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日本食べある記(9)もぐりずしと割子そば

(『市政』1994年8月号 所収)

寝台急行に乗って松江へ
 大阪発22時25分の寝台急行「だいせん」出雲市行きに乗り、山陰の松江に向かった。今では、ほとんどなくなってしまった寝台急行だが、ほかには東海道本線の「銀河」(東京―大阪)や、中央本線の「ちくま」(大阪―長野)、函館本線の「はまなす」(青森―札幌)、宗谷本線の「利尻」(札幌―稚内)があるくらいだ。

 寝台急行のみならず、急行列車はどんどんとなくなっている。私などもよく乗った上野―青森間の2本の急行列車、東北本線経由の「八甲田」と奥羽本線経由の「津軽」が消え去ったのも終この前のことだ。急行列車はこれからもさらに少なくなっていく運命のようだが、すごく寂しい気がする。

 それはさておき、寝台列車はいいものだ。しみじみとした旅情を感じさせてくれる。これは私がいつもすることだが、列車が動きだすと、カンビールをあけ、車窓を流れていく風景を眺めながら飲むのだ。

 寝台急行の「だいせん」は定刻どおりに大阪駅を発車し、福知山線に入っていく。宝塚を通り、23時41分に三田に着く。“三田牛”で知られる三田を過ぎたところで、列車の振動音を子守歌にし、三段ベッドの上段で寝る。「だいせん」は、1時01分に福知山に到着。そこから山陰本線に入っていく。

 鳥取を過ぎところで目がさめた。
 すでに、うっすらと夜が明けている。4時54分、倉吉着。「だいせん」は、ここから普通列車(快速)の出雲市行きになる。

 倉吉を過ぎると、左手の車窓には、中国山地の蒜山の山々が見えてくる。特徴のある三つの峰々。さらに列車が西に進むと、この列車名にもなっている中国地方の最高峰、大山(1729m)が見えてくる。別名“伯耆富士”。平野の向こうにスーッとそそり立つその姿は、思わず手を合わせたくなるほどの神々しさだ。

 赤碕駅に着くと、大山はグーッと車窓にせまってくる。次の中山口駅や、その先の大山口駅は、大山への登り口となる駅だ。伯耆大山駅を過ぎると、大山も後方へと去っていく。

 5時57分、米子着。地元の人たちには申し訳ないのだが、米子はいつも「あれ、鳥取県かな、島根県かな」と、迷ってしまうのだが、鳥取県である。鳥取県東部の因幡の中心、鳥取に対して、鳥取県西部の伯耆の中心になっている。

 米子を過ぎると島根県に入り、“安来鋼”で知られる安来を通り、右手の車窓に中海を見ながら6時37分、列車は松江駅に着いた。

駅弁のもぐりずし
 早朝の松江駅で列車を降り、松江の町を歩く。
 まずはその前に腹ごしらえ。駅構内のレストランや喫茶店はまだしまっているので、売店で駅弁を買った。“大和しじみのもぐり寿し”。駅の待合室で食べ、それを朝食にする。

 駅弁の蓋をあけると、ご飯の上にはヤマトシジミが敷きつめられ、さらにその上には、宍道湖の夕陽に見たてたという紅ショウガをのせ、夕陽に揺れるさざ波をあらわしたという錦糸卵を散らし、宍道湖の夕景色をつくりだしている。

 さらに宍道湖名産のモロゲエビとシラウオをのせ、トビウオ(この地方ではアゴといっている)からつくる「野焼きかまぼこ」をそえている。見ためには、ちくわにそっくりなかまぼこで、昔は野天で焼いたところから「野焼きかまぼこ」の名があるという。

 宍道湖の湖畔に位置する松江は“水都”で知られているが、その宍道湖はサロマ湖や浜名湖と同じような汽水湖(海水と淡水が混じり合っている湖)で、魚介類の豊富な湖である。

“水都”松江の味覚といえば、宍道湖でとれる魚介類。とくに“宍道湖七珍味”がよく知られている。さきほどの駅弁でつかわれていたヤマトシジミやモロゲエビ、シラウオのほかに、スズキ、ウナギ、コイ、アマサギである。

 ところでシジミはみそ汁の具や佃煮と、日本人の食生活には欠かせないものだが、ヤマトシジミのほかにはマシジミやセタシジミ、アワジシジミ、ムラサキシジミなどの種類がある。ヤマトシジミは河口で、マシジミは川や湖でとれる。セタシジミは琵琶湖の水系でとれる。

 これらシジミの中でも一番味がいいといわれているヤマトシジミは、殻の長さが3センチ前後と大きなもので、殻は黒く、光沢がある。北はサハリンから南は九州まで幅広く分布している。年間の漁獲量が15000トンにも達する宍道湖が、日本最大の産地になっている。

 こうして、松江の町を歩きはじめる前に、駅弁の“大和しじみのもぐり寿し”の味覚をとおして松江を知るのだった。

松江のプラプラ歩き
 JRの松江駅から、松江の町を歩きはじめる。目抜き通りの天神商店街を通り抜け、宍道湖から中海へ流れていく大橋川にかかる松江大橋を渡る。松江大橋は風情のある橋で、欄干には擬宝珠がつけられ、橋の途中の展望台には灯籠がある。

 橋の左手を見れば、もう一本下流の橋、宍道湖大橋ごしに宍道湖の湖面が広がっている。この松江大橋周辺の大橋川では、何隻もの小舟が出て、ヤマトシジミの漁をしている。まさに松江の風物詩といったところだ。

 大橋川の対岸に渡り、松江市役所の前を通り、一畑電鉄のターミナル駅、松江温泉駅に行く。

 一畑電鉄というのは、松江温泉駅から出雲市駅まで通じている松江線と、途中の川跡駅から出雲大社前駅まで通じている大社線の二路線から成っている。松江線の沿線には、鉄道名の由来にもなっている一畑薬師がある。薬師口駅からバスで20分ほどの山上にある一畑薬師は、全国に50あまりの分院を持っているが、出雲が本山になっている。

 松江温泉駅の待合室に入り、カンコーヒーを飲みながら、しばらくはボーッとした時間を過ごす。私は駅の待合室が大好きで、地元の人たちのなに気ない会話を聞いているだけで、「あー、今、松江にいる!」といった実感を持つことができるのだ。

 松江温泉駅の先、宍道湖畔には、松江温泉の温泉街がつづいている。高層の温泉旅館・ホテルが建ち並んでいる。昭和46年のボーリングが成功し、源泉を掘り当てた、比較的新しい温泉だ。温泉街の一番奥には、“お湯かけ地蔵”がまつられ、熱い湯が湧きだしている。

 松江温泉ではひと風呂浴びていこうと、立ち寄り湯には絶好の「島根社会保険センター」の展望大浴場に行く。じつに気分よく入れる湯で、湯につかりながら、眼下の宍道湖を見下ろす。宍道湖にも何隻もの小舟が浮かび、ヤマトシジミの漁をしている。

 松江温泉の湯をとおして松江を味わったあと、松江城へと歩いていく。島根県庁の隣が松江城。グルリと濠に囲まれている。

 別名千鳥城ともいわれる松江城には、江戸期そのままの天守閣が残されている。全国に現存する12の天守閣のひとつで、山陰では唯一のものとなっている。

 城下町の松江だが、松江藩は慶長5年、遠江・浜松12万石の城主堀尾吉晴が、毛利氏の減封により、出雲、隠岐の2ヵ国24万石に封ぜられて成立した。

 松江城は、慶長16年(1611年)に、堀尾吉晴が5年の歳月を費やして完成させたもの。堀尾氏3代、京極氏1代のあと、徳川家康の孫にあたる松平直政が城主となり、明治維新までの234年間、松平氏10代の治世がつづいた。そのうちの第7代城主が名君の誉れ高い松平治郷で、号は不昧。治郷というよりも、“不昧公”でよく知られている。

 さっそく、松江城の5層6階の天守閣に登ってみる。太い柱をふんだんに用いた建物だ。各階には、松江藩の歴史にかかわるさまざまなものが展示されている。

 天守閣の望楼“天狗の間”に立つと、松江をとりまく360度の展望が楽しめる。松江の市街地を一望し、宍道湖を眺め、反対側にまわると、島根半島のなだらかな山並みを眺める。眺望抜群。松江城の天守閣は、松江第一の展望台になっている。

 松江城の見学を終えたところで、城内の茶店に入り、出雲名物の割子そばを食べる。

 出雲は、西日本では数少ないそばの名産地。三瓶山(1126m)周辺でとれるそばの味には定評がある。出雲そばの特徴は、甘皮も一緒に挽くので、色が黒っぽいことだ。

 そんな出雲そばの食べ方の代表格が、割子そばである。割子というのは、朱塗りの丸い器のことで、それにそばを盛る。3枚、もしくは5枚を一人前にし、客の求めに応じて追加していく。割子に入れたそばのことを松江では“洗い”という。ゆであがったそばを冷水に落とし、よく洗ってから割子に盛るのでその名があるという。

 松江城のすぐ北側には“塩見縄手”と呼ばれている通りがあるが、その一帯には城下町の面影が濃く残り、武家屋敷などもある。さらに、小泉八雲の記念館があり、見学した。 小泉八雲は、ギリシャ生まれのイギリス人で、本名はラフカディオ・ハーン。明治23年に来日し、松江の人、小泉節子と結婚し、松江をこよなく愛した。

 小泉八雲の記念館を最後に松江駅に戻ったが、半日かけてプラプラ歩いた松江の町は、しっとりとした情感があり、深く心に残るものだった。

テーマ : 国内旅行
ジャンル : 旅行

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