伝説の「賀曽利隆オンライン」(16)

(2001年1月1日)

 みなさん、あけましておめでとうございます。いよいよ21世紀に突入ですね。

 昨年末の12月27日と28日、20世紀最後のツーリングに行ってきました。「いわき→新潟」の本州横断です。バイクはスズキDJEBEL250GPSバージョン。1999年には「日本一周」を走り、もう昨年のことになってしまいますが、2000年には「サハリン縦断」と「韓国一周」を走ったバイクです。

 東京からいわき市までは常磐道を走りました。抜けるような青空で雲ひとつない快晴。いわきの空も、若干、雲はありましたが晴天でした。ここから国道49号で新潟を目指しました。阿武隈山地に入っていくと強烈な寒さ。長沢峠あたりが寒さのピークでした。寒さは厳しいのですが、雪はほとんどありませんでした。

 郡山に着くと天気は変わり、いまにも雪が降りそうな曇り空でした。そこから難関の中山峠に向かっていくと、磐梯熱海あたりから雪道になりました。転倒もせずに無事、中山峠を越え、会津に入ったのです。

 夕暮れになり、気温がガクンと下がってからが地獄。あっというまに路面は凍結し、しょっぱなのアイスバーンで転倒し、2、30メートルくらい滑りました。その後、2度、転倒‥。ツルンツルンのアイスバーンに歯が立ちません。

 会津若松は雪。降りしきる雪をついて走り、会津板下へ。そこから4キロほど北に行った津尻温泉の一軒宿「滝の湯」に泊まりました。まさに生き返るようでした。

 翌日は朝から激しい雪。津尻温泉から国道49号に出るまでの4キロが死に物狂い。国道49号に出てからも堂坂峠、藤峠、車峠、鳥井峠と4つの峠越えは雪とアイスバーンとの大格闘。下手に転倒すると対向車や後続車にやられてしまうので、たえずバックミラーを見ながら走りました。といっても降りしきる雪で視界が悪いので対向車や後続車の確認がまた難しいのです。

 新潟県に入り、最後の鳥井峠を越え、津川の町の着いたときは心底ホッとしました。ここから新潟までは会津に比べるとうそのように楽でした。新潟に着くころには雪もやみ、市内に雪は見られませんでした。

 新潟から国道8号、17号と走り、三国峠を越えました。前橋から関越道で東京に戻って来ましたが、全行程は871キロ。「いわき→新潟」の本州横断でDJEBELは1年8ヵ月で8万キロを突破しました。

 新年の除夜の鐘は神奈川県伊勢原市の我が家に近い相模の三の宮、比々多神社でついてきました。さー、これから21世紀最初のツーリングに行ってきます!

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(2001年1月25日)

 寒さの厳しい毎日がつづいていますが、みなさん、お変わりございませんか。
 ぼくは年末年始も返上で、「韓国一周」の原稿を書いていました‥‥。

 元旦は相模湾の大磯海岸まで“初日の出ツーリング”に行きました。21世紀最初のミニツーリングから帰り、妻や子供たちと一緒に雑煮を食べ終わると、すぐに机に向かいました。そのかいあって、「韓国一周」の原稿を書きおえることができました。今、ホッとひと息、ついています。

 こうしてひとつの旅を原稿にまとめるのは、すごくいいことだと思っています。ぼくの持論ですが、書くことによって同じ旅を3回、楽しめるからです。

 今回の「韓国一周」でいえば、出発までは、いろいろと頭の中で想像して「韓国一周」を楽しみました。それともうひとつ、今までに行った「韓国の旅」の数々が、じつに鮮明な映像となって蘇ってくるのです。これがけっこういいものですね。記憶の上にかぶさっていたほこりが、フーッと吹き払われたかのようでした。

「韓国一周」の出発点となった釜山から実際に走りはじめると、すべてを忘れ、毎日毎日の旅に世界に没頭しました。
「このままずうっと、韓国の旅がつづいたらいい!」
 と思ったくらいです。

「韓国一周」から帰ってそれを原稿にまとめていると、実際にまわったときと変わらないくらいの密度の濃さを感じてしまいます。今度はいろいろと調べるので、実際にまわっていたときではわからなかったことが見えてきたりします。そして原稿を書きながら次回の「韓国一周」を計画したりして‥‥。2度目の「韓国一周」では「ここをまわろう、あそこにも行こう!」と次々と夢がふくらんでいきます。

 ということで、「韓国一周」の本は3月中にはJTBから出ますので、みなさん、どうぞご期待下さい。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


300日3000湯めぐり・データ(9)

「九州編・門司→鹿児島」(2007年4月30日~5月21日)

(福岡)
1310、日明温泉「日明の湯」(1000円)
1311、ゆったり温泉「シーサイドスパ」(900円)
1312、河内温泉「あじさいの湯」(800円)
1313、本城温泉「おとぎの杜」(900円)
1314、遠賀川温泉「遠賀川温泉」(700円)
1315、あがの温泉「白糸の湯」(800円)
1316、ほうじょう温泉「ふじ湯の里」(500円)
1317、日王山温泉「日王の湯」(500円)
1318、松原温泉「松原温泉」(500円)
1319、伊川温泉「こうの湯温泉」(1泊朝食5500円)
1320、久山温泉「レイクサイドホテル久山」(900円)
1321、脇田温泉「湯乃禅の里」(800円)
     津屋温泉(天然温泉ではない)
1322、香椎温泉「極楽湯」(500円)
1323、博多駅前温泉「八百治の湯」(700円)
1324、天神温泉「ゆの華」(700円)
1325、二丈温泉「きらら乃湯」(500円)

(佐賀)
1326、鳴神温泉「ななのゆ」(400円)
1327、七山温泉「七山温泉」(500円)
1328、鏡山温泉「美人の湯」(600円)
1329、伊万里温泉「ウェルサンピア伊万里」(1泊朝食11880円)
1330、佐里温泉「登栄荘」(600円)
1331、おうち温泉「天徳の湯」(500円)
     妙法寺温泉(定休日で入れず)
1332、厳木温泉「佐用姫の湯」(400円)

(福岡)
1333、まむし温泉「まむし温泉」(800円)

(佐賀)
1334、野田温泉「やすらぎ荘」(600円)
1335、玄海温泉「パレア」(500円)
1336、寺浦温泉「寺浦温泉」(500円)
1337、高串温泉「肥前町福祉センター」(410円)
1338、いろは島温泉「いろは島」(420円)

(長崎)
1339、福島温泉「国民宿舎つばき荘」
1340、千里ヶ浜温泉「ホテル蘭風」(800円)
1341、平戸温泉「平戸海上ホテル観月館」(1泊朝食8550円)
1342、鹿町温泉「やすらぎ館」(600円)
1343、世知原温泉「山暖簾」(500円)
1344、九十九島花みずき温泉「サスパ」(800円)
1345、ひゃく年の湯温泉「エコスパ佐世保」(600円)
1346、ウェルサンピア佐世保温泉「スパ早岐瀬戸」(600円)
1347、ばってんの湯温泉「ばってんの湯」(600円)
1348、波佐見温泉「泉荘」(500円)
1349、川棚大崎温泉「しおさいの湯」(500円)

(佐賀)
1350、嬉野温泉「元湯温泉」(500円・休日料金)

(長崎)
1351、大村温泉「大村ゆの華」(650円)
     「諫早第一ホテル」(1泊朝食4200円)
1352、小浜温泉「浜の湯」(150円)
1353、雲仙温泉「雲仙よか湯」(400円)
1354、口之津温泉「保養センターくちのつ」(500円)
1355、原城温泉「真砂」(500円)
1356、須川温泉「須川観光ホテル」(200円)
1357、布津温泉「湯楽里」(500円)
1358、島原温泉「島原観光ホテル小涌園」(840円)
1359、有明温泉「美人の湯」(500円)
1360、有玉温泉「マルマサ」(500円)
1361、みずほ温泉「千年の湯」(300円)
     「諫早第一ホテル」(1泊朝食4200円)

(佐賀)
1362、太良嶽温泉「有明の湯」(500円)
1363、太良竹崎温泉「夜灯見荘」(500円)
1364、ひぜん裕徳温泉「宝乃湯」(600円)
1365、平谷温泉「山吹の湯」(600円)
1366、武雄温泉「京都屋」(1000円)
1367、北方温泉「七彩の湯」(600円)
1368、津の里温泉「アイル」(500円)
1369、佐賀温泉「極楽湯」(550円)
1370、吉野ヶ里温泉「卑弥呼の湯」(600円)
  
(福岡)
1371、博多温泉「清水園」(1泊朝食6975円)
     大宰府温泉(廃業湯)
1372、二日市温泉「御前湯」(200円)
1373、パノラマ温泉「天拝の郷」(750円)

(佐賀)
1374、川上峡温泉「ホテル龍登園」(800円)
1375、熊ノ川温泉「熊ノ川浴場」(700円)
1376、古湯温泉「古湯温泉センター」(300円)
1377、三瀬温泉「やまびこの湯」(300円)
1378、神埼温泉「国民年金保養センター」(500円)
1379、東背振温泉「山茶花の湯」(700円)
1380、基山温泉「基山ラジウム温泉」(300円)

(福岡)
1381、筑紫野温泉「アマンディ」(950円)
1382、上津温泉「ゆう心の湯」(600円)
1383、久留米温泉「ホテル湯の坂」(1泊朝食5250円)
1384、耳納温泉「スパリゾートホテル久留米」(600円)
     片の瀬温泉 「小林荘」(清掃中)「柳栄館」(臨時休業)
1385、北野温泉「北の湯」(800円)
1386、玄竹温泉「鷹取の湯」(400円)
1387、田主丸耳納温泉「みのう山荘」(700円)

(大分)
1388、夜明温泉「夜明薬湯」(350円)

(福岡)
1389、筑後川温泉「つるき荘」(500円)
1390、原鶴温泉「光泉」(500円)
1391、吉井温泉「ニュー筑水荘」(500円)
1392、美奈宜の杜温泉「杜の湯」(600円)
1393、花立山温泉「花立山温泉」(800円)
1394、あすてらす温泉「満天の湯」(250円・割引)
1395、星野温泉「きらら」(300円)
1396、黒木温泉「グリーンピア八女」(1泊朝食8000円)
1397、甘木温泉「卑弥呼の湯」(400円)
1398、八女温泉「べんがら村」(500円)
1399、船小屋温泉「船小屋温泉共和国」(550円)
1400、大木温泉「アクアス」(500円)
1401、あおき温泉「あおき温泉」(500円)
1402、柳川温泉「南風」(400円)

(熊本)
1403、セキアヒルズ温泉「展望の湯」(500円)
1404、荒尾温泉「弥生の湯」(450円)
1405、玉名温泉「つかさの湯」(680円)
1406、草枕温泉「てんすい」(500円)
1407、小天温泉「那古井館」(400円)
1408、河内温泉「龍栄荘」(1泊朝食6500円)
1409、玉東温泉「ふれあいの丘」(400円)
1410、横島温泉「ゆとり~む」(500円)
     「菊水ロマン館」(天然温泉ではない)
1411、南関温泉「うから館」(300円)
1412、三加和温泉「あぱかん家」(400円)
1413、平山温泉「フローラ」(300円)
1414、鹿北温泉「ゆ~かむ」(300円)
1415、熊入温泉「熊入温泉センター」(150円)
1416、山鹿温泉「さくら湯」(150円)
1417、鹿本温泉「水辺プラザ」(300円)
1418、菊鹿温泉「花富亭」(500円)
1419、菊池砦温泉「くなこく城」(200円・割引)
1420、後藤温泉「後藤温泉」(150円)
1421、菊池温泉「菊池グランドホテル」(500円)
1422、しすい温泉「しすいの湯」(250円)
1423、辰頭温泉「辰頭温泉」(200円)
1424、亀の甲温泉「亀の甲温泉」(200円)
1425、七城温泉「七城温泉ドーム」(1泊朝食6500円)
1426、亜細亜旅情温泉「月のホタル」(300円)
1427、不二乃湯温泉「不二乃湯」(100円)
1428、宝田温泉「宝の湯」(200円)
1429、植木温泉「温泉センター」(200円)
1430、宮原温泉「長命館」(700円)
1431、屋台村温泉「湯の屋台村」(200円)
     弁天温泉(定休日)
1432、菊南温泉「ロマネスクリゾート菊南」(600円)
1433、泗水孔子温泉「孔子温泉」(390円)
1434、とよみずの湯温泉「とよみずの湯」(300円)
1435、はなぶさ台温泉「翠篁苑」(700円)
1436、菊池渓谷温泉「温泉館」(300円)
1437、北里バラン温泉「博士の湯」(300円)
1438、奴留湯温泉「共同浴場」(200円)
1439、山川温泉「ホタルの里温泉」(300円)
1440、麻生釣温泉「亀山の湯」(500円・割引)
1441、はげの湯温泉「わいた山荘」(300円)
1442、岳の湯温泉「清流荘」(500円)
1443、杖立温泉「ひぜんや」(1泊朝食10655円)
1444、地獄谷温泉「裕花」(500円)
1445、七滝温泉「華坊」(500円)
1446、田の原温泉「流憩園」(500円)
1447、飛瀬温泉「天河山荘」(1000円)
1448、小田温泉「彩の庄」(500円)
1449、満願寺温泉「共同浴場」(300円)
1450、白川温泉「しらかわ」(500円)
1451、黒川温泉「地蔵湯」(200円)

(大分)
1452、赤川温泉「赤川荘」(500円)

(熊本)
1453、南小国温泉「温泉館きよら」(300円)
1454、湯田温泉「湯夢プラザ」(300円)
1455、内牧温泉「おふろやさん」(300円)
1456、南阿蘇温泉「南阿蘇」(1泊朝食6030円)
1457、地獄温泉「清風荘」(400円)
1458、阿蘇白水温泉「瑠璃」(400円)
1459、月廻温泉「月廻温泉館」(500円)
1460、高森温泉「高森温泉館」(400円)
1461、垂玉温泉「山口旅館」(600円)
1462、蘇峰温泉「蘇峰温泉」(400円)
1463、四季の森温泉「四季の森」(400円)
1464、阿蘇下田城温泉「阿蘇下田城温泉駅」(400円)
1465、久木野温泉「木の香湯」(400円)
1466、俵山温泉「泉力の湯」(500円)
1467、栃木温泉「朝陽」(400円)
1468、栃木原温泉「いろは館」(300円)
1469、阿蘇水溜温泉「ウィナス」(400円)
     湯ノ谷温泉(廃業湯)
1470、阿蘇健康火山温泉「阿蘇ファームランド」(800円)
1471、火の山温泉「アーデンホテル阿蘇」(800円)
1472、神園温泉「神園山荘」(1泊朝食7000円)
1473、阿蘇一の宮温泉「温泉センター」(200円)
1474、阿蘇やまなみ温泉「阿蘇やまなみリゾートホテル」(500円)
1475、御湯船温泉「御湯船温泉館」(300円)

(大分)
1476、白丹温泉「ふれあいの湯」(250円)
1477、久住高原温泉「民宿久住」(300円)

(熊本)
1478、扇温泉「おおぎ荘」(500円)
1479、寺尾野温泉「薬師湯」(100円)
1480、産山温泉「花の温泉館」(400円)
1481、阿蘇宮地温泉「アゼリア」(400円)
1482、阿蘇坊中温泉「夢の湯」(400円)
1483、阿蘇温泉「司の湯」(500円)
1484、八島温泉「八島温泉」(330円)
1485、湯らっくす温泉「ゲンキ・スクエア」(580円)
1486、熊本城温泉「城の湯」(1泊朝食4850円)
1487、大津温泉「岩戸の湯」(400円)
1488、阿蘇立野温泉「憩の家」(400円)
     火の鳥温泉(入浴料が1000円超なのでパス)
     赤水温泉(入浴のみ不可)
1489、旭志温泉「四季の里・旭志」(330円)
1490、阿蘇飛湯の里温泉「龍神の湯」(480円)
1491、菊陽温泉「さんふれあ」(500円)
1492、弁天温泉「ユーパレス弁天」(400円)
1493、芦原温泉「あしはらの湯」(300円)
1494、藤崎温泉「天望の湯」(600円)
1495、江津湖温泉「ばってんの湯」(450円)
1496、健軍温泉「一休の湯」(500円)
1497、古代湯温泉「ぶぶたん」(800円)
1498、みふね観音温泉「華ほたる」(500円)
1499、石段の里温泉「左俣の湯」(400円)
1500、元湯温泉「かりまた」(1泊朝食6450円)
1501、城南温泉「城南温泉センター」(600円)
1502、不知火温泉「不知火温泉センター」(500円)
     藍の湯温泉(入浴のみ不可)
1503、上天草温泉「スパ・タラソ天草」(500円)
1504、松島温泉「松風閣」(500円)
1505、栖本温泉「河童ロマン館」(450円)
     金乃入湯(天然温泉ではない)
     牛深温泉(定休日で入れず)
1506、下田温泉「白鷺館」(200円)
1507、苓北温泉「麟泉の湯」(400円)
1508、本渡温泉「温泉センター」(500円)
1509、有明温泉「さざ波の湯」(500円)
     松島温泉「松風閣」(1泊朝食6450円)
     赤瀬温泉(入れず)
1510、宇土温泉「あじさいの湯」(400円)
1511、東陽温泉「せせらぎ」(400円)
1512、千丁温泉「パトリア千丁」(400円)
1513、坂本温泉「クレオン」(450円)
1514、吉尾温泉「高野屋」(200円)
1515、大野温泉「大野温泉センター」(500円)
1516、一勝地温泉「かわせみ」(400円)
1517、紅取山温泉「和泉の里」(400円)
1518、華まき温泉「華まき温泉」(300円)
1519、うけば温泉「花手箱」(300円)
1520、中神温泉「中神温泉」(200円)
1521、涼水戸温泉「涼水戸温泉」(300円)
1522、人吉温泉「くまがわ荘」(1泊朝食6240円)
1523、さがら温泉「茶湯里」(400円)
1524、山江温泉「ほたる」(400円)
1525、明哲温泉「明哲温泉」(300円)
1526、神城温泉「神城温泉」(500円)
1527、錦町温泉「錦町温泉センター」(300円)
1528、薬師温泉「ヘルシーランド」(300円)
1529、えびす温泉「えびす温泉」(300円)
1530、ゆの前温泉「湯楽里」(400円)
1531、日奈久温泉「松の湯」(150円)
1532、御立岬温泉「御立岬温泉センター」(500円)
     鶴木山温泉(廃業湯)
1533、計石温泉「計石温泉センター」(170円)
1534、湯浦温泉「ヘルシーパーク芦北」(300円)
1535、つなぎ温泉「四季彩」(500円)
1536、湯ノ鶴温泉「四浦屋本店」(200円)
(鹿児島)
1537、出水温泉「薩摩つる乃湯」(1泊朝食5000円)
1538、高尾野温泉「高尾野温泉センター」(300円)
1539、舞鶴温泉「舞鶴温泉」(300円)
1540、若宮温泉「龍神の湯」(300円)
1541、太陽の里温泉「東泉望」(300円)
1542、長島温泉「温泉センター椿の湯」(300円)
1543、阿久根温泉「クアドーム阿久根」(400円)
1544、川内高城温泉「ホテルまる善」(300円)
1545、川内市街地温泉「川内ホテル」(1泊朝食4200円)
1546、東郷温泉「ゆったり館」(300円)
1547、紫尾温泉「神ノ湯」(200円)
1548、宮之城温泉「湯田区営温泉」(150円)
1549、神子温泉「神子の湯」(300円)
1550、観音滝温泉「滝の宿」(300円)
1551、針持温泉「関白陣」(300円)
1552、湯之尾温泉「がらっぱ荘」(150円)
1553、こすもす温泉「こすもす温泉」(200円)
1554、栗野温泉「ゆっくりらんど」(300円)
1555、栗野岳温泉「南州館」(200円)
1556、吉松駅前温泉「吉松駅前温泉」(250円)
1557、吉松温泉「ゆったり館」(250円)
1558、藤乃湯温泉「藤乃湯温泉」(250円)
1559、原口温泉「原口温泉」(250円)
1560、般若寺温泉「般若寺温泉」(300円)
1561、鶴丸温泉「つるまる温泉」(200円)

(宮崎)
1562、京丸温泉「あわじ荘」(300円)
1563、吉田温泉「亀の湯温泉」(300円)

(鹿児島)
1564、山田温泉「山田温泉」(500円)
     川内市街地温泉「川内ホテル」(1泊4200円)
1565、市比野温泉「ふれあい館」(310円)
1566、諏訪温泉「諏訪温泉」(300円)
1567、入来中央温泉「もんじょの湯」(200円)
1568、いむた温泉「下ノ湯」(100円)
1569、入来温泉「紫垣湯」(100円)
1570、くしき野白浜温泉「みすまるの湯」(330円)
1571、市来温泉「市来ふれあい温泉センター」(250円)
1572、湯之元温泉「ゆぅ~ゆぅ~」(500円)
1573、宮田石温泉「花水木」(350円)
1574、太田温泉「太田鉱泉」(360円)
1575、伊集院温泉「ゆすいん」(300円)
1576、まつもと温泉「茶山ドームまつもと」(280円)
1577、神之川温泉「神之川温泉」(330円)
1578、郡山温泉「スパランドららら」(400円)
1579、大黒温泉「大黒温泉」(360円)
1580、鹿児島市内温泉「ビジネスホテル天文館公園」(1泊朝食4000円)
1581、喜入八幡温泉「喜入八幡温泉保養館」(300円)
1582、弥次郎ヶ湯温泉「大黒湯」(250円)
1583、東郷温泉「東郷温泉」(250円)
1584、指宿温泉「砂むし会館」(600円・温泉のみ)
     山川温泉(入浴のみ不可)
     成川温泉(廃業湯)
1585、鰻温泉「区営鰻温泉」(200円)
1586、伏目温泉「ヘルシーランド」(300円)
1587、開聞温泉「開聞温泉」(250円)
1588、川尻温泉「かいもん荘」(450円)
     えい別府温泉(定休日で入れず)
1589、枕崎なぎさ温泉「枕崎なぎさ温泉」(360円)
1590、かせだ海浜温泉「ゆうらく」(330円)
     いろは館温泉(断念)
     川辺温泉(断念)
     笠沙温泉(断念)
     金峰温泉(断念)
1591、吹上温泉「新湯温泉」(300円)
1592、吹上浜温泉「ゆ~ぷる吹上」(400円)
     鹿児島「東横イン 天文館Ⅰ」(1泊朝食6090円)

テーマ : 温泉
ジャンル : 旅行


「鈍行乗り継ぎ湯けむり紀行」(15)

(月刊『旅』1995年3月号 所収)

谷地頭温泉の市営温泉浴場
 前回の終着点、青森からは、20時56分発の函館行きL特急「はつかり21号」に乗った。もうこの時間帯だと、普通列車(快速)もないので、特急列車に乗るしかなかった。列車は青函海底トンネルを走り抜けて北海道に入り、22時59分に函館に到着した。

 函館では駅近くのビジネスホテル「ホテル第2オーシャン」に泊まり、翌朝、4時起床。すぐさま夜明け前の町へと出ていった。函館の朝は早い。午前4時を過ぎると、駅前の朝市には明かりが灯りはじめ、早々と営業をはじる食堂もある。そのうちの一軒に入り、北海道の名物料理、三平汁をフーフーいいながら食べた。

 三平汁で体を暖め、パワーをつけたところで、凍てつく寒さの中を谷地頭温泉へと歩いていく。その間、3、4キロ。歩道に降り積もった雪はパリンパリンに氷つき、ツルツル滑る。怖いな、危ないなと、へっぴり腰で歩いているうちに、ステーンと見事にひっくり返ってしまった。その痛いことといったらない‥。これが「函館→稚内」間の第1回目の転倒だ。

 函館山東麓の谷地頭温泉には、市営の公衆温泉浴場がある。入浴料320円。公営の温泉浴場としては、日本でも屈指の大きさを誇り、600人を収容できる。

 朝は6時から夜は9時半までと、営業時間が長い。ここはまさに市民の憩いの場。6時のオープンとともに次々と入浴客がやってきて、大浴場はけっこうな賑わいをみせる。いかに市民に親しまれているかがよくわかる温泉だ。顔見知りの人たちが多いようで、和気あいあいの雰囲気。その中に我が身をひたしていると、心の中まで暖かくなってくる。茶褐色をした湯はかなり塩分が強い。含硼酸・土類石膏の強食塩泉だ。

 北海道の第1湯目、谷地頭温泉の湯を十分に堪能したところで、7時過ぎに函館駅に戻り、7時15分発の函館本線・大沼公園行きに乗る。5両編成の気動車。前の2両が大沼公園行きで、後ろの3両は七飯止まりになる。さすがに寒さの厳しい北海道、窓が二重になっている。

 定刻どおりに列車は函館駅を出発。いよいよ稚内までの“鈍行乗り継ぎ”の開始だ。

 列車が動きだし、函館駅のホームを離れていく瞬間は、まさに胸が踊る。列車は函館平野を走り、七飯駅を過ぎると山中に入っていく。峠を越える。すると、どうだろう‥、まっ白に氷結した湖の向こうに雪化粧した駒ヶ岳が見えてくるではないか!
 感動の北海道冬景色だ。

 大沼公園駅で下車し、大沼温泉に入ろうと、まず駅近くの「ホテルニットー大沼」に行く。だが入浴は宿泊者のみ。次に「大沼山水旅館」に行く。すると休業中。残念ながら大沼温泉には入れなかったが、大沼公園駅で降りてよかった。

 氷結した大沼の湖畔に立って駒ヶ岳を眺めることができたし、隣りあった小沼では、岸辺で群れ遊ぶ白鳥をあきずに眺めていた。

「クックー、クッククー」と鳴いて飛んでいく白鳥の姿には、「あー、これが冬の北海道なんだ」と思わせる無垢の美しさがあった。

 函館本線と室蘭本線の分岐駅、長万部には11時54分着。なにしろ列車の本数の少ない函館本線、次の列車はというと、2時間半後なのだ。そこで、長万部温泉をからめて長万部をピクニック気分で歩くことにした。

 駅前の「かにめし本舗」で名物駅弁の「かにめし弁当」(1000円)とお茶を買い、それを持って海岸に行く。波静かな内浦湾の海岸線がきれいな弧を描いている。砂浜に新聞紙を広げ、その上に座って食べる。

 満腹になったところで、駅から徒歩5分の長万部温泉に行く。1957年の、天然ガスの試掘中に温泉が湧出したという。“長万部温泉発祥の地”碑に隣りあった「長万部温泉ホテル」の湯に入る。ここは公衆温泉浴場で、番台で入浴料の320円を払うようになっている。


豪雪のニセコを歩く
 長万部発14時27分の、函館本線・小樽行きに乗る。1両の気動車。長万部の町中ではほとんど雪は見られなかったが、峠に向かって走るにつれて、一面の雪景色に変わる。

 ゆるやかな峠に到達。国道5号が並行して走っている。峠の真上に、蕨岱駅。ここで太平洋に別れを告げる。

 太平洋側と日本海側に二分するこの峠を境にして、雪の量は劇的に変わる。北海道も本州と同じで、冬の日本海側世界は圧倒的に雪が多い。この“名無し峠”を越えると、北海道縦断のゴール稚内までは、ずっと雪景色を眺めながら、日本海側世界を行くことになる。

 蕨岱から黒松内に下り、もうひとつの峠、目名峠を越える。峠のトンネルを抜け出るとそこはニセコ連峰山麓の蘭越町で、雪の量はさらに多くなる。ニセコ周辺は、北海道でも有数の豪雪地帯なのである。

 15時45分着の昆布駅で下車し、ニセコ温泉郷の温泉めぐりを開始する。まず駅から徒歩5分の昆布川温泉「幽泉閣」(入浴料300円)の湯に入る。湯から上がり外に出ると、なにしろ気温が低いので、体の火照りはいっぺんに吹き飛んでしんまう。

「これは、中途半端な寒さではないゾ…」
 と、気を引き締め、腹にグッと力を入れ、気合を入れて雪道を歩きはじめる。これからニセコ連峰中腹のニセコ湯本温泉を目指し、12キロの道のりを歩くのだ。

 積雪は1メートルを超えているが、道路はしっかりと除雪されているので、車はふつうに走っている。それほど歩きにくくもない。

 ところが夕暮れが近づくと、急速に路面は凍りつき、ツルンツルンのアイスバーンに変わる。ここで2度目の転倒。それ以降、さんざんアイスバーンには悩まされるようになる。強烈な寒さで、手袋をした手はキリキリ痛むのだが、転倒が怖くてポケットに手を入れることもできない。

 日暮れの風景はすばらしい!
 正面にニセコ連峰の主峰群、右手に蝦夷富士の羊蹄山、左手には茜色に燃える夕空…と、ニセコの夕景色を堪能した。

 日が暮れる。夜道を歩く。スキー場のこうこうと輝く明かりがまぶしい。不夜城のようだ。分岐点を右に折れてニセコ昆布温泉に寄り、「ニセコグランドホテル」(入浴料700円)の湯に入り、いよいよニセコ湯本温泉へ。

 ゆるやかな登りがはてしなくつづく。いささかバテ気味。チョコレートをかじって元気をつけ、「あと、もうひと息」と、自分で自分を励ます。

 チセヌプリスキー場の明かりが間近に迫り、温泉の匂いをかいだときは、「助かった!」と、生き返るような思いだ。

 ニセコ湯本温泉には、夜の8時前に到着。山小屋風温泉宿の「ロッジチセハウス」に泊まる。まずは温泉だ。泉質の違う湯船にひとつづつ入ったあと、雪がチラチラちらつく露天風呂の湯につかる。すぐ横のゲレンデをスキーヤーたちがシュプールを描いて滑り降りていく。湯につかりながら、そんな光景を眺めていると、不思議でならない。自分一人が、まったく異質な世界に飛び込んだような違和感を感じた。

 翌朝は4時半に出発。一歩、宿を出たときの寒さといったらない。

 気温氷点下15度。昨夜来の雪は、ニセコおろしの烈風にのって激しく舞い、地吹雪の様相だ。路面にはかなりの雪が積もっているが、その中をスニーカーで歩く辛さ‥。ただ、まったく水分がないかのようなサラサラの雪なので、昨夜のアイスバーンに比べたらかえって歩きやすかった。

 猛烈な寒さと地吹雪に全身で立ち向かい、大格闘し、ただひたすらに歩きつづけた。うっかり足を止めようものなら、凍死しかねないような寒さだった。

 うっすらと夜が明けたころに、昆布駅に到着。時間は6時半だ。すぐさま、昆布川温泉の「幽泉閣」に駆けつける。まだ、外来客の入浴時間ではなかったが、無理をいって入浴させてもらった。浴室に飛び込み、湯を何杯かかぶったときの、温泉のありがたさといったらない。芯まで凍りついた体のすみずみに、瞬時にして、ドクドクと音をたてて血が流れはじめたような気がした。
「助かったー!」
 という声が、思わず口をついて出る。


“峠のカソリ”、塩狩峠の塩狩温泉に泊まる
 昆布発7時48分の小樽行きに乗る。2両編成の気動車。倶知安、仁木と雪が深い。列車は雪けむりを巻き上げて雪原を突っ走る。余市を過ぎると、左手の車窓には日本海が見えてくる。北西の季節風をまともに受けて、海は猛り狂い、まっ白な波頭をあちらこちらで見せていた。

 小樽着9時54分。小樽からは、快速列車に乗って札幌へ。JR北海道のドル箱路線の小樽ー札幌間は、「これが同じ函館本線?」といいたくなるほど列車の本数が多い。また、小樽ー札幌ー旭川間は電化されている。

 札幌に着くと、30分ほど駅周辺を歩く。駅前で3度目の転倒‥。すぐ近くにいた女の子たちにクスクス笑われ、痛さよりも恥ずかしさが先にたった。ここで早めの昼食にし、札幌ラーメンを食べた。

 札幌から旭川へ。列車は雪の石狩平野を走る。江別、岩見沢と通り、美唄で下車。美唄温泉に行くつもりにしていたが、歩くと1時間ほどかかるといわれ、残念ながら断念‥。なにしろツルツル滑る雪道、氷道なので、いつものように走ることもできない。美唄温泉のかわりに美唄の町を歩いた。

 美唄からは、砂川、滝川と通り、江部乙で下車し、駅前温泉の江部乙温泉に行く。雪が一段と多くなる。函館本線の「函館ー旭川」間では、このあたりが一番の積雪量。降り積もった雪は高さが2メートルを超え、駅舎の屋根も、すっぽりと雪で覆い隠されていた。

 江部乙温泉の一軒宿「えべおつ温泉」は、公衆温泉浴場(入浴料400円)になっている。町の人たちが、次から次へとやってくる。湯は海水よりも濃いと思われる強食塩泉。ま水を沸かした湯船もある。サウナもある。次の列車までかなりの待ち時間があるので、体がクニャクニャフニャフニャになるくらいに長湯した。湯から上がると、自販機の冷たいカンコーヒーをたてつづけに2本飲んだ。

 ところで、温泉内の自販機だから、当然、すべての飲み物がCOLDになっている。おもしろいのは、町中の自販機も、HOTよりも圧倒的にCOLDが多いことである。このあたりが本州とは違う。冬の北海道は、汗が流れ出るくらいに家の中の暖房をガンガンきかせるので、温泉から上がったときと同じように、冷たい飲み物が欲しくなるのだろう。冬の北海道は、家の中に一歩入れば夏と変わらない。北海道から上京してきた人たちが東京の冬の寒さを嘆くのも、それは無理のないこと。江部乙温泉で、北海道の冬と東京の冬の違いを考えてみるのだった。

 16時22分、江部乙発。列車は夕暮れの雪原を走る。灯りはじめた家々の明かりが、ポーッと、純白の雪原に映っている。

 17時10分、函館本線の終点、旭川着。17時40分発の宗谷本線・名寄行きに乗り換える。2両編成の気動車。列車は比布を過ぎ、蘭留を過ぎると、ジーゼルのエンジン音を苦しげに響かせて、塩狩峠を登っていく。

 18時28分、塩狩着。塩狩峠の真上にある駅。塩狩峠は石狩と天塩の境の峠で、北海道第1の大河、石狩川と、第2の大河、天塩川を分ける分水嶺の峠になっている。北海道の峠には、塩狩峠のような名前のつけ方の、国境の峠がいくつもある。石狩・十勝国境の狩勝峠、石狩・北見国境の石北峠、釧路・北見国境の釧北峠など。

 塩狩峠には、塩狩温泉の一軒宿「塩狩温泉観光ホテル」がある。そこが今晩の宿。雪道を歩き、駅から徒歩2分の「塩狩温泉観光ホテル」に着くと、
「カソリさんですよね。『旅』の連載、毎月、楽しみに読ませてもらっています。それできっとここにも来てくれるだろうって、ずっと待っていたんですよ」
 と、フロントの青年に、そう声をかけられた。

 青年は池田耕太郎さん。
 もらった名刺にはフリートラベラーとある。いいねー、“フリートラベラー”だなんて‥。池田さんは自由気儘に日本各地を旅していたが、いつしか北海道にはまり込み、この塩狩温泉をベースに、仕事をしては旅に出、また仕事をしては旅に出ているという。まさにフリートラベラーなのである。

 塩狩温泉の酸性緑ばん泉の湯に入り、鴨鍋の夕食を食べたあと、池田さんには、手製の「天塩川沿い“一軒宿の秘湯”案内」と名づけた天塩温泉地図を見せてもらった。写真入りで、全11湯のコメントが加えられた、なかなかの労作なのである。

 天塩の温泉の中では、明治38年開湯の五味温泉がもっとも古く、大正10年開湯の塩狩温泉がそれに次ぐという。池田さんの話を聞き、温泉地図を見せてもらっていると、
「今度はバイクで来よう! 天塩の全湯制覇を成しとげてやろう!」
 と、旅の最中でありながら、また新たな旅への気持ちに駆りたてられた。


豊富温泉へ、極寒の地を歩く
 翌朝は5時半に起き、時間をかけて朝風呂に入り、6時53分発の名寄行きに乗る。ここでは旭川行きの待ち合わせ。宗谷本線の上り下りの一番列車同士が、塩狩駅ですれ違う。ただ、それだけのことだが、何か、感動のシーンなのだ。

 塩狩峠から名寄盆地へと下っていく。「函館ー稚内」の北海道縦断も最後のステージ。道南、道央から、道北へと入っていく。

 天気が目まぐるしく変わる。
 塩狩峠では雪がチラチラ降っていた。峠下の和寒では雪がやみ、曇り空。それが士別まで来ると、まるで雪雲を吹き飛ばしたかのような快晴の空になる。

 名寄で稚内行きに乗換え、美深まで来ると、ふたたび曇り空。8時47着の天塩川温泉駅で下車すると、激しく雪が降っていた。

 一面の銀世界の中を歩き、駅から徒歩15分の天塩川温泉へ。その手前で氷結した天塩川を渡る。氷の割れ目からわずかに川の流れが見えている。凍りついた大河の光景を見たとき、ぼくは無性に厳冬のシベリアを旅してみたくなった。氷点下30度、40度という極寒の地を歩き、厚い氷の張ったアムール川(黒龍江)を見てみたいと思ったのだ。

 天塩川を見下ろす高台の上に、天塩川温泉の音威子府村営「住民保養センター天塩川温泉」(入浴料200円)がある。近代的な施設の温泉宿。

 東京の大学のスキー部が合宿していた。ここの大浴場では、のぼせるくらいに長湯した。というのは極端に鈍行列車の本数の少ない宗谷本線なので、次の列車というと、なんと、5時間後なのである。
途中でカンジュースやカンビールを飲み、3時間、湯に入った。

 昼になったところで、センター内の食堂で“音威子府そば”のてんぷらそばを食べた。骨太の、北の大地の人々を思わせるような、腰のある黒々とした麺。カラッと揚げた大きなエビが3つものっていた。

 13時36分発の稚内行きに乗り、途中、天塩中川で下車。駅から徒歩20分のぽんぴら温泉の一軒宿「ぽんぴらアクアリズイング」(入浴料300円)に行く。ここは第三セクターが経営する“日本最北のクアハウス”で、新しい、近代的な建物。大浴場も湯船も広々している。これで入浴料が300円というのはなんとも安い。高級温泉ホテルなみの入浴気分を味わえる温泉だ。

 天塩中川から豊富へ。豊富到着は、すっかり日の暮れた17時48分だった。

 列車を降り、駅舎を一歩、出たときの寒さといったらない。氷点下20度近い強烈な寒さに、思わず立ちすくんでしまう。豊富温泉までの6キロの道のりを歩いていくのだが、
「ほんとうに歩けるのだろうか‥‥」
 と、すっかり弱気になってしまう。

 地表のものすべてが凍りつくような、はく息がパリパリ音をたてて凍りつくような寒さ‥。あまりの寒さに思考能力が消え失せ、頭の中がまっ白になってしまったほどである。まさに、“極寒地獄”。

 豊富温泉までは必死になって歩いた。軍手の上にバイク用のグラブをはめ、マフラーでほおかむりして歩いたが、手の指先はちぎれんばかりに痛み、耳も我慢できないほどに痛くなる。1時間半かかって豊富温泉に着くと、今晩の宿「豊富観光ホテル」に入る前に、豊富町営温泉「ふれあいセンター」(入浴料400円)の湯に入る。ザックからタオルを取り出すと、ぽんぴら温泉で使った濡れたタオルは、コンクリートの棒のようにカチンカチンになって凍っていた。

「ふれあいセンター」の湯は、草色をしている。塩分が強く、湯の表面には脂分が浮いている。入浴している人に聞くと、この脂分が体によく効くのだという。湯に入って、人心地がついたところで、「豊富観光ホテル」に行く。

 カニや刺し身、貝料理、鍋物‥‥といった豪華な夕食をすませたところで、大浴場の湯にゆっくりと入る。ここの湯は、無色透明無味無臭。湯がザーザー音をたててあふれ出る湯船につかり、大浴場を独り占めにし、おもいっきり体を伸ばした。生き返るような思いというのは、まさにこのことだ。


ここがゴールだ! 日本最北の稚内温泉
 翌朝は5時半、起床。朝風呂に入り、つかのまの天国の気分を味わう。湯から上がると「さあー、行くゾー!」と気合を入れて出発。ほんとうに気合を入れないことには、歩けないくらいの寒さなのだ。凍りついた雪道をサクサクサクサク踏みしめて歩く。

「人間の体って、よくできているなあ!」
 と感心してしまうのは、前夜よりもさらに厳しい夜明けの寒さなのにもかかわらず、その寒さに体が慣れていったことだ。自分自身の体の適応能力を実験しているようなものだ。

 8時前に豊富駅に到着し、8時33分発の稚内行きに乗る。1両の気動車は、豊富駅を出ると、広大なサロベツ原野を走る。雪原の向こうに、スーッときれいな曲線を描いて、利尻富士がそびえ立っている。

 9時18分、宗谷本線の終点、稚内に到着。日本鉄道網の最北の駅だ。さっそく凍てつく寒さの中を歩きはじめる。まず、高台の稚内公園に登り、稚内の中心街と稚内港、その向こうに広がる宗谷海峡を見下ろす。

 次に稚内港へ。半アーチ式の北埠頭ドームを歩き、稚泊航路記念碑を見る。稚泊航路とは大正12年に開設された稚内と樺太(サハリン)の大泊(コルサコフ)を結ぶ航路で、日本の北への動脈となっていた。1945年に閉鎖されるまで、稚泊連絡船は300万人あまりの乗客を運んだという。

 まもなく、稚内市民待望の「稚内ーコルサコフ」間の定期船が就航するとのことだが、それは新しい時代を予感させる稚泊航路の復活だ。

 ぼくは1991年に「東京ー稚内」をバイクで走り、稚内港からロシア船にバイクを積んでサハリンのホルムスク(旧真岡)に渡り、サハリン南部を走りまわった。だがそれは、けっこう大変な、難しいことで、誰でもができるというものではなかった。

 しかし「稚内ーコルサコフ」間に定期船が就航すれば、もっと簡単にサハリンに渡れるようになるだろうし、サハリンにバイクを持っていけるようになるかもしれない。それはまさに、新しい“北海道ツーリング”の時代の到来だ。

 稚内港から海沿いの道を4キロほど歩き、ノシャップ岬へ。その間のアイスバーンで転倒‥。函館から数えて8回目の転倒だ。

 ノシャップ岬からは、ゴーゴーと音をたてて吹きつける雪まじりの季節風をついてさらに4キロほど歩き、日本最北の稚内温泉へ。市営の「稚内市民温泉保養センター」(入浴料400円)に到着したときは、
「バンザーイ!」
 と、大声で叫んでやった。
「とうとう、ここまで来たのか」
 という感動だった。

 稚内温泉の塩分の強い湯につかっていると、“鈍行乗り継ぎ”の温泉めぐりのさまざまなシーンが、次から次へと思い出されてならなかった。
「ありがとう、日本の温泉よ!」
 と、お礼をいいたい気持ちでいっぱいだった。

 稚内温泉から稚内駅まで、また8キロあまりの道のりを歩いて戻る。

 稚内の市街地に戻り着くころには、すっかり日は暮れていた。“郷土料理”の看板を掲げた「網元」という店に入り、北海の味覚を味わった。まずは、ホタテガイとホッキガイの刺し身。ホタテガイはオホーツク海の猿払でとれたもの、ホッキガイは日本海の抜海と稚咲内でとれたものだという。
「ともに、地元産の天然ものですよ。どうです、味がちがうでしょ」
 と、店の主人は自慢気だ。

 なるほど、ホタテガイには、養殖もの特有のフニャッとしたやわらかさがなく、シコシコッとした歯ごたえがある。ほのかな甘味の脂分がなんともいえない上品さをかもしだしている。ホッキガイも湯に通していないので、自然のままの色あいだ。

 次に、ホッケの開きを焼いてもらう。これが、じつにうまい。皿からはみだすくらいの大きさで、たっぷりと脂がのっている。とくに身と皮の間の脂分がたまらない。最後に北海道を代表する味覚の“ウニ丼”を食べ、満ち足りた気分で、稚内駅に戻るのだった。

 稚内発22時05分の寝台急行「利尻」で札幌へ。札幌到着は、翌朝の6時00分。札幌からは、一路、東京へと向かう。特急「スーパー北斗2号」で函館へ。快速「海峡6号」で青森へ。L特急「はつかり18号」で盛岡へ。最後は東北新幹線の「やまびこ50号」。東京駅の13番線ホーム到着は、稚内出発から21時間27分後の、19時32分だった。

 うれしいことに、この「鈍行乗り継ぎ湯けむり紀行」の連載を企画してくれた『旅』編集長の秋田守さんと、連載を担当してくれた渡辺香織さんが、ホームに出迎えに来てくれていた。

 お2人と、がっちり握手をかわす。そのとき、“鈍行乗り継ぎ”の「日本一周」が終わってしまったことを強烈に感じた。

 全部で329本の列車に乗り継いでの「日本一周」だった。

(了)

テーマ : 鉄道の旅
ジャンル : 旅行


300日3000湯めぐり・データ(8)

「九州編・東京→下関」(2007年4月20日~4月29日)

(埼玉)
1211、和光温泉「極楽湯」(700円)
1212、東松山温泉「蔵の湯」(600円)
1213、こだま温泉「ファミリープラザ」(700円)

(長野)
1214、角間温泉「岩屋館」(1000円)
1215、渋沢温泉「渋沢温泉」(300円)
1216、あずまや温泉「あずまや高原ホテル」(1000円)
1217、地蔵温泉「十福の湯」(600円)
1218、松代温泉「寿楽荘」(350円)
1219、大室温泉「まきばの湯」(500円)
1220、保科温泉「永保荘」(300円)
1221、裾花峡温泉「うるおい館」(1泊朝食10800円)
1222、黒姫温泉「ホテルアスティーくろひめ」(500円)

(富山)
1223、大谷温泉「大谷温泉」(370円)

(石川)
1224、みろく温泉「みろく温泉」(370円)
1225、手取温泉「バードハミング鳥越」(320円)
1226、赤穂谷温泉「赤穂谷温泉」(500円)
1227、瀬領温泉「せせらぎの郷」(350円)

(福井)
1228、丸岡温泉「たけくらべ」(500円)
1229、霞の郷温泉「霞の郷」(500円)
1230、福井温泉「アパホテル」(1泊朝食9050円)
1231、大安寺温泉「すかっとランド九頭竜」(600円)
1232、勝山温泉「水芭蕉」(500円)
1233、杉山温泉「杉山鉱泉」(500円)
1234、法恩寺温泉「ホテルハーベスト勝山」(800円)
1235、六呂師高原温泉「ピクニックガーデン」(600円)
     鳩ヶ湯温泉(冬期休業)
1236、九頭竜温泉「平成の湯」(500円)
1237、美山森林温泉「みらくる亭」(400円)
1238、かわだ温泉「ラポーゼかわだ」(500円)
1239、しぶき温泉「湯楽里」(500円)
1240、敦賀トンネル温泉「北国グランドホテル」(1泊朝食1170円)
     健康の丘温泉(定休日で入れず)
1241、泰澄の杜温泉「泰澄の杜」(500円)
     天谷温泉(廃業湯)
1242、花みずき温泉「若竹荘」(400円)
1243、越前厨温泉「漁火」(500円)
1244、花はす温泉「そまやま」(550円)
1245、今庄365温泉「やすらぎ」(500円)

(滋賀)
1246、長浜太閤温泉「豊公荘」(600円)
1247、十二坊温泉「ゆらら」(600円)

(京都)
1248、壬生やまと温泉「壬生やまとの湯」(650円)
1249、京都桂温泉「仁左衛門の湯」(600円)
1250、竹の郷温泉「ホテル京都エミナース」(1泊朝食15600円)
     湯ノ花温泉(入浴のみ不可)
1251、るり渓温泉「るり渓温泉」(700円)
1252、ひよし温泉「スプリングスひよし」(650円)
1253、草山温泉「観音湯」(700円)

(兵庫)
1254、国領温泉「助七」(700円)
1255、篠山温泉「ささやま荘」(700円)

(京都)
1256、福知山温泉「養老の湯」(700円)
1257、夜久野高原温泉「ほっこりの湯」(600円)

(兵庫)
1258、よふど温泉「極楽湯」(600円)
1259、奥香の湯温泉「奥香の湯」(600円)
1260、やぶ温泉「但馬楽座」(1泊朝食5875円)
1261、但東シルク温泉「但東シルク温泉館」(500円)
1262、出石温泉「湯元館」(300円)
1263、とがやま温泉「天女の湯」(600円)
1264、関宮温泉「万灯の湯」(600円)
1265、ハチ北温泉「湯治の郷」(500円)
1266、村岡温泉「村岡温泉」(500円)
1267、小代温泉「おじろん」(500円)
1268、湯村温泉「薬師湯」(300円)

(鳥取)
1269、岩井温泉「ゆかむり温泉」(300円)
1270、若桜ゆはら温泉「ふれあいの湯」(400円)
1271、霞の里温泉「レーク大樹」(1泊朝食6620円)
1272、大栄温泉「大栄温泉公衆浴場」(450円)
1273、中山温泉「ゆーゆ倶楽部naspal」(420円)
1274、大山伽羅温泉「大山レークホテル」(840円)
1275、日吉津温泉「うなばら荘」(400円)
1276、夢みなと温泉「みなと温泉館」(450円・割引)
1277、岸本温泉「ゆうあいパル」(300円)

(島根)
1278、鷺の湯温泉「夢ランドしらさぎ」(400円)
1279、広瀬温泉「月山の湯」(400円)
1280、比田温泉「湯田山荘」(250円)
1281、亀嵩温泉「玉峰山荘」(500円)
1282、斐乃上温泉「斐乃上荘」(1泊朝食6620円)

(広島)
     比婆山温泉(入浴のみ不可)
     高尾の湯温泉(定休日で入れず)
1283、宮の奥温泉「宮の奥の湯」(315円)

(島根)
1284、出雲湯村温泉「清嵐荘」(300円)
1285、出雲平成温泉「出雲保養センター」(500円)
1286、出雲湖陵温泉「クアハウス湖陵」(600円)
1287、多伎いちじく温泉「いちじく温泉」(400円)
     半蔵温泉(入浴のみ不可)
     小田温泉(入浴のみ不可)
1288、波多温泉「満寿の湯」(300円)
1289、出雲須佐温泉「ゆかり館」(500円)
1290、立久恵峡温泉「御所覧場」(1泊朝食6450円)
1291、みとや深谷温泉「ふかたに荘」(300円)
1292、頓原温泉「リフレッシュセンター」(300円)
1293、加田の湯温泉「加田の湯」(400円)
1294、潮温泉「大和荘」(315円)
1295、千原温泉「千原温泉浴場」(500円)
1296、ユートピアおおち温泉「ゴールデンユートピアおおち」(400円)
1297、湯抱温泉「湯抱荘」(400円)
1298、池田温泉「池田ラジウム鉱泉」(500円)
     小屋原温泉(入れず)
1299、三瓶温泉「さんべ荘」(500円)
     三瓶温泉「さひめ野」(1泊2食11700円)
1300、湯谷温泉「弥山荘」(500円)
     断魚渓温泉(廃業湯)
1301、いわみ温泉「霧の湯」(600円)
1302、荒磯温泉「荒磯館」(600円)
1303、柿木温泉「はとの湯荘」(400円)
1304、木部谷温泉「松乃湯」(350円)
1305、津和野温泉「なごみの湯」(500円)

(山口)
1306、願成就温泉「遊湯館」(500円)
1307、柚木慈生温泉「柚木慈生温泉」(500円)
1308、石船温泉「憩の家」(600円)
1309、湯田温泉「富士の家」(1泊朝食6600円)

テーマ : 温泉
ジャンル : 旅行


「鈍行乗り継ぎ湯けむり紀行」(14)

(月刊『旅』1995年2月号 所収)

温泉で早起きの眠気を吹き飛ばす
 東北本線(宇都宮線)の一番列車、上野発5時09分の黒磯行きに乗り込む。7両編成の電車はガラガラ。これから青森へ、さらには北海道に渡り、日本最北の稚内まで行くのだ……と思うと、胸の高鳴りを抑えることができない。

 列車が栃木県に入り、小山を過ぎると、夜が明けてくる。西の空には、十六夜のまん丸な大きな月が残っている。あたりは霜でまっ白。駅に止まり、ドアが開くたびに、ドドーッと冷気が流れ込んでくる。車内にいながら、ブルブルッと身震いしてしまうほどだ。

 7時45分、黒磯着。東野交通のバスに乗り換え、那須湯本へ。

 何度もくりかえしていっていることだが、今回の温泉めぐりは“鈍行列車プラス徒歩”の旅の仕方をつづけている。だがどうしても那須岳周辺の那須温泉郷は、“はしご湯”してまわりたかったので、「黒磯―那須湯本」間の往復はバスに乗ることにした。

 黒磯は寒さこそ厳しかったが、雪はなかった。ところがバスで35分、終点の那須湯本温泉に着くと、うっすらと雪が積もっている。このあたりは標高900メートル近いので下界とは気温が違う。

 那須温泉郷の中心となる那須湯本温泉では、雪の参道をサクサクと踏みしめて、温泉神社に参拝する。境内には五葉松の名木。温泉地に温泉神社もしくは温泉寺はつきものだが、この那須湯本温泉の温泉神社は歴史が古い。平安中期の延喜式の、関東では数少ない式内社になっている。

 温泉神社で旅の安全を祈願したあと、那須温泉郷の第1湯目、那須湯本温泉の共同浴場「鹿の湯」(入浴料300円)に入る。

「鹿の湯」は、鳴子温泉(宮城県)の「滝の湯」や飯坂温泉(福島県)の「鯖湖湯」などと並ぶ東日本屈指の名共同浴場といっていい。源泉は78度の高温の湯。浴室内にはモウモウと湯けむりがたちこめている。かぶり湯で熱い湯に慣れ、湯温の違う木の湯船に、湯温の低い方から高い方へと順々に入っていく。

 湯につかりながら、思わず、「フーッ」と、大きく息をはく。気持ちいい! 
「極楽だ、天国だー!」
 と、叫びたくなってしまう。

 今朝は一番列車に乗るために、4時、起床。早起きの眠気も、上野から列車、バスを乗り継いでここまでやってきた疲れも、一瞬にして吹き飛んでしまう。

「日本人にはやっぱり温泉だよ」
 と、一人でウンウンと、うなずいてしまう。
 と、同時に、こういうときは自分の中にも脈々と流れている“温泉民族・日本人”としての血を強く感じてしまうのだ。

 湯の中では地元の黒磯から奥さんと一緒に車でやってきたという中年の人と話したが、「鹿の湯にはよく来るんですよ。最高の湯ですからね。こういう湯に入っていると人間、長生きできますよ」
 といっていた。


那須高原で南国気分を満喫
 那須湯本温泉からは、弁天温泉→大丸温泉→旭温泉→北温泉→八幡温泉と、那須岳中腹の那須温泉郷を歩いて“はしご湯”する。天気は絶好の“徒歩日和”。抜けるような青空が広がっている。芭蕉の「奥の細道」にも登場する殺生石の遊歩道を歩いたあと、雪道を歩きはじめ、那須高原有料道路を登っていく。有料道路とはいっても、もちろん、徒歩は無料だ。

 標高1049メートル地点の展望台からの眺めが絶景!
 足もとに殺生石、那須湯本の温泉街を見下ろし、茫々と広がる那須野原を一望し、その向こうに連なる八溝山地のなだらかな山並みを眺める。

 体の向きを変え、後ろを振り向くと、雪化粧した那須連峰が、ものすごい迫力で目の中に飛び込んでくる。右手に朝日岳(1903m)、正面に那須連峰の主峰、茶臼岳(1917m)。茶臼岳からは、雲と見間違うかのような噴煙が噴き上がっている。

 これが“歩き”のよさなのだが、風景を体感できるとでもいうのか、展望台からの眺望がぼくの目の底に、まるでプリントされたかのようにしっかりと焼きついて離れない。

 茶臼岳に向かって登りつづけ、那須温泉郷の第2湯目、弁天温泉に到着。まずは白滝弁天に参拝する。参道の入口には、「従是右 弁天湯」と彫り刻まれた、江戸後期・天保年間の石の道標が立っている。

 膝までズボズボともぐる雪道を下り、白滝弁天に参拝。お堂の裏の岩壁には、長さ2、3メートルの氷柱が何本も垂れさがっている。その光景は、那須の冬の厳しさを見せつけていた。

 この白滝弁天に隣あった「弁天温泉旅館」(入浴料1000円)の湯に入った。湯量の豊富な温泉で、温泉プールや湯滝(打たせ湯)がある。

 茶臼岳を目の前にする第3湯目の大丸温泉では、「湯泉望」(入浴料750円)の内風呂と露天風呂に入った。ここでは「大丸温泉旅館」の川をせき止めた露天風呂がよく知られている。

 那須湯本温泉から大丸温泉までは登り坂だったが、大丸温泉を過ぎると下り坂になり、楽に歩けるようになる。

 那須温泉郷の温泉めぐり後半戦の開始だ。旭温泉、北温泉、八幡温泉の3湯は、どこも一軒宿の温泉。まず、旭温泉に行ったが、現在は休業中で入れない。つづいて、北温泉。自動車道の行き止まり地点から500メートルほど下ったところに、「北温泉旅館」(入浴料700円)がある。

 那須温泉郷の中では、三斗小屋温泉と双璧を成す秘湯。昔ながらの温泉宿の建物が、そのまま残っている。混浴の浴室に掛かる大きな天狗の面が印象的だ。湯量が豊富で、ザーザー音をたてて、湯が木の湯船から流れ出ている。内湯につかったあと、打たせ湯に打たれ、山々に積もった雪を眺めながら温泉プールで泳いだ。

 最後は、那須温泉郷随一の眺望を誇る八幡温泉。近代的な温泉ホテルは、その名も「一望閣」(入浴料1000円)。目の前の高原はツツジの大群落地。花の季節はそれはすばらしいことだろう。那須野原の向こうに八溝山地、その左手には阿武隈山地の山並みが延び、福島県白河の白っぽい町並みがはっきりと見えた。

 こうして6時間半かけて、那須温泉郷をめぐったが、今回立ち寄った6湯のほかに、新那須温泉、高雄温泉、板室温泉、三斗小屋温泉を加え、“那須十湯”といわれている。

 全湯制覇こそできなかったが、那須温泉郷の温泉めぐりをし、那須岳中腹から那須を一望したことによって、古代日本では下野国から独立して一国を成していた“那須”が、グッと身近な存在に感じられるようになった。
 自分の足で歩きまわったところというのは、なんともいとおしくなる。

 名残おしい那須温泉郷をあとにし、15時05分発のバスで黒磯へ。16時22分発の東北本線の鈍行・仙台行きに乗る。3両編成の電車。車窓から眺める那須連峰は、夕日を浴びてまっ赤に染まっていた。


岳温泉からの地獄の雪道歩き
 栃木県から福島県に入る。福島県といえば、日本でも有数の“温泉天国”だが、それら温泉は奥羽山脈の周辺に集中し、東北本線沿線の温泉というと、福島駅から福島交通飯坂線の電車で行く飯坂温泉ぐらいしかない。

「福島県内の温泉に1湯も入らないでいくなんて‥‥、そんなことは絶対にできない」
 ということで、東北本線の二本松駅からはかなりの距離があるが、一晩、岳温泉で泊まることにした。

 白河、郡山と通り、18時06分、二本松着。福島交通のバスで、岳温泉へ。その間、10キロ。行きはまたしてもバスに乗ってしまったが、帰りは歩くのだ。黒磯駅から電話を入れた民営国民宿舎「寿泉荘」に行くと、夜の7時を過ぎていたのに、夕食を用意してぼくを待ってくれていた。ありがたいことだった。

 翌朝も、4時起床。まっ先に、朝風呂(夜中風呂?)に入る。何度もいっていることだが、ぼくはこの、寝起きの朝風呂が大好きなのだ。ほんとうに気持ちいい。

 眠っている間に体に溜まった毒素が、全部、スーッと抜けていくような気持ちのよさ。で、温泉宿でも、24時間いつでも湯に入れる宿が一番いい。岳温泉「寿泉荘」の湯を独り占めにし、たっぷりと時間をかけて朝風呂を楽しみ、いよいよ地獄の雪道への挑戦がはじまった。

 なぜ地獄かといえば、一晩中、雪が降りつづき、前夜とは比べものにならないくらいに雪が積もっていたからだ。そんな雪道をスニーカーで歩くのだから、たまったものではない。おまけに、耳がちぎれそうになるほどの寒さ。強烈な寒さだ。

 奥羽山脈から吹き下ろす寒風のせいで、地吹雪の様相。ひとつ救いなのは、ずっと、下り坂がつづくこと。山麓の集落まで下り、雪がやんだときには、
「助かったー!」
 と、冗談抜きで、思わず叫んでしまったほどだ。

 道路沿いの自販機でHOTのカンコーヒーを買い、飲む前に両手でカンコーヒーを握りしめ、すっかりかじかんだ手を温める。紫色になった指先は、血の気が戻ると、ジンジン痛む。もう、凍傷寸前なのだ。

 二本松駅までの10キロの雪道を1時間45分で歩き、7時05分発の仙台行き列車に乗る。暖房のきいた車内に入ったときは、また天国に戻ったような気分。天国→地獄→天国と、めまぐるしいほどの変化。これが旅のおもしろさなというものだ。

 福島県から、宮城県に入る。東北本線の宮城県内の温泉めぐりの開始だ。

 第1湯目は白石駅で下車する白石温泉。蔵王の山々を間近にする白石には、鎌先温泉と小原温泉という名湯があるが、駅からはちょっと距離があり、また、2つの温泉の方向が違うので、この2湯を断念し、徒歩30分の白石温泉「ホテル本陣」(入浴料500円)の湯に入った。

 第2湯目は船岡駅で下車する神次郎温泉。「大元荘」(入浴料300円)の湯に入る。白石温泉よりも遠い、駅から徒歩45分ぐらいの温泉なので、帰り道は足早に歩いた。

 第3湯目は、仙台を通り過ぎ、13時22分着の鹿島台駅で下車する鹿島台温泉(みちのく温泉)。地図を見て、だいたい3キロぐらいだろうと当たりをつけて鹿島台駅を降りたのだが、これが大外れ……。倍の6キロぐらいはあるという。

 鹿島台発15時39分の一関行きに乗らないと、このあとの予定がたたなくなってしまうので、制限時間129分で鹿島台温泉にトライすることにした。歩いていたら時間切れになってしまうので、大汗をかいて田んぼの中につづく一本道を走る。

 高台の上にある国民年金健康保養センター「みちのく路」(入浴料670円)に着くと、すぐさま、展望大浴場に駆け上がっていく。かなり塩分の強い湯に早業でドボンとつかり、帰り道はまた汗ダクになって走る。
 滑り込みセーフといった感じで、15時39分の列車に間に合った!


“みちのく美人”との出会い
 東北本線も、宮城県から岩手県に入ると、
「あー、北に来たなあ」
 という実感がする。

 一関で乗り換え、17時53分、花巻着。花巻駅前から、岩手県交通バスで、花巻南温泉峡最奥の新鉛温泉まで行く。その間は約20キロ。ここも行きはバスだが、帰りは花巻南温泉峡の温泉群を花巻へと歩きながら、“はしご湯”するつもりなのだ。バスの終点、新鉛温泉に着いたのは夜の7時過ぎだった。

 新鉛温泉では、一軒宿の「愛隣館」に泊まった。近代的な高層温泉ホテル。部屋に入ると、すぐに浴衣に着替え、露天風呂つきの大浴場の湯に入る。源泉の湯は60度以上の高温だ。

 湯から上がると、若い女性が、夕餉の膳を部屋まで運んでくれた。キラキラと輝く黒い瞳が魅力的な“みちのく美人”。着物姿の彼女の胸もとには、“田面木”と書かれたネームカード。ぼくのこのあたりのチェックは、じつにすばやいのだ。
「珍しいお名前ですねー」
「これで“たものき”といいます」
「ぼくの名前の“賀曽利”も珍しいけれど、これで“かそり”って読むんですよ」

 珍しい名前同士ということで、遠野出身の田面木千春さんとはすっかり気が合った。
「明日は、ここ新鉛温泉から、花巻まで歩いていくつもりなんですよ」
 というと、千春さんは、驚いたような顔をする。

「私も遠足で遠野を40キロ、歩いたことがあります。早池峰山(遠野の北にそびえる標高1914mの、北上山地の最高峰)にも登りました。でも……、最近は車に乗ってばかりで……、あんまり歩きません」

「遠野物語」で有名な遠野は、ぼくの好きな町のひとつ。それだけに、千春さんの話をきいていると、遠野盆地とそれを取り巻く北上山地の山々がまぶたに浮かんでくるようで、遠野の話でひとしきり盛り上がった。

 翌朝の朝食も、千春さんが給仕をしてくれた。彼女のおかげで、食事をよりおいしく食べられただけではなく、新鉛温泉の印象がよりよいものになった。
 ありがとう“みちのく美人”の千春さん! 


花巻南温泉峡を歩く
 午前8時に、新鉛温泉を出発。気温は氷点下5度。パリンパリンに凍りついた雪道を歩く。青空が顔をのぞかせているのがありがたい。これから、豊沢川沿いの花巻南温泉峡の温泉、ひとつずつに立ち寄りながら、花巻までの20キロを歩きとおすのだ。

 新鉛温泉にひきつづいての、花巻南温泉峡の第2湯目は、鉛温泉。一軒宿「藤三旅館」(入浴料300円)の湯に入る。

 鉛温泉は新鉛温泉とは対照的な、昔ながらの温泉宿で、旅館部と湯治客用の自炊部に分かれている。自炊部の中には、食料品などを売っている店がある。いかにも“東北の湯治宿”といった風情で、人々の肌の温もりを感じさせてくれるような温泉宿。ここのだ円形をした湯船がユニーク。底が深い。湯船の中にしゃがみこむのではなく、立ったまま湯につかるようになっている。

 ところで今回、JTB出版事業局の“温泉博士”安藤典子さんからお借りした、1冊の貴重な本を持ち歩いた。昭和2年に、鉄道省より発行された『温泉案内』。それはまさに“鈍行乗り継ぎ”で入るのにはぴったりの温泉ガイドで、日本全国の温泉が、鉄道の路線別に紹介されている。各温泉地ごとの温泉旅館名・部屋数・総畳敷・宿泊料・自炊制度がふれられている。

 すごいなと思うのは、昭和初期という時代も、現在と同じように、いや、もしかしたらそれ以上に、大勢の人たちが温泉めぐりをしていたということだ。それが、この『温泉案内』を読むと、よくわかる。

 現在の温泉と、昭和初期の温泉を比較してみたくて、この本を持ち歩いたのだが、“鉛温泉”の項を見ると、当時は「藤三旅館」のほかに、「藤徳旅館」、「藤友旅館」、「安浄寺旅館」と、全部で4軒の温泉旅館があったことがわかる。宿泊料は2円から3円とある。現在の「藤三旅館」の宿泊料は8000円から1万2000円。これが鉛温泉をめぐる70年間の変化である。

 花巻南温泉峡の第3湯目は、高倉山温泉。一軒宿「豊楽園」(入浴料300円)の湯に入る。男湯と女湯に分かれているが、簡単に女湯をのぞけるようになっているのがなんともいいではないか。

 このあたりが東北の温泉の特徴で、男湯と女湯へのこだわりが薄い。それだけ東北人はおおらかなのだ。だからこそ、東北には今でも、混浴の温泉が多いのだろう。窓をあけると、目の前を豊沢川が流れている。源泉45度の単純泉にはぬめりがあり、肌に薄い膜が張るような感じの湯だった。

 第4湯目の山ノ神温泉(入浴料400円)も一軒宿の温泉で、浴室内には湯けむりがモウモウとたちこめていた。湯量の豊富な温泉だ。

 第5湯目は、大沢温泉。旅館部と自炊部に分かれている「山水閣」(入浴料400円)の内風呂と、露天風呂に入る。ここの露天風呂はいい! 

 湯につかりながら、雪景色を眺め、豊沢川の渓流を眺める。対岸には、別館の「菊水館」。この大沢温泉の露天風呂は、カソリ、おすすめの湯。なぜかというと、混浴で、外来客の入浴時間が午前7時から午後8時半と長く、ぼくは今までに何度かこの湯ではいい思いをしているのだ。女性、とくに若い女性と一緒になるチャンスはきわめて大きい。

 新鉛温泉から大沢温泉までが、花巻南温泉峡の温泉めぐりの前半戦。大沢温泉・自炊部の売店でパンを買い、歩きながら食べて腹ごしらえをし、渡り温泉に行く。だが、残念……。一軒宿の高級リゾート温泉ホテルの、入浴のみは不可。全8湯の花巻南温泉峡のうち、渡り温泉だけには入れなかった。

 第6湯目の志戸平温泉では、公衆温泉浴場の「ゆうらく湯」(入浴料180円)の湯に入る。花巻南温泉峡には、ほかに共同浴場のたぐいがないこともあって、「ゆうらく湯」は、昼過ぎという時間にもかかわらず、けっこう混んでいた。

 最後の、第7湯目の松倉温泉では、一軒宿「水松園」(入浴料350円)の、壁画がすばらしい大浴場に入った。松倉温泉の湯から上がると、湯疲れと歩き疲れの疲労感が体にきていたが、それ以上に、「やったネー!」といった充実感のほうが大きかった。

 松倉温泉からは、ただひたすらに、花巻駅を目指して歩きつづける。
 花巻の市街地を目前にして、東北自動車道の“花巻南IC”近くを通る。そのときぼくは、「あー、そうだったのか!」と、思わず手を打った。謎が解けたのだ。花巻南温泉峡は、以前は花巻温泉や台温泉とともに、花巻温泉郷といっていた。それがなぜ“花巻南”になったのか、よくわからなかった。そのあたりは、花巻駅からみれば、南ではなく北、ほんとうは“花巻北温泉峡”なのである。

 花巻南温泉峡の名称は、東北道の“花巻南IC”の完成以降のことであろう。“花巻“だと、それよりひとつ北のインターチェンジ(花巻IC)で、花巻温泉や台温泉に通じている。“花巻南温泉峡”は、日本の交通の主役が、鉄道から高速道に変わったことを明確に示しているように思えてならなかった。

 花巻駅到着は午後3時半。新鉛温泉から7湯の温泉に入りながら、7時間半かけて歩いたことになる。15時52分発の盛岡行きに乗り、盛岡で青森行きに乗り換え、18時08分に金田一温泉駅着。駅から徒歩10分の、金田一温泉「ホテル金田一」に泊まった。


東北本線の終着駅、青森に到着
 東北本線の最後の行程は、青森県内の温泉めぐり。7時00分発の一番列車で金田一温泉駅を出発し、岩手県から青森県に入る。青森路の第1湯目は、三戸で下車する古町温泉(入浴料250円)。駅から徒歩30分の一軒宿の温泉だ。時間がないなかでの入浴なので、肌で湯を感じるやいなや、すぐに上がって着替え、帰り道は駅まで小走りに走るのだった。

 第2湯目は八戸を通り過ぎ、三沢で下車する古牧温泉。駅前温泉の「古牧温泉元湯」は、駅から徒歩2分という近さと、300円の入浴料、午前5時から午後11時という営業時間の長さ、さらには気分よく入れる大浴場……と、いくつもの条件を兼ね備えた絶好の立ち寄り湯になっている。

 時間がなくて残念ながらまわれなかったが、ここには“古牧温泉祭魚洞公園”と称する一大温泉観光公園がある。十和田湖をかたどった大浴場や温泉プール、日本庭園、小川原湖民俗博物館、南部曲がり屋などの盛りだくさんの施設が公園の中に点在しているという。また、次の機会だ。そのときには、ゆっくりと“温泉公園”を見てまわろう。

 三沢駅からはもう1湯、駅から徒歩50分、桂温泉の公衆温泉浴場(入浴料250円)の湯にも入り、それを第3湯目にした。広々とした明るい大温泉浴場だ。

 第4湯目は、上北町駅で下車する上北町温泉。駅から徒歩3分の公衆温泉浴場「玉勝温泉」(入浴料250円)の湯に入る。

 東北本線も八戸を過ぎると鈍行列車の本数は極端に少なくなってしまうので、つぎの列車まで、時間はたっぷりとある。サウナにも入り、汗をタラタラ流した。1時間以上も長湯したので、すっかりのぼせてしまい、立ちくらみがするほどだった。

 それでもまだ、次の列車まではかなりの時間がある。そこで、寒風に吹きさらされながら小川原湖までプラプラ歩き、湖畔に立ち、淡水魚漁の盛んな湖を眺めるのだった。

 青森路の温泉めぐりの最後は、浅虫温泉駅で下車する浅虫温泉。那須湯本温泉から数えて22湯目の温泉になる。駅から徒歩5分の共同浴場「はだか湯」(入浴料200円)に入る。湯から上がると、小公園になっている源泉を見る。そこには浅虫温泉の語源「麻蒸湯」と書かれ、湯殿権現がまつられていた。“SINCE 1190”とも書かれている。浅虫温泉は、平安時代の末期、円光大師の諸国巡錫の際に発見されたといい伝えられているほど歴史の古い温泉だ。

 青森到着は、18時16分。青森駅というのは、ぼくにとっては一種特別な場所。バイクで「東京→青森」の一気走り(午前0時に東京・日本橋を出発し、寝ないで走りつづけるのだ)を何度かしたことがあるが、そのゴールは青森駅と決まっている。そんなこともあって、青森駅に降り立つと、ジーンとするような胸のしびれを感じてしまう。

 駅近くの郷土料理店「西むら」に入り、まずは青森到着を祝って、一人、ビールで乾杯する。そのあと、イカ刺しとホッケの開きを肴に、津軽の地酒を飲んだ。さらにジャッパ汁(タラ汁)つきのイクラ丼を食べ、北国を自分の舌で実感する。そうすることによって、本州の終着駅に着いたうれしさと、ちょっぴりの寂しさと、これから向かっていく北海道への期待感をより強く感じとるのだった。

テーマ : 鉄道の旅
ジャンル : 旅行


300日3000湯めぐり・データ(7)

「四国編・高松→東京」(2007年3月30日~4月8日)

(岡山)
1116、大福温泉「岡山健康ランド」(3150円)※仮眠

(兵庫)
1117、うずしお温泉「ゆとりっく」(600円)
1118、三原温泉「さんゆ~館」(600円)
1119、筒井潮崎温泉「ゆーぷる」(600円)
1120、南淡温泉「休暇村南淡路」(800円)
1121、洲本温泉「夢泉景」(1500円)※特例で入る
1122、五色温泉「ゆ~ゆ~ファイブ」(600円)
1123、一宮温泉「パルシェ香りの湯」(600円)
1124、小倉山温泉「かんぽの宿 淡路島」(500円)
1125、岩屋温泉「松帆の郷」(700円)

(和歌山)
1126、川辺温泉「きさくの湯」(1泊朝食5505円)
1127、龍神温泉「龍神温泉元湯」(600円)
1128、美山温泉「美山療養温泉館」(525円)
1129、中津温泉「あやめの湯」(500円)
1130、紀伊日高温泉「みちしおの湯」(500円)
1131、滝原温泉「ほたるの湯」(500円)
1132、二の丸温泉「二の丸温泉」(500円)
1133、本町温泉「夢想乃湯」(390円)
1134、龍門山温泉「龍門山温泉」(1000円)
1135、野半の里温泉「蔵乃湯」(800円)
1136、美嶋温泉「美嶋荘」(1泊朝食6350円)
1137、雲之上温泉「開運荘」(525円)
1138、野迫川温泉「ふるさと山の交流館」(600円)
1139、高野槙の湯温泉「槙之湯」(800円)
     花園温泉(休業中)
1140、清水温泉「しみず温泉健康館」(600円)
1141、二川温泉「二川温泉」(600円)
1142、かなや明恵峡温泉「かなや明恵峡温泉」(500円)
1143、美里温泉「かじか荘」(600円)
1144、藤の森不動温泉「だるま湯」(650円)

(奈良)
1145、かもきみの湯温泉「かもきみの湯」(500円)
     「リバーサイドホテル」(1泊朝食7655円)
     大淀温泉(入れず)
     下市温泉(定休日で入れず)
1146、金剛乃湯温泉「金剛乃湯」(700円)
1147、西吉野温泉「きすみ館」(600円)
     天辻大師温泉(休業中)
     「みずはの湯」(天然温泉ではないのでパス)
1148、天の川温泉「天の川温泉センター」(600円)
1149、洞川温泉「洞川温泉センター」(600円)
1150、大塔温泉「夢乃湯」(600円)
1151、温泉地温泉「泉湯」(400円)
1152、十津川温泉「庵の湯」(400円)
1153、下湯温泉「山水」(500円)
     出谷温泉(入れず)
     上湯温泉(入れず)

(和歌山)
1154、熊野川温泉「さつき」(450円)
1155、雲取温泉「高田グリーンランド」(素泊まり3750円)
1156、湯の峰温泉「湯の峰温泉公衆浴場」(250円)
1157、渡瀬温泉「わたらせ温泉大露天風呂」(700円)
1158、川湯温泉「川湯温泉公衆温泉浴場」(250円)
1159、奥熊野温泉「女神の湯」(650円)

(三重)
1160、入鹿温泉「瀞流荘」(600円)
1161、湯ノ口温泉「湯ノ口温泉」(300円)

(和歌山)
1162、おくとろ温泉「おくとろ温泉きたやま」(500円)

(奈良)
1163、下北山温泉「きなりの湯」(500円)

(和歌山)
1164、ゆの里温泉「ゆの里」(1泊朝食6800円)

(奈良)
1165、下市温泉「明水館」(500円)
     大淀温泉(定休日で入れず)
1166、吉野温泉「吉野温泉元湯」(700円)
     津風呂湖温泉(定休日で入れず)
     湯盛温泉(定休日で入れず)
1167、入之波温泉「五色湯」(700円)
1168、やはた温泉「やはた温泉」(500円)
     東吉野温泉(定休日で入れず)
1169、たかすみ温泉「たかすみ温泉」(500円)

(三重)
1170、奥香肌峡温泉「香肌の湯」(700円)
1171、奥伊勢宮川温泉「奥伊勢フォレストピア」(600円)
     阿曽温泉(定休日で入れず)
     玉城温泉(定休日で入れず)
1172、鳥羽小浜温泉「浜離宮」(1000円)
1173、志摩スペイン村温泉「ひまわりの湯」(1000円)

(静岡)
1174、天神温泉「天神の湯」(3500円)※仮眠
1175、瀬戸谷温泉「ゆらく」(500円)
     志太温泉(入れず)
1176、静岡温泉「美肌の湯」(800円)
1177、赤石温泉「白樺荘」(無料湯)
1178、口坂本温泉(280円)
     油野温泉(廃業湯)
     油山温泉(入れず)
     わらびの温泉(入れず)
     韮山温泉(入れず)
1179、伊豆長岡温泉「光林」(500円)
1180、修善寺温泉「湯の郷村」(700円)
1181、青羽根温泉「湯の国会館」(400円)
1182、湯ヶ島温泉「三吉」(1泊朝食9000円)
1183、船原温泉「湯治場ほたる」(700円)※1時間
1184、持越温泉「持越温泉」(700円)
1185、吉奈温泉「東府屋」(1000円)
1186、月ヶ瀬温泉「月ヶ瀬」(1000円)
     嵯峨沢温泉(入れず)
1187、大滝温泉「天城荘」(1000円)
1188、湯ヶ野温泉「かわづ」(500円)
1189、峰温泉「踊り子温泉会館」(1000円)
1190、谷津温泉「薬師の湯」(800円)
1191、河津浜温泉「海浜露天風呂」(混浴の無料湯)
1192、今井浜温泉「サンシップ今井浜」(1000円)
1193、韮山温泉「めおとの湯」(500円)
1194、大仁温泉「大仁ホテル」(1泊朝食7150円)
     「ゆらら」(天然温泉ではないようなのでパス)
1195、平山温泉「龍泉荘」(500円)
     北沼上温泉(廃業湯)
     興津川温泉(入れず)
     八木温泉(入れず)
1196、瓜島温泉「翠紅苑」(500円)
1197、新稲子川温泉「ユー・トリオ」(1000円)
1198、飛図温泉「飛図温泉」(600円)
1199、朝霧高原温泉「グリーンパーク」(800円)
     「富士山天母の湯」(天然温泉ではないのでパス)
     「大野路温泉」(800円)(天然温泉ではない)
1200、裾野温泉「ヘルシーパーク裾野」(500円)
1201、御胎内温泉「御胎内温泉」(1000円)
1202、あしがら温泉「あしがら温泉」(500円)

(神奈川)
     「さくらの湯」(400円)(天然温泉ではない)
1203、湘南温泉「湯乃蔵ガーデン」(850円)
1204、茅ヶ崎温泉「湯快爽快」(1100円)
     ※休日料金・特例で入る
1205、阿部倉温泉「湯の沢旅館」(1050円)※特例で入る
1206、佐野温泉「のぼり雲」(1000円)
1207、野比温泉「野比温泉」(700円)
1208、三浦マホロバ温泉「マホロバマインズ三浦」(1000円)
1209、田谷温泉「湯快爽快」(750円)
1210、泉温泉「葛の湯」(430円)

テーマ : 温泉
ジャンル : 旅行


伝説の「賀曽利隆オンライン」(15)

(2000年12月10日)

 早いもので、もう師走。そこで昨年につづいて2000年の“カソリの10大ニュース”を選んでみました。みなさんもぜひとも各自の10大ニュースを選んでみて下さい。

第1位 「韓国一周」3150キロ(9月1日~9月21日)
バイクを持ち込んでの、外国人による韓国一周は史上初! 東京→下関と走り釜山を拠点に韓国一周。帰路の下関→東京と合わせ、全行程5635キロ。

第2位 「サハリン縦断」1463キロ(8月1日~8月26日)
東京→青森→稚内と走り、宗谷海峡を越えてサハリンへ。最北の地まで行く。帰路の稚内→青森→東京と合わせ、全行程8477キロ。

第3位 「東北・林道激走」(6月~10月)
6月から10月にかけて全部で12回、東北の林道を激走! 全行程14310キロ。96本の林道を走り、ダートの合計は802・9キロになった。

第4位 「韓国へのバイク持ち込み解禁」への署名運動開始(11月10日より)
今回の「韓国一周」は韓国政府からの特別な許可ということで実現したが、現状では韓国にバイクを持ち込むのはほとんど不可能なこと。法律で禁止されているからだ。
そこで11月10日よりその解禁に向けての署名運動を開始。来年の2月28日までに集まった署名を持ってソウルに行き、金大中大統領に手渡す予定。

第5位 『世界を駆けるゾ!40代編下巻』(フィールド出版)発行(11月21日)これで『20代編』から『40代編』までの3部作が完結した。

第6位 『日本一周バイク旅4万キロ上下巻』(昭文社)発行(3月15日)
昨年の「日本一周4万キロ」が本になった!

第7位 『旅の鉄人カソリの激走30年』(JTB)発行(7月1日)
この30余年で月刊『旅』に書かせてもらった中から16編を選んでまとめた。

第8位 『世界を駆けるゾ!40代編上巻』(フィールド出版)発行(6月20日)
我が40代前半の旅は「サハラ往復縦断」にはじまり「50㏄バイク世界一周」そして「東京→サハリン」「インドシナ一周」へとつづく。

第9位 『世界を駆けるゾ!30代編』(フィールド出版)発行(1月20日)
我が30代の旅のメインは「南米一周4万3000キロ」だ。

第10位 「第2回たき火ふぉ~らむ」開催(11月25日~26日)


◇◇◇
 今年の12月は特別な意味があって、20世紀の最後になるということ。そこで20世紀における“カソリの10大ニュース”も選んでみました。

第1位 「アフリカ大陸一周」(1968年~69年・20歳~22歳)
我が旅人生の原点。

第2位 「世界一周」(1971年~72年・23歳~25歳)
その途中で日本人初のバイクでのサハラ砂漠縦断。“サハラの狼”の誕生!

第3位 「南米一周」(1984年~85年・37歳)
これで6大陸完全制覇!

第4位 「インドシナ一周」(1992年~93年・44歳~45歳)
「タイ→ラオス→ベトナム→カンボジア→タイ」の「インドシナ一周」は世界初の快挙だ!

第5位 「韓国一周」(2000年・53歳)
ツーリングライダーにとっては鎖国同然の隣国・韓国についに風穴をあけた!

第6位 「サハラ砂漠往復縦断」(1987年~88年・40歳)
2ルートでのサハラ砂漠縦断でもって40歳突入のぶ厚い壁を突破!

第7位 「50㏄日本一周&世界一周」(1989年~1990年・41歳~43歳)
「日本一周」した50㏄バイク、スズキ・ハスラー50で「世界一周」。この発想がすばらしい(自画自賛)!

第8位 「オーストラリア二周」(1996年・48歳~49歳)
体力勝負で7万2000キロを走る。一周ではなく二周だ。

第9位 「日本一周4万キロ」(1999年・51歳~52歳)
それまでの3度の「日本一周」のなかでは最長の距離を走る。

第10位 「子連れサハラ縦断」(1977年~78年・29歳~30歳)
妻と生後10ヵ月の赤ん坊を連れてのサハラ砂漠縦断。このときは列車・バス。

 以上が“カソリの20世紀10大ニュース”。まもなくやってくる21世紀をしっかりと展望するためにも、選んでみました。みなさんもぜひとも、各自の“20世紀10大ニュース”を選んでみて下さい。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


「鈍行乗り継ぎ湯けむり紀行」(13)

(『月刊旅』1995年1月号 所収)


新潟平野から越後山脈へ
 前回では東京・上野駅を出発し、高崎線→上越線→信越本線と乗り継いで新潟までやってきたが、今回は、信越本線→磐越西線→磐越東線→常磐線というルートで東京へと戻っていく。その途中では、福島県内の只見線に乗ろうと思うのだ。

 新潟駅近くのビジネスホテル「新潟パークホテル」で一晩泊まり、翌朝、新潟駅へ。

 午前5時、4番ホームに信越本線上りの鈍行一番列車、長岡行きが入線。その2両編成の電車に乗り込む。車内はガラガラ。眠い目をこすりながら、眠気ざましのカンコーヒーを飲む。

 この一番列車というのは、くりかえしていうが、ほんとうにいいものだ。ふだんは寝床のなかでヌクヌクしている時間に旅立つのだから、1日を最大限に使えるし、1日という時間がたまらなくいとおしくなってくる。ずっしりと重い充実感を感じることができるのが、一番列車なのである。

 5時28分、長岡行きが発車。まだ暗い新潟平野を走る。やがて夜が明けてくる。東の空がまっ赤に燃えている。5時45分、新津着。そのころには、すっかり夜が明ける。新津は鉄路の十字路。ぼくがこれから乗る本州横断の磐越西線(郡山→新津)の終着駅であり、日本海縦貫の羽越本線(新津→秋田)の起点駅になっている。

 新津発5時59分の磐越西線の一番列車、会津若松行きに乗る。2両編成の気動車。広々とした新潟平野の中をジーゼルのエンジン音を響かせて走る。さすがに日本有数の穀倉地帯だけあって、すでに稲の刈り取りの終わった水田が、見渡すかぎりつづいている。

 五泉を過ぎると山々が間近に迫り、山の端から朝日が昇る。馬下駅が、ちょうど平野と山地の境目になっている。このあたりが、鈍行列車の旅のよさ。沿線の地形が手にとるようによくわかる。そこを過ぎると、列車は水量豊かな阿賀野川に沿って、山中へと入っていく。平野から山地へと、車窓の風景は、鮮やかに変わる。それは、越後と会津を分ける越後山脈へとつづく山並みだ。


“湯元館”は立ち寄り湯の狙い目だ
 磐越西線が新潟平野から山中に入った最初の駅、咲花で下車。ここに咲花温泉がある。阿賀野川河畔の“駅前温泉”。全部で10軒あまりの温泉宿がある。残念ながら共同浴場はないので、温泉宿で入浴を頼むことにする。

 このようなとき、ぼくがまっ先に目をつけるのは、「湯元館」である。どの温泉地でも、「湯元館」は比較的、入浴させてもらいやすいし、それぞれの温泉地の歴史のしみついた宿が多いからだ。
 咲花温泉にも、やはり「湯元館」があった! 

 早朝の、朝食の準備で忙しい時間帯にもかかわらず、人のよさそうなおかみさんは、
「さ、どうぞ、どうぞ」
 と、笑顔でぼくを迎えてくれるのだ。
「うれしいよー!」
 と、内心、ガッツポーズをとりたくなるほど。

「湯元館」の入浴料は600円。ヒノキをふんだんに使った浴室に入ると、プーンと木の香が漂ってくる。同じくヒノキの木枠の湯船につかると、朝早く起きた疲れも、眠気もスーッと抜けていく。ガラス張りの浴室越しに、滔々と流れる阿賀野川を眺める。湯量の豊富な温泉で、硫化水素泉の湯がザーザーと音をたてて湯船からあふれ出ている。

 極楽気分で湯から上がり、駅へ。駅前には1軒、店がある。そこでカップラーメンを買い、湯をもらい、駅待合室で朝食にする。朝一番の湯に入ったあとの満ち足りた気分なので、それでも十分においしい朝食だった。

 磐越西線の第2湯目は、三川で下車する三川温泉。改札口を出ると、駅長さんに、「三川温泉までは、どのくらいの距離がありますかね」
 と聞いてみる。
「そうだな、4キロ弱といったところかな」
 という答え。

「あー、だめだ、次の列車までに行って帰ってくることができない……」
 と、三川温泉を諦めかけたときのことだ。
 待合室にいた婦人が、
「今、迎えの車が来ますが、よかったら乗っていきませんか」
 と声をかけてくれた。ここでは、“鈍行列車プラス徒歩”という旅の原則を曲げ、婦人の好意に甘え、すぐにやってきた車に乗せてもらった。

 三川温泉には、三川村営の立ち寄り湯「YOU&湯」があるが、10時オープンなので、3、4軒ある温泉旅館のうち、「力館」(入浴料500円)に行く。山裾の水田の中にある温泉宿。大浴場の大理石風呂の湯にさっと入る。帰り道は、3キロほどの道のりを急ぎ足で歩いた。

 磐越西線の第3湯目は、津川で下車する麒麟山温泉。
 阿賀野川の水運が盛んであった時代には、河港としておおいに栄えた津川だが、大正年間の鉄道の開通とともにその歴史にピリオドを打った。

 津川の町並みを歩いていると、山梨県の鰍沢の町並みがダブッて目に浮かんでくる。鰍沢もかつては富士川の水運の河港として繁栄を謳歌したが、鉄道の開通とともに河港は衰退していった。

 津川や鰍沢は、河川交通から鉄道へと移り変わっていった日本の交通史の変遷を見ることのできる町なのだ。

 津川の町並みを抜け出、阿賀野川左岸にそそりたつ岩峰、麒麟山の真下の麒麟山温泉まで歩いていく。ここには5軒の温泉宿がある。1軒1軒、聞いてまわったが、入浴のみは不可…。残念だ。

 気を取りなおし、津川の次の鹿瀬駅まで歩く。家々の庭先では、ダイズやアズキ、クリ、クルミなどを干している。収穫の秋を感じさせる光景だ。

 鹿瀬では10時42分発の会津若松行きに乗ったが、ほんとうは、鹿瀬駅から角神温泉まで歩いていきたかった。だが次の列車(12時13分発)にすると、会津若松での、極端に本数の少ない只見線への乗り継ぎができなくなってしまう…。

 悔しい思いで角神温泉を断念したわけだが、またこのあたりが、時刻表と地図をにらみながら旅をつづける“鈍行乗り継ぎ”のおもしろさ。たえず頭をひねらないと、できない旅の仕方なのである。


越後山脈をブチ破る会津の阿賀川
 磐越西線の3両編成の気動車は、鹿瀬駅を出ると、長いトンネルに入る。トンネルを抜け出ると、阿賀野川の峡谷に沿って走る。豊実駅を過ぎると、新潟県から福島県に入る。それとともに、阿賀野川は阿賀川と名前を変える。このあたりの地形はきわめて興味深いのだが、阿賀川が力まかせに越後山脈をブチ破った、という感じなのである。

 阿賀川はすごい川。どのようにすごいかというと、福島県の西半分を占める会津のすべての水はこの阿賀川となつて、新潟平野に流れ出ていく(猪苗代湖の水が安積疎水となって郡山盆地に流れていくように、一部例外はあるが)。
 会津はその全域が、阿賀川の水系なのである。

 会津は“峠の国”で、どこへ行くのにも峠を越えていくが、唯一、峠を越えないルートがこの地点。さらに、会津のみなさんへの失礼千万を省みないでいえば、この地点に高さ200メートルほどのダムをつくれば会津の大半が巨大湖の湖底に沈んでしまう。

 会津はこのように、よその世界とは隔てられた独立した小国家のようなところなので、長い年月にわたって独自の歴史と文化を育んできた。東京だと「3代つづけば江戸っ子だい」などといっているが、会津若松では3代ぐらいだと、まだ旅の者、よそ者で、5代つづいてはじめて会津人という話も聞いた。

 そんな峡谷の県境を越えて会津に入ると、家々の周囲には、キリの木が多く見られるようになる。会津は日本有数のキリの名産地。かつては桐下駄や桐箪笥に使われたキリの木だが、今では需要が激減し、ほったらかしにされているキリ林が目につく。

 列車は広々とした会津盆地に入り、車窓の左手に飯豊連峰の山々、前方には磐梯山を眺める。会津盆地の北の中心、喜多方を通り、12時19分、会津若松に到着した。
 さあ、これからが大変な只見線の旅だ。


只見線の“はしご湯”に挑戦だ!
 会津若松。12時44分発の小出行きに乗る。この列車の次はというと、16時20分発になってしまう。只見線の列車の本数はきわめて少ない。小出行きは1日に、なんと3本しかない。それと只見行きが1本あるので、全部で4本の列車で只見線の“鈍行乗り継ぎ”をしようと思うのだが、まさに至難の業。難しいとわかっていてもなおかつやってみたいのは、只見線沿線は、知られざる温泉の宝庫だからなのである。

 13時27分着の会津板下で下車し、津尻温泉へと歩いていく。その距離は6キロ。途中には、板下温泉がある。ともに田園の1軒宿の温泉である。距離はちょっと長いけれども、駅前から電話を入れた津尻温泉に宿がとれたので気は楽だ。日暮れまでに、着けばいい。

 板下の町並みを通り抜け、国道49号に出、“山都11km”の標識に従って国道を右折し、あとは一本道の山都街道をただひたすらに歩く。正面に飯豊連峰の山々、右手に磐梯山を眺める。会津名産“みしらず柿”の収穫の盛りで、あちこちの柿園で摘み取りがおこなわれていた。

 会津板下駅から1時間以上歩いてたどり着いた板下温泉では、一軒宿「つるの湯・磐鏡荘」(入浴料300円)の湯に入った。湯の中で歩き疲れた足をよくもみほぐす。これが効くのだ。湯から上がり、さらに歩き、夕日が飯豊連峰の山々を赤く染めるころ、津尻温泉の「滝の湯旅館」に到着。ホッとする瞬間。ここはぼくにとっての、思いでの温泉宿なのだ。

 1991年、東京からバイクでサハリンに向かった。本州を走り、北海道を走り、稚内港からロシア船でサハリンのホルムスク(旧真岡)に渡った。その「東京→青森→稚内」の途中で1晩、津尻温泉に泊まったのだ。
“滝の湯旅館のおかみさん”は、
「あー、あのときの……」
 と、うれしいことに、ぼくのことをおぼえていてくれた。

 泊まり客に旧豊原(ユジノサハリンスク)生まれの人がいて、サハリン談義に花が咲いたこともあって、よけいにおぼえていてくれたのだろう。

 津尻温泉は近郷近在の人たちには人気の弱食塩泉の温泉。建て替えられたばかりの新しい建物。当然、湯船も新しく、石づくりになっている。夕食前にはさっと入り、夕食後に長湯する。湯につかりながら、「今年はよかった、大豊作だ」と、稲の収穫を終えた地元の人たちの話を聞く。いかにも骨休めで温泉にやってきたという風情で、みなさんの表情には安堵の色が浮かんでいた。


体に一番よく効く温泉は‥‥
 翌朝は5時に津尻温泉を出発。会津板下駅まで歩き、6時54分発の小出行き一番列車に乗る。2両編成の気動車は次の塔寺駅でゆるやかな峠を越え、会津盆地から只見川(阿賀川最大の支流)の谷間へと入っていく。

 7時17分着の会津柳津で下車し、有名な福満虚空蔵尊(円蔵寺)に参拝。そのあとで柳津温泉「町民センター」(入浴料300円)の湯に入る。モスグリーンの湯の色。只見川を見下ろす展望大浴場だ。

 以前は西山温泉(滝谷駅から入っていく)に近い荒湯から引湯していた柳津温泉だが、1987年に円蔵寺境内の掘削で、毎分510リッター、泉温47度という湯を掘り当てたという。まさに虚空蔵尊のおかげというものだ。

 会津柳津8時45分発の只見行きに乗り、9時08分着の会津宮下で下車。只見線の福島県内の駅は、会津宮下のように、大半の駅に“会津”がつく。時刻表で駅名を見てみると、なんと29駅中17駅が“会津○○”で、只見線は“会津”連発路線なのである。

 会津宮下駅からはキリの並木道を歩く。家の庭先では、おばあさんがクルミを割っている。駅から徒歩5分の宮下温泉「栄光荘」(入浴料350円)の湯に入る。ほかに入浴客もいないので、秋の日の差し込む湯船にゆったりとした気分で入れた。

 宮下温泉からは隣の早戸駅に近い早戸温泉まで歩く。ひと駅とはいっても、距離は8キロほどある。只見川の渓谷を見下ろし、鮮やかに燃える紅葉を眺めながら、国道252号を歩きつづける。なにしろ列車本数の少ない只見線なので、会津宮下発の次の列車というと、5時間後になってしまうからだ。

 早戸温泉では「つるの湯旅館」(入浴料300円)の湯に入った。

 脱衣所こそ男女別々だが、中で一緒になる混浴の湯。傷とか打撲、骨折によく効くといわれる湯だけあって、男性のみならず、女性も次々に入ってくる。

 その年代は幅広く、ぼくがねばって長湯した間にやって来た女性は、30代から60代ぐらいだった。傷のなかでも、とくに手術後の傷によく効くとのことで、東京からやってきたという年配の人は、内臓の手術を受け、退院してまだ10日目でしかないという。奥さんと一緒に来ているのだが、1週間ほど湯治して帰るという。

 湯船は熱い湯、すこし熱い湯、ちょうどいい湯と3つある。飲湯もできる。黄土色をした湯の色。泉質は含芒硝食塩泉。湯船はそれほど広くないので、何人かで一緒に入ると、肌と肌が触れ合うくらいだ。張りのある女性の乳房を目の前にすると、ぼくなど目のやり場にこまってしまうが、湯治客や常連客が多いので、みなさん、男女ともにごく普通に湯につかっている。

 このような雰囲気の混浴の温泉というと、ぼくの知っている限りでは、八幡平山麓の秋田県の赤川温泉がある。
 ところで、栃木県の板室温泉では、混浴の湯治宿に泊まったことがある。そこでは、オバアチャンたちと湯の中で一緒になった。“昔美人”のおばあちゃんたちは、
「兄さん、どこが悪いの? どこも悪いようにはみえないけれど……」

 といいながら、うれしそうにぼくの肌をピチャピチャたたくのだ。青森県・下北半島の恐山の境内にある恐山温泉でもまったく同じような体験をしたことがあるが、おばあちゃんたちはそうやってぼくをからかいながら、それぞれの顔にはまるで子供時代に戻ったかのような無邪気さを漂わせていた。

 温泉が体によく効くのは誰でも知っていることだが、見ず知らずの男女がひとつ湯船の中で、肌を接するようにして入る混浴の温泉こそ、効き目が一番大きいのでないかな……と、ぼくは心密かに思っている。

 混浴の湯で男女が一緒になることによって、男も女も確実に若返るし、体の芯から元気が出てくるというものだ。女は男にとっての元気の源だし、男はやはり女にとっての元気の源なのだ。男と女がいて、はじめて人間の世界になるという、このごくあたりまえのことを混浴の温泉は教えてくれている。

 早戸温泉の混浴の湯から上がると、湯治棟では昼食の最中だった。

 ちょっとのぞかせてもらっただけなのに、キノコ入りのうどんをご馳走になった。カンビールのおまけつきというありがたさだ。湯治棟の和気あいあいの空気がなんともいえずによかった。

 無人駅の早戸駅に行く。まだ、列車の来るまでには時間があっるので、ゴロンと昼寝した。温泉に入ったあとの2、30分ほどの昼寝は天国のような気分のよさだった。

 14時22分発の小出行きに乗る。15時02分着の本名で下車。次の会津越川駅まで歩く。会津宮下→早戸間と同じくらいの距離だ。その途中で、国道252号沿いにある橋立温泉の無料の共同浴場と、只見川対岸の、湯倉温泉「鶴亀荘」(入浴料300円)の湯に入る。橋立温泉は温めの湯、湯倉温泉は熱めの湯。ともに草色がかった赤茶けた湯の色をしている。2湯の湯から上がるころには日が暮れた。

 会津越川18時32分発の小出行き最終列車に乗り、次の会津横田で下車。駅から1キロほどの大塩温泉へ、夜道を歩く。それにしても、夜明け前から、日暮れの後まで、ほんとうによく歩いた1日だ。「温泉は歩いて入るもの!」を実践しているカソリなのだ。

 大塩温泉では、民宿「たつみ荘」に泊まる。馬刺やキノコ料理の夕食を食べ終わると、隣あった共同浴場にいく。入口の料金箱に入浴料200円を入れるようになっているが、泊まり客はタダで入れる。地元のみなさんが次々にやってくる共同浴場。只見川の流れの音が聞こえてくる湯だった。


奥羽山脈の峠越え
 翌朝は会津横田発7時44分の只見線の一番列車で会津若松へ。10時28分着の会津若松では、駅前を歩き、白虎隊像を見、それから磐越西線の「快速ばんだい」に乗り換える。

 郡山までは電化区間。人間の感覚って、おもしろいなあと思う。これは今までにも何度も体験していることだが、只見線の気動車に乗りつづけ、その速度に慣れてしまうと、磐越西線の電車は目のまわるほどの速さに感じられてしまうのだ。

 左手に磐梯山を眺め、猪苗代湖を右手に眺めているうちに、電車は奥羽山脈の中山峠を貫くトンネルに入っていく。峠のトンネルを抜け出ると、同じ福島県でも、“会津”から阿武隈川流域の“中通り”へと世界が変わる。春先に、磐越西線を逆方向で乗ったときのことだ。中通り側は晴天でまったく雪がなかったのに、中山峠を越えた会津側は、一面の雪景色。雪がチラチラ降っていた。

 中山峠は本州を太平洋側と日本海側に二分する中央分水嶺の峠だが、中央分水嶺の峠を境にして、天気がガラリと変わるのは、よくあることなのだ。

 会津側から中通り側に入ると、磐梯熱海で下車し、駅前の「湯元元湯浴場」(入浴料300円)の湯に入る。大浴場。熱い湯と冷たい湯の2つの湯船がある。熱い湯船につかって体が火照ると、冷たい湯船で体を冷やす。そのくりかえしが気持ちいい!


阿武隈山地の峠を見極める
 中通りの中心、郡山盆地の郡山に着くと、ここで磐越西線から磐越東線に乗り換える。13時12分発の平行き。新型車両の3両編成の気動車。ジーゼルのエンジン音が軽やかだ。郡山を出るとすぐに阿武隈川の鉄橋を渡る。前方には、阿武隈山地のゆるやかな山並みが連なっている。
「さー、今度は、磐越東線の温泉だー!」
 と、“三春人形”で有名な三春で降りる。

 磐越東線の第1湯目は、三春駅から徒歩30分の馬場ノ湯温泉。「三ツ美屋旅館」(入浴料350円)の湯に入る。新築の建物で、湯船もきれいなものだった。もう1湯、斉藤ノ湯温泉に行きたかったが、ちょっと距離があるので断念。

 そのかわりに三春駅の次の要田駅まで歩き、第2湯目の要田温泉「あぶくま保養センター」(入浴料350円)の湯に入った。赤茶けた湯。湯につかっていると、ガラス張りになった浴室のすぐ前を磐越東線の列車が通り過ぎていく。要田温泉は、要田駅から200メートルほどの、線路わきにある温泉だ。

 要田発15時45分発の列車に乗り、小野新町へ。その間の30分ほど、ぼくは目をこらして車窓の風景を眺めつづけた。列車のエンジン音にも耳を傾けた。阿武隈山地の分水嶺の峠をみきわめようとしたのだ。だが、難しい。阿武隈山地の上は、中国地方の吉備高原に似た高原状の地形だからである。

 だが、さすがに“峠のカソリ”、日本の1000峠を踏破(1994年11月に達成)しただけのことはある。菅谷駅と神俣駅のほぼ中間点が峠であることをつきとめた。この峠(ほぼ平らな地形なので、誰も峠だとはいわないが)を境に、西側は中通り、東側は浜通りということになるのだが、その間にもうひとつ必要。“阿武隈高原”だ。

 つまり、福島県の太平洋側は、阿武隈川流域の“中通り”と、“阿武隈高原”、それと太平洋沿岸の“浜通り”からなっているということが、鈍行列車の車窓からだとよくわかるのだ。

“鈍行乗り継ぎ”は、日本列島の骨組みを見る、知るのには、最適の旅の方法だと、ぼくは自信をもってそういえる。車窓の風景を眺めながら地図をみていると、いろいろなことがわかってくる。

 16時15分、小野新町着。この地が、平安時代の絶世の美女、小野小町誕生の地ということで、碑も立っている。そのせいか、一緒に降りた女子高生にも美人が多かった。磐越東線第3湯目は、駅近くの小町温泉。「太田屋旅館」(入浴料350円)の湯に入る。小町温泉も小野小町にちなんで“美人湯”ということで売っている。

 小野新町駅から今晩の宿、第4湯目の日影ノ湯温泉まで歩いていく。その距離8キロ。慣れというのは、恐ろしいものだ。歩いて、歩いて、また、歩いて……の毎日なので、8キロぐらいの距離には驚かない。一軒宿の宿には「素泊まりでお願いします」と頼んであるので、気が楽だ。

“駅前食堂”で満腹にし、夜道を歩く。小野新町の商店街を通り抜け、山中に入っていく。まったく灯がなくなると、けっこう不気味だ。日影ノ湯温泉に到着すると、さっそく湯に入り、湯上がりのビールを飲んだが、歩き疲れたこともあって、目をあけていられずに早々と寝た。ほかに泊まり客もいなかったので、宿全体がシーンと静まりかえっていた。

 翌朝は5時前に宿を出発。前夜と同じ道を歩き、小野新町発6時53分の一番列車、平行きに乗る。7時41分、平着。日本海岸の新潟から、信越本線、磐越西線、磐越東線と乗り継いで太平洋岸の平へと、本州を横断したのだ。

 平からは常磐線で東京へ。福島県内の湯本駅で下車するいわき湯本温泉の共同浴場(入浴料70円)、茨城県内の大津港駅で下車する石尊温泉(入浴料300円)、川尻駅で下車する三京温泉(入浴料300円)に入り、最後は日立発13時33分の上野行きに乗る。7両編成の電車。途中、土浦で8両増結され15両編成となり、16時21分、上野駅9番ホームに到着した。

 前回の上越線・信越本線篇と合わせ、全部で44本の鈍行列車に乗り継ぎ、39湯の温泉に入りまくり、また、上野駅に戻ってきたのだ。

テーマ : 鉄道の旅
ジャンル : 旅行


カソリの林道紀行(41)東北編(12)

みちのく5000(11)下北編
(『バックオフ』1997年11月号 所収)

足掛け3年にも及んだ「みちのく5000」も、
ついに、最北の地、下北半島までやってきた。
そこは、まさにオフロード天国。
おもしろく走れるダートコースが何本もある!
下北半島は、フィナーレを飾るのにふさわしいエリアだ。

◇◇◇
 前回の「津軽」篇を走り終え、青森駅前にゴールしたのは午後9時だ。
 そしてそのまま青森駅前が、今回の「下北」篇のスタート地点になる。

 相棒のカメラマン、B(バースト)武田に、
「さー、気合を入れて行くゾ。これからダート・ナイトランだ」
 と、一声かけて走り出すのだった。

 マシンはカソリがDR250R、B武田がDJEBEL250XC。前回と同じようにスズキコンビで走る。
 青森からR4で野辺地へ。
 R279で下北半島に入り、横浜で国道を右折。
 下北半島横断のダートルート、県道179号泊むつ横浜線を行く。

 青森から80キロ走ったところでダートに突入。
 待望の第1本目のダート。緊張と不安で背筋がゾクゾクッとしてくるところがダート・ナイトランの魅力なのだ。       

 バックミラーでB武田のライトを確認しながら、真夜中のダートを突っ走る。
 キツネやノウサギが何度となく飛び出してくる。横浜町と六ヶ所村境の峠に到達。ここは名無し峠。ライトであたりを照らし、峠を下っていく。

 急勾配のタイトなコーナーが連続する。
 猛烈な睡魔と戦いながらのコーナリング。ハンドルが振れる。ただひたすらに我慢‥‥なのだ。
 10キロのダートを走り、R338に出る。

 その夜は物見崎の灯台の下で野宿。B武田はテントを張ったが、カソリはいつものようにシュラフのみ。眠気の極に達していたので、シュラフにもぐり込んだ瞬間、10秒とたたないうちに爆睡状態だ。

 夜明けとともに目をさましたが、犬の散歩でやってきたオバチャンに、
「よくここで寝られたわねー」
 と、いわれた。            

 なんとつい最近、乳飲み子をおんぶした若い母親が、2歳の女の子を道連れに車で飛び下りた。2歳の女の子の死体は未だに見つかっていないという‥‥。

 早朝の出発。六ヶ所村から東通村に入り、老部橋を渡ったところでR338を左折し、老部川林道を走る。9キロで峠に到達。峠を越えた横浜町側は有畑林道になる。

 ダート15キロの老部川有畑林道を走り切り、陸奥湾側のR279に出た。
 下北半島の中心地むつ市に着くと朝食の弁当を食べ、むつ温泉「湯・トピア」の湯に入り、下北半島東北端の岬、尻屋崎へ。

 行きはR338の横流峠を越え、帰りは県道6号を走ってむつ市に戻ってきたが、白亜の灯台が立つ尻屋崎の風景は目に残る。“本州最涯の地”碑が建っているように“最果て感”の漂ういかにも岬らしい岬なのだ。岬周辺は牧場で、有名な“寒立馬”が放牧されている。

 むつ市から下北半島のシンボル的な存在の恐山へ。

 恐山というのは円錐状火山とまわりの外輪山の総称で、中央にはカルデラ湖の宇曽利山湖。ここは862年に慈覚大師によって開山されたといい伝えられているが、立山などと並ぶ“日本三大霊場”のひとつで、「いたこ」の口寄せで知られるように、霊と出会える場所なのだ。

 宇曽利山湖畔の荒涼とした風景の中にはいくつもの地獄がある。

 恐山の温泉「花染の湯」に入り、門前で昼食のそばを食べ、第3本目のダート、宇曽利山湖から流れ出る正津川の渓流沿いの正津川林道を走る。ダート8キロ。けっこう山深い風景で、途中、バッタリとニホンカモシカに出くわした。

 大畑の町に入り、下北半島のイカ漁の中心、大畑漁港を見たあと、大畑川沿いの道を奥へと走っていく。

 下北半島随一の渓流美を誇る薬研渓流を見る。ここは紅葉の名所だが、紅葉にはまだまだ早い季節で、川岸の広葉樹は深い緑に覆われていた。

 最奥の奥薬研温泉へ。そこから先は、易国間、佐井、湯ノ川温泉へと3方向にダートが延びている。奥薬研温泉を拠点にして、それら3本のダートを往復するのだ。

 まずは易国間林道。3本のダートの中では一番、道幅が狭く、交通量はほとんどない。峠を越え、大畑町から風間浦村に入る。易国間川の渓流に沿って一気に下ると、津軽海峡に面した易国間の集落に出る。ダート18キロ。

 来た道を奥薬研温泉へと引き返した。往復38キロだ。
 次に県道284号薬研佐井線で佐井へ。

 途中までは道幅の広いダートだが、湯ノ川林道との分岐を右に入ったところから狭くなる。峠へ。急な登りだ。大畑町と佐井村境の峠、大畑越を越え、津軽海峡に面した佐井に出る。ダート20キロ。

 佐井からは来た道を引き返し、奥薬研温泉に戻った。往復40キロだ。
 その夜はキャンパーには大人気の薬研キャンプ場に泊まる。

 キャンプ場の管理人の石切富美子さんは、ぼくの顔を見るなり、
「カソリさんですよね。いつか、きっとここに来てくれると思っていましたよ!」
 とえらく喜んでくれた。

 夜は石切さんを囲んでの大宴会。すっかりご馳走になった。
「夢にまでみたカソリさん。本当に夢のようです。いつまでも男のロマンを求めて前へ前へと突き進んで下さい」
 と、石切さんはそんな励ましの言葉をぼくのノートに書いてくれた。
 ありがとう!

 翌朝は夜明けとともに出発。前日の県道284号薬研佐井線を走り、分岐点を直進し、湯ノ川林道に入っていく。峠までのアプローチが長い。林道沿いに、ブナの大木を何本も見る。       

 大畑町と川内町境の峠に到達。ここでもブナの大木を見る。湯ノ川林道のこの峠は名無し峠だが、ブナの大木がきわめて象徴的なので、ブナ峠ぐらいの峠名をつけたいところだ。峠を一気に下り、湯ノ川温泉へ。ダート27キロ。

 ここでもやはり、来た道を引き返し、奥薬研温泉に戻る。
 往復54キロの湯ノ川林道だ。

 ここまで全部で6本のダートコースを走ったが、奥薬研温泉発の3本のダートをすべて往復したこともあって、ダート走行距離は163キロになった。
「ウーン、よしよし!」
 と、達成感に浸る。

 我らオフロードライダーは単純なもので、1キロでも多くのダートを走れば、もうそれで大満足なのだ。
 奥薬研温泉では「夫婦かっぱの湯」、「かっぱの湯」、それともうひとつの露天風呂と、3つの無料露天風呂のハシゴ湯をする。
 林道のあとの温泉は最高だ。

 薬研キャンプ場に戻り、朝食を食べ、管理人の石切富美子さんに「さよなら」をいって出発。

 大畑に出、下風呂温泉の共同浴場「大湯」に入り、R279で前日の易国間を通り、本州最北端の大間崎へ。
 北緯41度31分30秒の岬の先端には、「本州最北端」の碑が立っている。

 目の前のクキド瀬戸を隔てて600メートルほど沖合の弁天島には白黒に塗り分けられた灯台。その向こうには、北海道の山々が津軽海峡の水平線上に連なっている。

 大間崎からは下北半島の外周を反時計回りにぐるりとまわる。その間では本州最北の温泉、大間温泉を第1湯目に脇野沢温泉、阿部城温泉、湯野川温泉、城ヶ沢温泉と5湯の温泉に入り、むつ市へ。

“温泉湯破行・下北半島篇”といったところで、最後が石神温泉。前日のむつ温泉、恐山温泉から数えると第9湯目の温泉になる。塩分の強い黄土色の湯につかる。大浴場の窓からは、津軽海峡越しに夕陽を浴びて赤々と染まる北海道の山々を眺める。左手には恐山。湯につかりながら眺める見事な風景に酔いしれる。

 夕食を食べたあと、再度大畑まで行き、本州最北の駅、大畑駅前に立った。
 大畑からむつ市に戻り、R279、R4と夜の国道を走り、ゴールの東北道青森料金所へ。

「みちのく5000」は最初の計画(全行程5000キロ、ダート1000キロ)を大きく上回り、全行程10000キロ、ダート2000キロと計画の倍を走って最終回を迎えた。


■林道データ■
1、県道179号
ダート距離   10キロ
絶景度    ☆☆☆☆
走りごたえ度  ☆☆☆
横浜のR279のバイパスから入っていった。途中からダート。標高417メートルの名無し峠を越え泊へ。

2、老部川有畑林道
ダート距離   15キロ
絶景度    ☆☆☆☆
走りごたえ度 ☆☆☆☆
R338の老部川のわきから入っていったが、入口からダートなのがうれしい。渓流沿いに走り峠を越える。

3、正津川林道
ダート距離    8キロ
絶景度    ☆☆☆☆
走りごたえ度  ☆☆☆
恐山から薬研温泉に通じる県道4号から入っていった。宇曽利山湖から流れ出る唯一の川、正津川沿いに走る。

4、易国間林道
ダート距離   18キロ
絶景度   ☆☆☆☆☆
走りごたえ度☆☆☆☆☆
奥薬研温泉から奥薬研橋を渡って入っていく林道。峠を越えると、津軽海峡に面した易国間へと一気に下る。

5、県道284号
ダート距離   20キロ
絶景度   ☆☆☆☆☆
走りごたえ度☆☆☆☆☆
奥薬研温泉から大畑川の渓流に沿っていく。このあたりは日本有数の紅葉の名所。大畑越の峠周辺が若干ラフ。

6、湯ノ川林道
ダート距離   20キロ
絶景度   ☆☆☆☆☆
走りごたえ度☆☆☆☆☆
奥薬研温泉から県道284号を7キロ走り、分岐点を直進して入っていく。峠を下ったところが湯ノ川温泉。


■温泉データ■
1、むつ温泉
むつ市の中心、田名部のR279沿いの「湯~とぴあ」(入浴料500円)に入った。ほかに温泉銭湯の「寿湯」、「菊の湯」がある。

2、恐山温泉
恐山境内の温泉。4つの湯屋がある。入山料の500円を払えば無料で入れる。「花染の湯」は混浴。熱めの湯。湯量豊富。硫黄の匂い。

3、奥薬研温泉
ここには3つの無料大露天風呂。以前ここには1軒宿の温泉ホテルがあったが、今はない。薬研温泉には5軒の温泉宿。

4、下風呂温泉
下北半島第一の温泉地。20軒近い温泉宿がある。共同浴場の「大湯」(入浴料240円)に入った。湯量豊富。白濁色の湯には湯の華。

5、大間温泉
本州最北の温泉。1軒宿の「海峡保養センター」(入浴料370円)の湯に入ったが、大浴場の無色透明の湯と赤湯はともに塩分が強い。

6、脇野沢温泉
北限のニホンザルがいる野猿公苑のすぐ近くにある温泉。「脇野沢村保養センター」(入浴料250円)の湯に入る。大浴場。食塩泉。

7、阿部城温泉
川内町阿部城の集落の外れにある無料湯の温泉。場所がちょっとわかりにくいが県道46号から西側に50メートルほど入ったところ。

8、湯野川温泉
共同浴場の「濃々園(じょうじょうえん)」(入浴料300円)は、下北名産のヒバをふんだんに使った趣のある建物。湯野川は歴史の古い温泉。

9、城ヶ沢温泉
R338沿いの「グランドパーク城ヶ沢」(入浴料320円)の温泉。目の前は陸奥湾。大浴場には寝湯、打たせ湯、サウナがある。

10、石神温泉
R279沿いの1軒宿「石神温泉」(入浴料300円)の湯に入る。海水のように塩分の強い黄土色の湯。浴場の窓越しに見る津軽海峡。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


300日3000湯めぐり・データ(6)

「四国編・高松→高松」(2007年3月18日~3月29日)

(香川)
0990、柏原渓谷温泉「柏原渓谷キャンプ村」
0991、塩江温泉「行基の湯」(310円)
     清水温泉(廃業湯)
     薬師湯温泉(入浴のみは不可)
0992、さぬき温泉「さぬき温泉」(500円)
0993、貝温泉「貝温泉」(330円)
0994、奥の湯温泉「奥の湯温泉」(350円)
     東山温泉(休業中)
0995、香南楽湯温泉「香南楽湯」(700円)
0996、高松クレーターの湯温泉「きらら」(600円)
0997、仏生山温泉「天平湯」(600円)
0998、国分寺温泉「はくちょう温泉」(400円)
0999、ながお温泉「ツインパルながお」(600円)
1000、大串温泉「グリーンヒル大串」(1泊朝食 6825円)
1001、カメリア温泉「カメリア温泉さんがわ」(600円)
1002、みろく温泉「ゆ~とぴあみろく温泉」(500円)
1003、絹島温泉「ベッセルおおち」(700円)
1004、白鳥温泉「白鳥温泉」(400円)

(徳島)
1005、御所温泉「御所温泉観光ホテル」(1000円)
1006、土成温泉「御所の郷」(600円)
1007、あせび温泉「やすらぎの郷」(500円)
1008、あいあい温泉「あいあい温泉」(500円)
1009、月ヶ谷温泉「月の宿」(1泊朝食5800円)
1010、えびすの湯温泉「えびすの湯」(600円)
1011、もみじ川温泉「もみじ川温泉」(500円)
1012、わじき温泉「わじき温泉」(350円)
     船瀬温泉(道路通行止めで行けず…)
1013、千羽温泉「千羽ホテル」(500円)
1014、鬼ヶ岩屋温泉「鬼ヶ岩屋温泉」(800円)
1015、宍喰温泉「宍喰温泉」(400円)

(高知)
1016、北川温泉「北川温泉」(700円)
1017、二十三士温泉「二十三士温泉」(800円)
1018、黒潮温泉「竜馬の湯」(800円)
1019、夢の温泉「夢の温泉」(1泊朝食6000円)
1020、べふ峡温泉「べふ峡温泉」(600円)
1021、笹温泉「笹温泉」(800円)
1022、龍河温泉「龍河温泉」(800円)
1023、長岡温泉「ながおか温泉」(900円)
1024、ホーライ湯温泉「岡豊苑」(630円)
1025、よさこい温泉「土佐ロイヤルホテル」(1000円)
1026、こまどり温泉「こまどり温泉」(400円)
     やなせ温泉(入れず)
1027、馬路温泉「うまじ」(1泊2食7350円)
     畑山温泉(道路工事で行けず…)
     千舞温泉(休業中)
1028、若宮温泉「ニューわかみや温泉」(700円)
1029、高知三翠園温泉「三翠園」(900円)
1030、湯川温泉「ファミリー温泉」(500円)
     円行寺温泉(休業中)
1031、土佐山温泉「オーベルジュ土佐山」(800円)
1032、かがみ温泉「RIO温泉」(300円)
1033、春野温泉「はるのの湯」(900円)
1034、蘇鶴温泉「蘇鶴温泉」(420円)
     「くらうどの湯」(600円)※天然温泉ではない
1035、吾北むささび温泉「吾北むささび温泉」(600円)
1036、伊野温泉「かんぽの宿 伊野」(1泊朝食6550円)
1037、桑田山温泉「そうだやま温泉」(600円)
1038、久礼温泉「黒潮本陣」(600円)
1039、松葉川温泉「ホテル松葉川温泉」(700円)
1040、雲の上温泉「雲の上ホテル」(500円)
1041、郷麓温泉「郷麓温泉」(400円)
1042、下津井温泉「ヘルスセンター」(400円)
1043、十和温泉「十和温泉」(800円)
1044、用井温泉「星羅四万十」(1000円)
1045、足摺温泉「足摺テルメ」(1泊朝食9600円)
1046、海癒の湯温泉「海癒の湯」(950円)
1047、四万十いやしの里温泉「四万十いやしの湯」(630円)
1048、井の岬温泉「井の岬温泉」(600円)
1049、佐賀温泉「ニュー佐賀温泉ゆ~ゆ~」(500円)
     大正温泉(廃業湯)
1050、一の又渓谷温泉「一の又渓谷温泉」(840円)

(愛媛)
1051、一本松温泉「あけぼの荘」(400円)
1052、熱田温泉「津島やすらぎの里」(600円)
1053、高月温泉「成川渓谷休養センター」(1泊朝食4500円)
     成川温泉(入れず)
1054、ぽっぽ温泉「森の国ぽっぽ温泉」(400円)
1055、宝泉寺温泉「クアテルメ宝泉寺温泉」(500円)
1056、薬師谷温泉「薬師谷温泉さがの」(680円)
1057、ゆうの里温泉「ユートピア宇和」(400円)
1058、カロト温泉「カロト温泉」(400円)
1059、鹿野川温泉「鹿野川荘」(400円)
     深瀬温泉(廃業湯)
1060、小藪温泉「小藪温泉」(500円)
1061、少彦名温泉「臥龍の湯」(630円)
1062、ゆう湯さがの温泉「ゆう湯さがの温泉」(680円)
     「オズの湯」(人工温泉ぽいのでパス)
1063、龍王温泉「龍王荘」(300円)
1064、いよ温泉「いよ温泉」(400円)
1065、たかの子温泉「たかの子温泉ホテル」(1泊朝食5000円)
1066、川内温泉「さくらの湯」(400円)
1067、見奈良温泉「利楽」(850円)
1068、南道後温泉「ていれぎの湯」(500円)
1069、とべ温泉「湯砥里館」(350円)
1070、愛彦温泉「愛彦温泉」(980円)※食事とのセット料金
1071、東道後温泉「久米之癒」(450円)
1072、星乃岡温泉「星乃岡温泉大浴場」(550円)
1073、松山駅前温泉「キスケの湯」(550円)
1074、古川温泉「湯楽」(450円)
1075、道後さや温泉「ゆらら」(550円)
1076、道後温泉「道後温泉本館」(400円)
1077、奥道後温泉「ホテル奥道後」(500円)
1078、久万の台温泉「久万の台温泉」(400円)
     「ゆとりあ温泉」(天然温泉ではないのでパス)
1079、権現温泉「権現温泉」(500円)
1080、北条温泉「シーパMAKOTO」(500円)
1081、清正乃湯温泉「清正乃湯」(素泊まり6000円)
1082、鈍川温泉「鈍川温泉ホテル」(400円)
1083、湯ノ浦温泉「湯ノ浦ハイツ」(500円)
1084、ひうちなだ温泉「休暇村瀬戸内東予」(500円)
1085、本谷温泉「本谷温泉館」(300円)
1086、椿温泉「椿温泉こまつ」(400円)
1087、石鎚温泉「石鎚温泉」(450円)
1088、湯之谷温泉「湯之谷温泉」(330円)
1089、武丈の湯温泉「武丈の湯」(400円)
1090、西条温泉「ひうちの湯」(600円)
1091、別子温泉「マイントピア別子」(800円)
1092、新居浜温泉「パナスの湯」(550円)

(徳島)
1093、ふいご温泉「ふいご温泉」(1泊朝食4665円)
1094、土柱温泉「土柱休養村温泉」(500円)
1095、金清温泉「白鳥荘」(300円)
1096、穴吹温泉「水車の里」(500円)
     美馬温泉(休業中)
1097、剣山ゆうま温泉「木綿麻荘」(400円)
1098、美霞洞温泉「みかど温泉」(600円)
1099、美合温泉「ビレッジ美合」(800円)
1100、紅葉温泉「三好市ふれあい紅葉センター」(500円)
     「美濃田の湯」(天然温泉ではないようなのでパス)
1101、白地温泉「小西旅館」(500円)
1102、奥小歩危温泉「奥小歩危温泉」(400円)
1103、大歩危温泉「サンリバー大歩危」(1泊朝食6000円)
1104、賢見温泉「賢見温泉」(500円)
1105、祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」(500円)※内風呂のみの料金
1106、新祖谷温泉「ホテルかずら橋」(1000円)
1107、祖谷秘境の湯温泉「秘境の湯」(1000円)

(香川)
1108、環の湯温泉「環の湯」(500円)
1109、塩入温泉「塩入温泉」(500円)
1110、かりん温泉「かりんの湯」(500円)
1111、ニューレオマ温泉「森の湯」(1050円)※特例で入る
1112、高瀬温泉「たかせ温泉」(600円)
1113、琴禅温泉「琴禅廻廊」(600円)
1114、瀬戸大橋温泉「瀬戸内荘」(1200円)※特例で入る
1115、城山温泉「城山温泉」(550円)

テーマ : 温泉
ジャンル : 旅行


伝説の「賀曽利隆オンライン」(14)

(2000年11月10日)

 あっというまに寒くなり、冬間近を思わせる今日このごろです。

 前回、お伝えしたことですが、韓国へのバイク持ち込み解禁のホームページが開設され、署名できるようになりました。JTBの月刊『旅』編集部に協力をいただき、「韓国へのバイク持ち込み解禁署名運動事務局」も開設されました。アドレスはrurubu.com/ 。その中にある「バイク韓国持ち込み署名」をクリックして下さい。

 署名運動の期間は今日(2000年11月10日)から2001年2月28日までで、3月には金大中大統領に集めた署名を届けます。我々の声をソウルの青瓦台(大統領官邸)に伝えようではありませんか。

 日本の運輸省も動いてくれました。今月21日に開かれる政府間レベルでの日韓観光定期協議での正式議題に、韓国へのバイク持ち込み解禁を取り上げてくれるそうです。おおいに期待しようではありませんか。

 日本から韓国への渡航者は年間200万人を超えていますが、韓国側は2002年までに500万人を目指しています。バイク解禁はその一助になるし、日韓友好の大きな一歩になるものとぼくは確信しています。

 今日(11月10日)発売の月刊『旅』(12月号)は「韓国大特集」ですが、その中にカソリの今回の「韓国一周3150キロ」も出ています。大きく取り上げられています。どうぞご覧下さい。また「韓国一周」の単行本も来年の3月には出る予定ですのでご期待下さい。

 この本には関釜連絡船の歴史とか、朝鮮戦争の歴史とか、新羅、百済の歴史などもふんだんに盛り込みたいと思っています。


(2000年11月25日)

『世界を駆けるゾ!40代編下巻』(フィールド出版刊)ができました。

 なんともうれしいことですが、『20代編』からはじまった『世界を駆けるゾ!』シリーズも、『30代編』、『40代編上巻』にひきつづいての今回の『40代編下巻』の完成によって、これで完結ということになります。

 4冊の本で合計すると400字詰原稿用紙で2000枚ぐらいの原稿を書きました。

 こうして30年の旅を振りかえったことによって、今までに自分のしてきたことがより鮮明に見え、これから先の、もう30年間の自分のしたいことがより鮮明に見えてきたような気がします。

 50代に足を突っ込んだ今が、我が旅人生のちょうどいい折り返し点だとも思っています。
 ぼくは80になるまでは「世界を駆けるゾ!」を叫びながらバイクに乗りつづけるつもりですので、このあと、かならずや『世界を駆けるゾ!』シリーズの『50代編』『60代編』『70代編』を出しますので、どうぞ末永いおつきあいをお願いします。

 折しも21世紀を間近にする今ですが、20世紀の30年間、世界を駆けめぐってきたぼくとしては、なんとしても21世紀のもう30年間、世界を駆けめぐりつづけたいのです。

 今までの30年間でやってきたことを振り返ると、これからの30年間ではもっと、もっといろいろなことができるような気がするのです。

 バイクは体も心も鍛えてくれる乗物です。バイクに乗りつづけている限り、カソリはいつまでも、きっと「世界を駆けるゾ!」と叫びつづけていることでしょう。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク


「鈍行乗り継ぎ湯けむり紀行」(12)

(月刊『旅』1995年1月号 所収)

車窓から眺める関東の名山
 鈍行列車乗り継ぎの「分割・日本一周」も、いよいよ、東京から北へ。
「関東・東北南部一周」への旅立ちだ。

 5時00分、人影もまばらな上野駅6番ホームに、高崎線の一番列車が入線。胸の躍る瞬間。7両編成の電車だ。その、ガラガラの車内に乗り込む。ワサワサと人波があふれる、いつもの見なれた上野駅とは、ほど遠い光景だ。

 上野発5時13分の高崎行きは、赤羽駅を過ぎると、夜明けの荒川を渡る。白みはじめた東の空には、まるでサーチライトで照らしているかのように、幾筋もの暁の光がさしこめている。

「一番列車に乗ってよかったなあ!」
 と思うし、
「旅に出て、ほんとうによかったなあ!」
 としみじみ思うし、体中に力がみなぎってくるようだし……。

 これからの新潟までの旅が、すばらしいものになるような期待をいだかせてくれるのに十分な夜明けだった。
 埼玉県に入り、大宮を過ぎ、鴻巣を過ぎると、朝日が車内にさしこんでくる。

 右手には赤城から足尾、奥日光へとつづく山々、左手には奥武蔵から奥秩父へとつづく山々が、秋晴れの青空を背に、くっきりとした姿で連なっている。

 利根川の支流、神流川の鉄橋を渡ると、今度は赤城・榛名・妙義の上毛三山が、ぐっと間近に迫ってくる。ギザギザした妙義山の向こうには、浅間山が見える。

 こうして6時57分に高崎に到着。高崎線の一番列車では、車窓を流れていく関東平野、それを取り巻く山々の風景を存分に楽しむことができた。


吾妻線の“駅前温泉”
 高崎は日本鉄道網の要の地。
 ここから上越線と信越本線がはじまるし、吾妻線と両毛線の大半の列車は高崎始発だし、八高線の終着駅にもなっている。さらに下仁田に通じる上信電鉄も出ている。

 高崎駅のホームの立ち食いうどんをすばやく食べ、名物の“だるま弁当”を買い、7時26分発の吾妻線・長野原草津口行きに乗る。
 2両編成の電車が動きだすと、だるま弁当を広げて食べはじめる。

 上越線で新潟県に向かう前に、吾妻線沿線の温泉を総ナメにしようと思うのだ。

 渋川で上越線と分かれる吾妻線は、途中に小野上温泉、川原湯温泉と、“温泉”のつく駅が2つもある。さらに、長野原草津口は草津温泉への玄関口だし、万座・鹿沢口は万座温泉、鹿沢温泉、新鹿沢温泉への玄関口になっている。
 吾妻線は温泉天国を貫く路線なのである。

 吾妻線の第1湯目は、小野上温泉駅で下車する塩川温泉。うれしい駅前温泉。3軒の温泉旅館のほかに、日帰り入浴のみの「小野上村温泉センター」がある。人気の湯で、9時オープンなのだが、30分も前から何人もの人たちが並び、列ができていた。

 9時になると、広い駐車場があっというまに車で埋めつくされてしまうほどの盛況だ。自動券売機で買う入浴券は、400円の2時間券、700円の4時間券、1000円の6時間券、1500円の1日券と細分化されている。設備の整った温泉センターで休憩室も完備している。1500円で1日たっぷりと温泉を楽しめるのが人気の秘密のようだ。男女別の大浴場と露天風呂がある。泉質は食塩泉。源泉が48度と、湯温もちょうどいい。

 第2湯目は、群馬原町駅で下車する岩櫃温泉。中世の山城のあった岩櫃山麓の温泉だ。ところが地図を頼りに駅から10分ほど歩き、山中にはいったところには、朽ちかけた温泉宿が一軒あるだけだった。通りかかった人に聞くと、10年ほど前に廃業したという。

 今回の“鈍行乗り継ぎ”で立ち寄った温泉の中で、このような廃業した温泉というのは鹿児島のラムネ温泉や熊本の戸下温泉があったが、ともに一軒宿なので、もうそれらの温泉に入ることはできなくなってしまった。それが残念だ。

 ここでもいったんは岩櫃温泉を諦めかけたのだが、その人からなんともうれしい耳よりな情報を得た。渓谷をさかのぼっていくと滝があって、その近くに湯が湧き出ているという。
「やったー、それ、行けー!」
 と、足取りも急に軽くなる。

 胸をワクワクさせて渓谷沿いの道を歩く。教えてもらったとおり、二又の分岐を右に行き、滝へ。3段になった滝は、高さ40メートルほど。不動滝とか三段滝と呼ばれているが、なかなかの名瀑だ。滝の下には不動堂。その下に、目指す温泉はあった!

 もったいないことに、パイプから噴き出す湯は、そのままホースで渓谷に流されている。誰もいないのを幸いに、裸になって、ホースから流れ出る湯を全身で浴びた。
「クワー、たまらん!」
 すこし温めだが、かぶり湯するのには十分な湯温だった。


「日本三大美人湯に入ったゾ!」
 吾妻線第3湯目の松ノ湯温泉と第4湯目の川中温泉には、11時55分着の岩島駅で下車し、国道145号を歩いていった。

 国道沿いのリンゴ園のリンゴの木には、枝もたわわに実っている。カキの木も多い。実が鈴なりだ。ひとつ失敬。グチョッとつぶれかかった熟柿はぼくの大好物なのである。
 顔中、ベトベトにしてかぶりついた。

 1時間ほど歩いたところで国道を右に折れ、山中に入っていく。
 まず最初に、松ノ木温泉の一軒宿「松渓館」(入浴料200円)の石膏泉の湯に入る。温めの湯だが、湯量は豊富。

 さらにその奥にある川中温泉の一軒宿「かど半旅館」(入浴料500円)の、同じく石膏泉の湯に入る。内風呂と露天風呂の両方に入ったが、温めの湯なので、長湯できる。さすがに“美人湯”だけあって、肌にやわらかなタッチの湯だった。

 山陰本線篇で入った島根県の湯ノ川温泉と、今までに何度か入っている和歌山県の龍神温泉とともに、この川中温泉は“日本三美人湯”のひとつに数えられている。
「これで、日本三大美人湯の全部に入ったゾ!」
 川中温泉の湯につかりながら、ヤッタネといった満足感を味わうのだった。

「3」の魔力とでもいうのだろうか、3という数字の名数尽くしには、すごく気持ちをそそられる。三山や三河、三関……のたぐいである。

 温泉だと日本三古湯(有馬・白浜・草津)、日本三名泉(有馬・下呂・草津)、奥州三名湯(鳴子・秋保・飯坂)、奥州三高湯(蔵王・白布・高湯)などがあるが、それらの湯には全部入った。日本三美人湯でもそうだが、そのうちのどれかひとつに入ると、どうしても残りの湯にも入ってみたくなるものだ。 

 国道145号に戻ると、今度は川原湯温泉駅に向かって歩く。国道は“関東の耶馬渓”といわれる吾妻川の吾妻峡に沿っている。紅葉のはじまった渓谷美を見ながら歩き、14時25分、川原湯温泉駅に到着。14時57分発の列車に間に合うように、30分1本勝負で、急ぎ足で第5湯目の川原湯温泉へ。駅から1キロほどの共同浴場「王湯」(入浴料300円)に早業で入り、駅への帰り道は下り坂を思いっきり走るのだった。


なつかしの嬬恋温泉
 15時19分、袋倉着。無人駅。ここでは、同じ列車を降りた、東京・赤羽から来た品川さんという同好の士と、吾妻線第6湯目の半出来温泉に一緒に行く。吾妻川をはさんで、駅の対岸にある温泉。半出来の集落にある温泉なのでその名がある。

 一軒宿「登喜和荘」(入浴料300円)の湯に入る。“赤羽の品川さん”はフラッと鈍行列車に乗って旅に出、どこか駅近くの温泉に入るのを無上の楽しみにしている人。湯につかりながら品川さん持参の酒をご馳走になった。1合の酒をグイッとやって、あっというまに空にした。

 温泉の楽しみ方は人それぞれだが、この“鈍行乗り継ぎ”と組み合わせた温泉めぐりは、じつにいい旅の方法だと、“赤羽の品川さん”に会ってよけいにそう思った。

 16時21分、万座鹿沢口着。
 駅前の国道144号を吾妻線終点の大前の方向に向かって10分ほど歩くと、第7湯目の平治温泉に着く。とはいってもよっぽど気をつけていないと、看板も何もないので見過ごしてしまう。

 ぼくはさきほどの品川さんから情報を得ていたのでわかったが、国道から50メートルほど入ったところに、プレハブの湯小屋の温泉がある。入浴料の200円を料金箱に入れるようになっている。

 ここでは、毎夕、長野原から車を走らせてやってくるという、年配の人と一緒に湯につかった。その人は、平治温泉の効能を強調する。

「この湯に入るようになってからというもの、それまでさんざん悩まされていた神経痛がウソのように治ったんだよ。体の調子もすっかり良くなってね」

 その人の話によると、この地方の大地主、黒岩平治さんという人の地所から湧きだした温泉なので、平治温泉なのだという。

 平治温泉から国道144号を歩き大前へ。
 とっぷりと日の暮れたころ、大前駅前の嬬恋温泉に着く。吾妻線最後の、第8湯目の温泉だ。

 一軒宿「つまごい館」に泊まる。ここの湯もいい。いかにも、体に効きそうなのだ。温めの湯で、長湯できる。重曹泉の嬬恋温泉の湯は、アトピーなどの皮膚炎によく効くと定評があるが、飲湯すると糖尿病にもいいらしい。

 湯にはべとつきがなく、サラッとしている。湯量が豊富だ。夕食後、たっぷりと時間をかけて長湯する。ザーザー流れ出る湯の音を聞きながら、ぼくは初めて大前にやってきたときの、あの光景を思い浮かべた。

 吾妻線の長野原―大前間が完成したのは1971年のことで、開通直後に大前にやってきた。そのころは宿もなく、ホームの目と鼻の先に、木枠で囲った無料湯の露天風呂があるだけだった。学校帰りの小学生がランドセルを湯船のわきにおいて、遊び気分で湯に入っていた。そんな子供たちと一緒に入ったのが、ぼくにとっての嬬恋温泉。出発を待つ列車を目の前で眺めながら入る湯だった。


全力疾走した大沢山温泉
 大前発7時23分の一番列車で渋川に戻り、上越線に乗り換える。
 残念ながら、水上周辺の温泉群はパス。清水トンネルを抜けて群馬県から新潟県に入り、10時19分、越後湯沢に到着した。

 上越線の第1湯目は、川端康成の名作「雪国」の舞台で知られる越後湯沢温泉。
 駅から徒歩15分の「湯元共同浴場」(入浴料200円)の湯に入る。川端康成が「雪国」を執筆したという「高半旅館」に隣あった高台にある共同浴場だ。

 新潟県内の上越線はほぼ1時間に1本の列車があるので、“温泉はしご旅”はやりやすい。次の列車までの1時間で、駅周辺の温泉に入るのだ。

 第2湯目は、石打で下車する上野温泉。駅から徒歩15分の上野温泉には3軒の温泉宿がある。そのうち、「湯元・名月荘」(入浴料400円)の湯に入った。宿はひっそと静まりかえっていて、自分のかぶる湯の音だけが、大きな音で響き渡った。

 第3湯目の大沢山温泉は大変だ。大沢駅から片道2キロ以上ある。歩いてはもちろんのこと、ふつうに走っても次の列車に間に合わない。そこで、道端の墓の裏側にザックを隠し、タオルとカメラ、財布だけをもって空身で走る。ひんやりとした峠から吹き下ろす風もなんのその、大沢山温泉に着くころには、大汗でビッショリ。そのかわり、「美沢山荘」(入浴料500円)の木の湯船にドボーンとつかったときの気持ちよさといったらない。温泉は走って入るのにかぎる! 

 ここで長湯はできない。
 すぐさま湯から上がり、着替え、大沢駅へ。
「美沢山荘」のご主人は、
「えー、もう入ったのかい?」
 と、驚いたような顔をしている。

 そんなご主人に「いい湯でしたよ~!」といい残して、全力疾走で峠道を駆け下った。

 第4湯目の六日町温泉では、六日町駅から徒歩10分の「魚とし旅館」(入浴料1000円)の展望浴場に入る。眺望抜群!
 湯につかりながら、眼下に魚野川、対岸には長尾氏の山城のあった坂戸山を眺める。

 第5湯目の浦佐温泉では浦佐駅から徒歩10分の「てじまや」(入浴料600円)の湯に入る。そのあと、3月3日の裸祭りで名高い浦佐毘沙門堂へ。長尾(上杉)氏の守護神でもあった毘沙門天に、越後湯沢から浦佐までの各駅周辺の温泉すべてに入ることのできたお礼の参拝をするのだった。


“日本三大ラジウム泉”の栃尾又温泉
 15時57分、小出着。駅前から栃尾又温泉の「自在館」に電話を入れる。宿泊OK。だが、そこまでは15キロある。この一連の旅では、鈍行列車プラス徒歩という旅の仕方にこだわったが、残念ながらここでは原則を崩し(そのかわり、復路は徒歩)、途中の折立温泉まではバスに乗ることにした。

 越後交通のバスで25分、折立温泉では、国道352号に面した温泉旅館「長者」(入浴料600円)の湯に入る。そこから夕暮れの道を歩きはじめ、大湯温泉へ。

 温泉街の中央にある共同浴場に行くと、入口には「一般の方の入浴は、固くお断りします」と、大きな字で書かれている。そこで共同浴場周辺の温泉旅館を何軒か聞いてまわったが、どこでも断られた。大湯温泉には、入浴のみをさせてくれる宿はないという。

 苦しまぎれに、もう一度、共同浴場に行き、中にいる人たちに、
「あのー、温泉に入らせてもらえませんか…」
 と、断られるのを覚悟で聞いてみた。
 するとありがたいことに、
「どうぞ、どうぞ、入らっしゃい!」
 といわれ、地元のみなさんの言葉に甘えた。

 大湯温泉の共同浴場の湯から上がるころには、あたりはすっかり暗くなっていた。
 夜道を15分ほど歩くと、栃尾又温泉の「自在館」に着く。さっと内湯に入って、夕食をすませると、隣り合ったクアハウス「栃尾又温泉センター」の湯に入る。

 男女別に分かれているが、年配の夫婦が入ってきた。
 ご主人は足の不自由な人で、奥さんが支えていた。入浴中の何人かが、すぐさま手を貸して足の不自由なその人を湯船に入れてあげる。奥さんは何度も頭を下げてお礼をいっている。胸が熱くなるような光景。夫婦の絆の強さを垣間見たが、温泉というのはこれほど大変な思いをしてまでも入らせてあげたいものなのである。

 ここの湯は温めなので、いくらでも長湯できる。2時間以上入っていたが、のぼせたりはしない。それでいて体の芯がポカポカと暖まる。栃尾又温泉は昔から“子宝の湯”で知られているが、このように体を芯から暖めると、きっと子供ができやすくなるのだろう。

 栃尾又温泉は養老年間(717~724年)の開湯といわれるほど歴史の古い温泉で、「自在館」の創業も、江戸初期の慶長年間にさかのぼるという。泉質はラジウム泉。日本第2のラジウム含有量を誇っている。第1位は山梨県の増富温泉か鳥取県の三朝温泉であろうが、これら3湯は、“日本三大ラジウム泉”といってよい。
                                       

温泉のニューフェイス
 翌朝は6時前に栃尾又温泉を出発。小出駅までの15キロの道のりを歩く。栃尾又温泉は秋晴れで、抜けるような青空だったが、魚野川河畔の小出になると、濃い川霧がたちこめていた。

 小出発9時20分の只見線・会津若松行きに乗る。2両編成の気動車。10時04分着の入広瀬で下車。徒歩10分の寿和温泉へ。といっても聞きなれない名前だが、それもそのはずで、ニューフェイスの温泉。

 オープンしたばかりの村営露天風呂(入浴料600円)に入る。赤茶けた湯の色をしている。若干の塩味。この寿和温泉は毎分3700リッターという日本でも屈指の湧出量を誇る温泉で、それを利用しての温水プールやヘルスセンターなどの新しい施設が建設中。近いうちに駅周辺の旅館にも引湯されるという。そうなれば、新しい温泉地の誕生だ。

 ここでは月刊『旅』の読者の山口長生さんに、
「あ、カソリさんですよね」
 と、声をかけられた。

 湯から上がり、休憩室でしばらく温泉談義をかわしたが、山口さんはなんと、この寿和温泉が861湯目の温泉になるという。たいへんな“温泉党”の人なのだ。

 山口さんがたんねんにつけている温泉ノートを見せてもらった。それには、今までに入った温泉が克明に書き記されていた。

 友達と一緒に車でこの近辺の温泉をめぐりをしている山口さんに、
「カソリさん、どうぞ乗って下さい」
 といわれるままに、守門温泉まで乗せてもらった。

「これから湯沢に近い神立温泉に行くつもりですよ」
 という山口さんとはそこで別れ、ぼくは守門温泉の「青雲館」(入浴料450円)の湯に入った。隣りにはSLランドのある温泉だ。

 守門温泉からは上条駅(入広瀬駅のひとつ小出寄り)まで歩き、12時03分発の列車で小出に戻った。


蓮田の中のコンクリート風呂
 小出からはふたたび上越線。12時53分発の長岡行きに乗り、小千谷で下車。徒歩20分の木津ノ湯温泉「篠田館」(入浴料350円)の湯に入る。明治元年の創業という歴史のある温泉宿だ。「篠田館」の湯には、先客がいた。小学校のもと校長先生といったタイプの人で、湯の中でいろいろと話したが、
「ぼくは今、列車に乗り継いで、日本各地の温泉に入っているんですよ」
 というと、“もと小学校の校長先生風の人”は、
「それは、私が今、一番したいこと。でも、世の中のしがらみがありましてね。なかなか、できないものですよ。どうか私の分まで、いろいろな温泉に入ってください」

 と、湯の中で励まされるのだった。
 小千谷から長岡へ。長岡で信越本線の新潟行きに乗換え、押切で下車。地図を見ると、駅の近くに“大口温泉”と出ている。駅周辺のあちらこちらには蓮田がある。レンコン掘りをしている人に聞いてみる。

「大口温泉って、どこですかね?」
「20年くらい前までは温泉宿があったけれど、今はないなー」
 という答え。

 だが、蓮田の中には、今でも湯が湧き出ているという。さっそくその場所を教えてもらい、歩いていく。
 舗装路を外れ、蓮田の中の畔道に入っていく。
「あった!」
 コンクリートで囲った枡の中に、鉄パイプから、勢いよく湯(といっても22、3度くらいなので冷たい)が噴き出している。
「さー、温泉だ!」
 と、裸になって、体ひとつでいっぱいになるようなコンクリートの枡の湯につかった。

 サラッとした肌ざわりの湯。いや、水だ。だが、肌ざわりが、ふつうの水とは違うのがよくわかる。コンクリート風呂(枡)から上がったあとは、いつまでも気持ちがよかった。体の芯がホカホカしてくるような感じなのだ。

 この温泉は天然ガスを掘削中に噴き出したものだという。今は流しっぱなし。もったいない‥。国道8号がすぐ近くを通っているので、温泉センターでもつくればいいのに…とも思ったりするが、それほどの湯量でないのかもしれない。

 それはともかく、吾妻線の岩櫃温泉といい、この信越本線の大口温泉といい、何か、自分だけの温泉を見つけたような満足感を味わうのだった。

 最後は田上駅で下車する湯田上温泉。新潟平野に沈むまっ赤な夕日を眺めながら20分ほど歩く。ここでは「旅館初音」(入浴料600円)の湯に入った。湯田上温泉は、吾妻線の塩川温泉から数えて第21湯目の温泉。湯から上がると、ふたたび駅への道を歩き、田上発17時55分の列車で、新潟に向かうのだった。

テーマ : 鉄道の旅
ジャンル : 旅行


カソリの林道紀行(40)東北編(11)

みちのく5000(10)津軽編
(『バックオフ』1997年10月号 所収)

“津軽”は、特別な響きを持っている。
 今回のエリアHの津軽篇を走りながら、
 何度「津軽」を歌のようにして口ずさだことか‥‥。
 そのたびに、胸がキューンとしてくる。

 津軽篇のメインステージは2ヵ所。
“津軽”のシンボルの岩木山と津軽半島だ。
 岩木山は津軽平野にそびえる独立峰。
 岩木山を一周し、懸命にダートを探したが、短いダートはすべて行き止まり‥‥。

 そのかわり“温泉湯破行・岩木山篇”といったところで、7湯の温泉をハシゴ湯した。 津軽半島では三厩から小泊に通じるダート18キロの増泊林道を往復した。
 ここでも“温泉湯破行”気分で、6湯の温泉に入った。
 津軽は日本でも有数の温泉の宝庫なのだ!


■エリア紹介■
エリアHは東北道の大鰐弘前ICを出発点にし、青森駅前をゴールにするエリア。津軽のシンボル岩木山と龍飛崎のある津軽半島がメインになっている。我らオフロードライダーにちょっと辛いのは、このエリアには目ぼしいダートがほとんどないことだ。
 唯一、例外的にダート18キロの増泊林道があり、それを往復した。

◇◇◇
 津軽にはカメラマンのB(バースト)武田と一緒に行くことになった。
 奇しき因縁とでもいおうか、B武田のお父さんは、我が息子の高校(日大藤沢)の先生なのだ。

“みちのくの狼”カソリのバイクはスズキDR250R、B武田がスズキDJEBEL250XC。ということで、スズキコンビで津軽を走る。

「みちのく5000」では定番になった感のある東京からの東北道一気走り。大鰐弘前ICに着いたのは夜が明けてまもなくのこと。料金所を出たところで、B武田とガッチリ握手をかわし、
「さー、津軽を走るゾ!」
 と、気合を入れるのだった。

 なにはともあれ、まずは温泉。
 大鰐温泉に行き、共同浴場の「若松会館」の湯に入る。ここは6時オープン。早朝にもかかわらず、ワサワサ混んでいた。

 常連客たちは津軽弁の“湯の中談義”をしているが、ほとんど理解できない。でも、それがいいのだ。
「今、自分は津軽に来ている!」
 という強烈な旅の実感を味わえる。

 ここの湯はいい!
 無色透明のやわらかな湯。ビロードの感触で体が包みこまれるようだ。東北道を夜通し走ってきた疲れと眠気がいっぺんに吹き飛んでいく。

 湯から上がると、R7沿いのコンビニで朝食の弁当を食べ、弘前に向かった。

 弘前では、日本の名城、弘前城を歩く。そして“津軽富士”の岩木山に向かって行く。その山麓には温泉が点在しているが、それら岩木山の温泉を五代温泉、百沢温泉、大白温泉、嶽温泉、湯段温泉、大鳴沢温泉という順番で総ナメにした。

 特によかったのは嶽温泉。酸性の白濁色の湯はいかにも体に効きそう。硫黄のにおいがプーンと鼻をつき、湯の華が浮かんでいる。

 この岩木山の温泉でおもしろいのは、湯の色の違い。
 五代温泉は草色、百沢温泉は無色、大白温泉は茶色、嶽温泉は白湯、湯段温泉は黒湯、大鳴沢温泉は赤湯と、見事なくらいに色とりどりの湯なのだ。

 岩木山の温泉湯破行をしたあとは、大鳴沢温泉近くの獣肉料理専門店「たけなみ」で、窓越しに岩木山を眺めながら、猪肉とトド肉の刺し身、鹿肉丼を食べた。
「ドヒェー!」
 と、思わず声が出るほどうまかった。

 岩木山では、何本かのダートに入っていったが、すべて行き止まり。
 最後は小道になり、藪こきになってしまう。山塊を横断するルートが1本だけあった。「これは間違いなくダートだゼ」
 とB武田に宣言したのにもかかわらず、全線舗装の農道だった。
「クソーッ!」
 本物の富士山と違って、“津軽富士”の岩木山には、ダートコースは1本もないのだ。

 ダートを存分に走れなかったもの足りなさを胸にかかえて岩木山をあとにし、日本海側の鰺ヶ沢に出る。
 鰺ヶ沢名物は“焼きイカ”。
 絶品だ。

 とれたてのイカを干し、炭火で焼いた日本海のイカのうまさといったらない。ダートを走れずに機嫌の悪かったカソリは手のひらをかえしたようにニコニコ顔になり、B武田は店のオバチャンに頼んで奥さんに箱で送っていた。

 まあー、いいか。B武田は新婚まもないのだから‥‥。
 B武田の奥さんというのは、某オフロード誌のアイドル編集者“ミオミオ”なのだ。
 ここへ来る途中で出会った“ミオミオ”ファンのオフロードライダーは、
「エーッ、カソリさん、この人がミオミオさんを奪い取った人なんですか」
 と、えらく憤慨していた。

“焼きイカ”に大満足して鰺ヶ沢を後にし、北へ。
 かつては北国第一の港として栄えた十三湊へ。

 食堂でここの名物シジミの入ったシジミラーメンを食べ、木橋を渡り、十三湖の中島にあるキャンプ場に泊まった。B武田はテントを張ったが、ぼくはいつものカソリ流の寝方で、テント無しのシュラフのみ。テント有りでもテント無しでも、1泊の料金が同じなのがちょっぴりシャクなところだ。

 十三湖から北の小泊へ。
 雄乃湯温泉、竜泊温泉の2湯に入り、シーサイドラインの龍泊ラインで龍飛崎を目指す。日本海の海の青さが強烈だ。

 津軽半島突端の龍飛崎の展望台に立つと、津軽海峡の向こうには、北海道がはっきりと見えた。ここでは竜飛崎温泉の「ホテル竜飛」の湯に入り、湯から上がると、ホタテ、イカ、カニ、エビ、海草類と、北海の幸がゴソッと入った「海峡ラーメン」を食べた。

「ホテル竜飛」は龍飛崎の高台上にあるホテルなので、真下には“本州最果て”の龍飛漁港を見下ろす。その眺めのよさが、なんともいえない御馳走。「海峡ラーメン」がよけいにうまくなる。

 龍飛崎を十分に堪能したあとは、いよいよ津軽半島唯一といっていい林道の増泊林道だ。その前にJR津軽線の終着、三厩駅に行く。三厩は松前街道の終着点で、江戸時代はここから蝦夷に渡った。

 三厩駅前の案内板を見ると増泊林道の北にもう1本、算用師峠を越えるルートが出ているではないか。この道は幕末に吉田松陰が通ったということで、“みちのく松陰道”と名づけられていた。

 さっそく算用師の集落から林道に入り、峠を目指したが、途中で行き止まり。その先は徒歩でもけっこうきつそうな山道に変わる。残念無念‥‥。

 ふたたび三厩駅前に戻り、
「さー、行くゾ!」
 と、気合を入れて増川の集落から増泊林道に入っていく。舗装路を2キロほど走ると、待望のダートに突入だ。津軽半島唯一の本格的なダートコースなので、体がゾクゾクッとするほどのうれしさと快い緊張感を感じる。

 それにしても、このうれしさは、一体何なのだろう。
 体中の血が熱く流れる!

 分岐点を右に折れ、渓流沿いに走る。海の近くとは思えないほどの山深い風景。
 渓流を離れ峠へ。三厩村と小泊村の境のこの峠に名前はついていないが、ぼくは増泊峠と呼んでいる。

 増泊峠を下ると小泊ダムのわきに出る。そこで舗装路。ダート18キロの増泊林道だ。
 いったん小泊漁港まで行き再度、増泊林道を走り、三厩に戻った。
 R280で青森へ。
 その途中では、つがる浜名温泉、湯ノ沢温泉、平館不老不死温泉の3湯の温泉に入るのだった。


■林道データ■
1、増泊林道
ダート距離   18キロ
絶景度    ☆☆☆☆
走りごたえ度 ☆☆☆☆
三厩村の増川と日本海の漁港、小泊を結ぶ林道。津軽半島唯一の本格派林道なので、貴重な存在だ。

■温泉データ■                         
1、大鰐温泉
共同浴場「若松会館」(入浴料200円)の湯に入る。ここにはそのほか「霊泉大湯」や「山吹湯」など7軒の共同浴場。津軽屈指の温泉地だ。

2、五代温泉
ちょっと場所がわかりにくいが、県道3号の五代交差点から南に入る。温泉銭湯(入浴料250円)。広い湯船の熱めの湯。

3、百沢温泉
岩木山神社門前の温泉。ここでは境内にある岩木温泉(入浴料300円)の湯に入ったが、境内にはもう1軒、「山陽」があり、ここでも入れる。

4、大白温泉
西目屋村の村営温泉浴場(入浴料300円)。ヒバの木をふんだんに使った建物が、いかにも津軽らしいところだ。茶色の湯で、肌に膜が張るようなヌメリがある。

5、嶽温泉
江戸時代からの湯治場で、津軽随一の名湯。温泉旅館「静遊館」の湯に入ったが、入浴料は超安の200円!

6、湯段温泉
ここには湯治宿が4軒あるが、そのうち「ゆだんの宿」(入浴料300円)の湯に入る。湯につかりながら庭園を眺める。黒湯で、飲湯可。

7、大鳴沢温泉
県道39号沿いの1軒宿(入浴料250円)の温泉。赤湯で、湯にはヌメリがある。熱めの湯と温めの湯の2つの湯船。

8、雄乃湯温泉
日本海を見下ろす1軒宿(入浴料300円)の温泉。湯につかりながら大海原を眺める気分はもう最高だ。

9、竜泊温泉
竜泊ラインのわきにある1軒宿の温泉「青岩荘」(入浴料350円)。ヒバの木をふんだんに使った浴室と木の湯船。塩分の強い無色透明の湯。

10、竜飛崎温泉
龍飛崎の高台にある1軒宿の温泉。「ホテル竜飛」(入浴料500円)の湯に入る。明るい浴室。打たせ湯が気持ちいい。

11、つがる浜名温泉
今別町浜名のR280今別バイパスのわきにある1軒宿(入浴料500円)の温泉。大浴場。打たせ湯あり。

12、湯ノ沢温泉
ちょっとわかりずらいが、平館村の村役場のすぐ近くにある。村営湯(入浴料200円)。大きな湯船。湯量豊富で湯が湯船からあふれ出ている。

13、平館不老不死温泉
湯ノ沢温泉近くにある1軒宿(入浴料300円)の温泉。ここには食堂もある。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク

著者・管理人

Author: 賀曽利隆
Twitter:@kasori3000
Administrator:ウザワ・K

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