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六大陸周遊1973-74 [完全版] 007

九死に一生を得た!

 トラックバスはドンプーを出発。スンバワ島東部の乾燥したサバンナ地帯を行く。ぼくは運転席の真上から、さらに高い、荷台の屋根に積まれた荷物の上に移った。眺めがさらによくなり、スンバワ島を一望しているかのような気分になった。サハラ砂漠をトラックに乗って縦断したときのシーンが鮮やかによみがえってくる。そのときも積み荷のてっぺんに座ったのだった。
 ところがこれが災いし、あと10キロぐらいで終点のビマに着くというところで、とんでもないアクシデントに見舞われた。突然、顔面を貫く激痛に襲われた。最初は何が起きたのか、さっぱりわからなかったが、声もたてられずにその場にうずくまった。顔を覆った手の指の間からはポタポタと血が流れ落ちてくる。
 道を横切る電線に顔をひっかけてしまい、目をやられてしまった。脳天から「ズッキーン、ズッキーン」と響いてくる強烈な痛みだ。目のまわりがザックリと切れ、まぶたを開けることもできない。「失明したのではないか」という恐怖に襲われる。あいにく少し前までは何人かいた乗客も、「暑いから」と下の座席の方に降りてしまっている。
 時間がたつにつれて、少しずつ、落ちついてきた。まず、そっと左目を開けて見る。大丈夫だ。左目は見える。次に、右目だ。右目を開けようとすると、全身がひきつるような猛烈な痛みに襲われ、開けることができない。これで右目をやられたのがわかった。もうしばらくしてから、今度はこじあけるようにして、右目を開けた。すると、どうだろう、右目も見えるではないか。はっきりとあたりの風景が見える。右目を電線にひっかけた瞬間、ぼくは無意識のうちに目をつぶっていたのだ。
 バスはビマに着いた。屋根から降りると、運転手や助手、他の乗客たちは血まみれになったぼくの姿を見て、驚きの声を上げた。デビッドとエリッヒは、すぐに病院にいかなくてはダメだと言った。
 ぼくはまず、傷がどんな具合なのか、見ることにした。運転手に鏡を借りた。左目を開けて自分の顔を見た。なんとも情けない顔になっている。右目のまわりがザックリと切れ、その傷は鼻から左目の上に延びていた。見た目にはひどい傷だったが、眼球自体はやられていないようなので、ぼくは病院には行かないことにした。これから先の長い旅を考えれば、病院代には一銭も払いたくなかったからだ。
 荷物の中から赤チンを取り出して傷口に塗りたくり、ガーゼをあてて絆創膏で止めた。赤チンが血と一緒に筋になって流れ落ちてくるが、いまさら気にしても仕方ない。心配そうな顔をしてぼくをとりまく人たちには作り笑いをして、
「いやー、もう大丈夫ですよ」
 と言った。
 ぼくたち3人はトラックを乗り換え、スンバワ島東端のサペに向かった。そこから次のフローレス島に渡るのだ。
 ビマからサペまでは、なんとも苦しい道のりだった。道がさらに悪くなり、揺れもひどくなる。トラックが大きく揺れるたびに、頭をブチ割られるかのような痛みに襲われた。ギューッと手を握りしめ、「一刻も早く、サペに着いて下さい!」と祈った。
 サペに到着すると、警察でパスポートを調べられた。ぼくは気が気ではなかった。というのは、インドネシアのビザの期限がすでに切れているのだ。ビザを延長するためには20ドルかかるといわれていたので、20ドルを払いたくないばかりに、「えーい、ビザ切れで行こう」と決めたのだ。幸いにも、サペの警察では、ビザ切れの件については一切言われなかった。
「助かった!」
 その夜は警察の一室で泊めてもらった。警官はぼくの顔を見てずいぶんと心配してくれた。消毒薬や塗り薬、新しいガーゼなどを持ってきてくれた。ありがたい。傷口を洗浄し、軟膏をつけ、新しいガーゼに取り替える。傷口の手当てが終わったところで、警官に言われた。
「キミはラッキーだったね」
 警官の話によると、トラックの荷台に乗った乗客が、電線に顔をひっかける事故は少なくないという。最悪の場合は電線が首に入り、死亡事故になるという。「キミは命を落とさなかったし、失明もしなかった。よかった、よかった」と、警官は我がことのように喜んでくれた。インドネシア人はほんとうに心やさしい人たちだ。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク

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