで登る。絶景峠で南の大屋町側の眺望がすばらしい。

 峠から稜線近くを走る相地轟林道に入ったが、舗装路…。
「きっと、ダートになるだろう」と期待しつづけたが、最後まで舗装…。
 もう、ガックリだ。

 気をとりなおして県道48号に下り、大屋町と波賀町境の若杉峠を越える。但馬と播磨の国境の峠で、再び、播磨側に戻ってきた。

 峠を下ってすぐのところで県道48号を左折し、志倉道谷林道に入っていく。石ころのゴロゴロした荒れた路面。波賀町と一宮町境の峠を越えていく。ダート7・3キロの志倉道谷林道は胸をワクワクさせるような林道で、カソリ、思わずニコニコ顔になる。

 次に、一宮町の福中から横住林道を走った。横住川の渓流沿いの林道。ここも紅葉が見事だった。4・1キロのダートを走りきり、草木ダムのわきで舗装路になる。

 そのまま川沿いに走り、千町林道に入った。4・1キロのダートを走りきり、千町峠に到達。峠では道幅の狭い千町林道と道幅の広い千町段ヶ峰林道が交差している。ほんとうはこの2本の林道とも、全線を走りたかったが、このあとに峰山林道と雪彦峰山林道の2本のロングダートがひかえているので、幅広の千町段ヶ峰林道で峠を下った。

 その途中で「関西ダート300キロ」を達成。
 DRに乗りながら、「やったゼ!」と、思いっきりガッツポーズをするのだった。

 意気揚々とした気分で砥峰高原の峠まで登り、そこから峰山林道に入る。期待に反して、ロングダートどころか幅広の舗装路で、峰山高原林道との分岐より先は工事中で通行止。仕方なくダートの峰山高原林道を走ったが、なんとこの林道も1・4キロ走ったところで通行止。大迂回して県道8号の坂の辻峠へ…。

 坂の辻峠ではカソリ&関野、最後の林道、それも『ツーリングマップル』には20・2キロのロングダートと出ている雪彦峰山林道のダートを「さー、行くゾ!」と気合を入れて走り出した。

 ところが2・7キロ地点で舗装になり、林道を抜け出るまでの全線が舗装路…。
 最後をキシッとしめたかった「関西ダート300キロ走破行」だったが、
「これが関西の現状…」
 と、自分にそういい聞かせ、中国道の福崎ICまで走った。

 福崎IC到着は18時。
「紀伊半島編」のダートが166・6キロ、「播但編」のダートが140・9キロ。かろうじてダート300キロを超えた。
 東京への帰路も高速の一気走り。
 夜通し高速道路を走りつづけ、東京到着は午前2時だった。

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カソリの林道紀行(9)「関西編」(その4)

 (『バックオフ』2004年1月号 所収)

(播但の林道)
兵庫県西部の播磨と但馬の「播但」、それプラス鳥取県東部の因幡の林道、合わせて14本を走った。渓谷沿いの林道ではちょうど紅葉が見頃だった。それら14本の林道を紹介しよう。

1・野尻林道
国道29号の芳賀町野尻から入る。峠越えの林道。峠では阿舎利山方向への林道と分岐。行止まり林道でダート9・4キロ。

2・音水(おんずい)林道
国道29号の波賀町日ノ原から入る。すばらしい渓谷美の音水渓谷沿いに走る。ここは関西圏屈指の紅葉の名所。行止まり林道でダート7・4キロ。

3・糸白見林道
国道29号の糸白見から入る。国道から1・7キロ地点でダート。道幅は狭い。国道から6・9 キロ地点にゲート。ダート5・2キロ。

4・東因幡林道
国道482号の鳥取・兵庫県境の峠から入った。全線が鳥取県側の林道。稜線の近くを走る。ダート15・2キロ。往復して峠に戻る。

5・氷ノ山(ひょうのせん)林道
国道29号の戸倉峠のトンネル手前から入った。氷ノ山(1510m)の中腹を縫って走る。ダート14・4キロ。舗装化進む。

6・瀞川(どろかわ)林道
ハチ高原の民宿「青い鳥」前の道が入口。2・9キロ先でダートに突入。稜線上を行く。絶好の展望台あり。ダート10・9キロ。

7・蘇武妙見林道
日高町の稲葉から入った。峠までの4・0キロがダート。そこから蘇武妙見林道になり、蘇武山までの7・6キロがダート。舗装化進む。

8・志倉道谷林道
波賀町の道谷側から入った。若杉峠に一番近い道が入口。峠越え林道でラフな路面が一宮町側までつづく。ダート7・3キロ。

9・横住林道
一宮町の福中から入った。ダート入口にはキャンプ場。横住川の渓流に沿って走る。道幅は狭い。ラフな路面。ダート4・1キロ。

10・奥田谷林道
千町林道に入るつもりが、そのまま直進し、この林道に迷い込む。ダート2・1キロ地点で行止まり。途中、森林公園を建設中。

11・千町林道
最奥の上千町の集落の手前で右折し、この林道に入る。千町峠までのダートは4・1キロ。峠で幅広の千町段ヶ峰林道と交差する。

12・千町段ヶ峰林道
千町峠から大河内町側の区間を走った。幅広の走りやすい林道。ダート4・4キロ。舗装化進む。千町峠の反対側は生野に通じる。

13・峰山高原林道
舗装の峰山林道と分岐し、峰山高原に通じている。残念ながら分岐から1・4キロ地点にゲート。そこから長谷ダム方面に行ける。

14・雪彦峰山林道
県道8号の坂の辻峠から入った。ロングダートだと大いに期待したが2・7キロ地点より先は全線舗装。雪彦山は「日本三彦山」のひとつ。


(播但の峠)
中国山地から延びる山並みの連なる「播但」には、いくつもの峠がある。「峠越え」には絶好のエリアだ。若杉峠のような「播但」国境の峠は山陽と山陰を分ける中央分水嶺の峠になっている。

1・野尻林道の峠
峠では阿舎利山(1087m)への林道が分岐。残念ながらこの道に入らなかったが、山頂近くまで通じている可能性もある。

2・戸倉峠(標高891m)
国道29号の兵庫・鳥取県境の峠。全長1730mの新戸倉トンネルで貫かれている。山陽・山陰を分ける中央分水嶺の峠。

3・国道482号の峠(その1)
氷ノ山北西の兵庫・鳥取県境の名無し峠。鳥取県側は峠までが国道だが、兵庫県側で途切れる。峠では東因幡林道が分岐する。

4・春来峠
国道9号の峠。全長1696mの春来トンネルで貫かれている。峠下には但馬の名湯、湯村温泉。旧道の峠近くには春来の集落がある。

5・桃観峠
国道178号の浜坂・香住町境の峠。但馬の日本海側は山々が海に迫っているので、このほかにもいくつもの峠を越えていく。

6・国道482号の峠(その2)
日高町と村岡町境の峠区間は未開通だったが、2003年11月8日に全長3692mの蘇武トンネルが完成。つながった!

7・蘇武妙見林道の峠
蘇武妙見林道の起点となる峠。日高町の稲葉から登るダートは通行できるが、村岡町側から登るダートは通行止になっている。

8・笠波峠(標高335m)
国道9号の村岡町内の峠。ゆるやかな峠なので気をつけていないと、わからないままに通り過ぎてしまう。峠近くには猿尾滝。

9・八井谷峠(標高410m)
国道9号の村岡・関宮町境の峠。全長1256mの但馬トンネルで貫かれている。南側にはループ橋。国道9号には峠が数多くある。

10・加保坂峠
関宮・大屋町境の県道714号の峠。大屋町側の展望がすばらしい。但馬の山々を一望。峠には「ミズバショウ公園」がある。

11・若杉峠(標高730m)
大屋・波賀町境の県道48号の峠。大屋町側は急勾配の登り。播磨と但馬を分ける国境の峠。中央分水嶺の峠でもある。

12・志倉道谷林道の峠
波賀・一宮町境の峠。林道の両側にはクマザサがおい茂る。ここから南には三久安山、阿舎利山、一山などの山々が連なる。

13・千町峠(標高970m)
一宮・大河内町境の峠。段ヶ峰と千町ヶ峰の間に位置する。峠で千町林道と千町段ヶ峰林道が十字に交差している。

14・砥峰高原の峠
県道39号の砥峰高原の峠。砥峰高原は一面のススキの原。春の山焼きでも知られている。峰山林道はここから入っていく。

15・坂ノ辻峠(標高720m)
県道8号の大河内・一宮町境の峠。雪彦峰山林道はここから入っていく。峠から北には峰山林道が分岐する。峠はまさに交差点(辻)!


(播但の食)
播磨最北の波賀町の食堂に入ると、そこのメインは「お好み焼き」。これぞまさしく関西の味。

但馬の日本海側では松葉ガニ(ズワイガニのこと)が解禁になったばかり。旬の松葉ガニに食らいついた。これは山陰ならではの味だ。

但馬の湯村温泉では「温泉たまご」を食べた。これは相棒の関野さんの大好物。それにしてもうまい「温泉たまご」だった。


(播但の温泉)
播磨では波賀温泉に泊まった。すぐ近くには名瀑の原不動滝。但馬では湯村温泉と城崎温泉に入った。ともに名湯。とくに城崎温泉は山陰随一の名湯といわれる。6ヵ所の共同浴場があるが、城崎温泉に泊まっての、これら6湯の「外湯めぐり」はおすすめだ。


(播但の一の宮)
日本をおもしろくまわるひとつの方法は、旧国を意識することだ。たとえば兵庫県だと播磨、但馬のほかに丹波、摂津、淡路の5国から成っている。「国めぐり」の絶好の見印が一の宮。どの国にも千何百年の歴史に耐えて、一の宮が残っている。
「一の宮めぐり」をすると、日本の国というものがよくわかってくる。播磨の一の宮は伊和神社、但馬の一の宮は出石神社だ。

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カソリの林道紀行(10)中部編(その1)

 (『バックオフ』2004年7月号 所収)

「九州編」、「四国編」、「関西編」と、西日本のダートルートを走破してきた「ダート300キロ走破行」だが、全国のダート走破を目指していよいよ日本中央部の「中部編」に突入だ。

 どのようにして「中部編」をまわろうかとさんざん地図を見ながら考えた末に、「東京-富山」に着目。林道を走りつないで「東京-富山」を往復することにした。
 今回はその第1弾。甲州の林道が中心だ。
 林道を走りながら甲州を味わいつくすのだ!

 5月31日の午前6時、JR青梅線の青梅駅前でブルダスト瀬戸と落ち合った。ぼくがDR-Z400S、瀬戸さんがDJEBL250XCと、スズキコンビで甲州から信州にかけての林道を走りまくるのだ。

 青梅駅前の集合というと、雪と氷の大名栗林道走破以来で、瀬戸さんと「いやー、あのときは大変でしたねえ」と挨拶がわりに、しばし大名栗林道の思い出話で盛り上がった。

 駅前のコンビニで朝食用の弁当を買うと出発。青梅街道の国道411号を西へ、東京都から山梨県に入る。「青梅」は奥多摩から多摩川源流地帯に行くときは、すごく便利だ。

 早朝なので国道もガラガラ状態。7時過ぎには第1本目の泉水谷・横手山林道の入口に到着。まさに「早起きは三文の得」なのである。

 国道沿いには名市長の誉れ高い元東京市長の尾崎行雄の「多摩川水源踏査記念碑」が建っている。この地をくまなく踏査した結果、尾崎行雄は明治42年(1909年)、広大な地域の水源林を買収した。そのおかげで今、多摩川の源流一帯には、豊かな自然が残されている。

 多摩川源流地帯の渓流はどれをとっても澄みきった流れで、下流の多摩川とは似ても似つかない。そんな尾崎行雄の「多摩川水源踏査記念碑」前で瀬戸さんとコンビニ弁当の朝食だ。

風林火山
 泉水谷・横手山林道は鶏冠山の南側を通っている。
 この山は別名、黒川山。甲州の武将、武田信玄は優れた鉱山師でもあり、この山の周辺で金鉱脈をみつけた。「黒川千軒」とよばれた一大鉱山集落ができたほどの金鉱山だ。
 信玄は黒川山のみならず、甲州のあちこちで金鉱山をみつけ、それが武田軍の豊富な軍資金になった。

 そんな甲州の歴史の一端にふれながら泉水谷・横手山林道を走り、国道411号に出た。
 次に柳沢峠を越え、峡東の塩山に下っていく。

 四方を山々に囲まれた甲府盆地はまさに甲州の中心。甲州人はそれを「国中」と呼んだ。国中の中心が甲府で「峡中」になる。塩山を中心とする東側が「峡東」、櫛形を中心とする西側が「峡西」、韮崎を中心とする北側が「峡北」、鰍沢を中心とする南側が「峡南」になる。

 甲斐は「山峡(やまかい)」からきた国名。これら峡東、峡西、峡北、峡南が今でもふつうに言われているところが甲州のすごさだ。

 塩山から太良峠へ。
 峠に立ち、足下の甲府の市街地を見下ろした。真下が武田神社。武田信玄が日本制覇を夢見た武田氏居城の館跡が武田神社になっている。そこには今でも空堀りが残されている。

 太良峠を下ったところにある要害山は武田信玄生誕の地。近くの積翠寺境内には信玄の産湯につかった井戸もある。信玄は甲州人にとっては今だに英雄だ。そのため「信玄」と呼び捨てにせず、「信玄公」といって敬っている。

 甲州人は武田の軍旗の「風林火山」が大好きだ。
 甲州人と飲むと、酔うにつれて「武田節」が飛び出し、「信玄公があともう何年か生きていたら、天下を取ったのに…」という嘆き節になる。

林道舗装化時代
 太良峠からの絶景を眺め、武田信玄を偲んでみたところで、峠から北へ、水ヶ森林道に入っていった。
 すっかり舗装の延びた水ヶ森林道を走り、乙女高原から焼山峠に出た。

 ぼくが初めて甲州のこのエリアを走ったのは今から30年余前のことになる。
 当時の焼山林道は全線がラフなダートだった。そのまま柳平から峰越林道の川上牧丘林道に入っていったが、川上牧丘林道も全線がダートだった。山梨・長野県境の大弛峠を越え、峠を下ると今度は川上村最奥の集落、梓山から長野・埼玉県境の三国峠を越えた。そして埼玉側の中津川林道を下っていった。このルートはまさに日本有数のダートコースになっていた。

 焼山峠から乙女高原への荒川林道も、水ヶ森林道も全線がダートだった。
 それから何年かすると、焼山林道が舗装された。ぼくはそのとき「林道舗装化時代」を予感したが、まさかこれほどの速さで甲州の林道が舗装されるとは夢にも思わなかった。

 それだけに信州峠を越えて信州に入り、以前とそれほど変わりがない川上牧丘林道の信州側のダート区間を往復し、3区間のダート合わせて25・7キロというロング・ダートの茂来林道を走り、すこしは胸のつかえが取れたような気がした。
 我らオフロードライダーにとって、ダートを走らないことには話にならない。

 ところで北相木村から佐久町へと南から北へと走った茂来林道はよかった。
 第1区間は峠越えルートで、山中を縫って走る。
 第2区間ではループ状の信濃山林道に接続している。
 第3区間では分岐する支線がこの地方の最高峰の茂来山(1718m)の山頂近くへと延びている。ぼくにとっては初めての林道だった。

 信州峠を越えてふたたび山梨県側に戻ると、増富温泉の「増富の湯」に入った。
 源泉の湯温は30度。温いというよりも冷たい湯。ところがこの湯に長くつかると、不思議なほどに体がポカポカしてくる。増富温泉は世界でも有数の放射能泉で、昔から万病に効くといわれている。

 増富温泉はまた「信玄の隠し湯」としてもよく知られている。
 信玄は金鉱のみならず、温泉の科学にも熟知していた。そのため甲州内にはさきほどの太良峠下の要害温泉や積翠寺温泉をはじめ、甲府市内の湯村温泉、上日川峠下の嵯峨塩温泉、笛吹川流域の三富温泉、川浦温泉、天科温泉の3湯さらには下部温泉と、各地に「信玄の隠し湯」が点在している。戦闘で傷ついた将兵たちを温泉で癒したのだ。

 これら「信玄の隠し湯」はどこもよく効く。
 甲州の林道の最後は韮崎の南側の林道群。3本の林道を走って韮崎に戻ると、釜無川を見下ろす高台上の新府城跡を見た。武田滅亡の舞台。
 信玄の息子の勝頼は結局、この城には入れず、逃げ落ちた。
 そして天目山で織田・徳川の連合軍に滅ぼされた…。

 全部で12本、合計117・4キロのダートを走った「中部編」の第1弾目。
 次は富山を目指しての第2弾目だ。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク

著者・管理人

Author: 賀曽利隆
Twitter:@kasori3000
Administrator:ウザワ・K

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