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六大陸周遊1973-74 [完全版] 016

ヒッチハイク開始!

 ダーウィンの中心街から郊外まで歩き、町外れで車を待った。オーストラリアはヒッチハイクでまわるのだ。ここからは大陸を縦断し、南海岸のポートオーガスタへ、そしてシドニーを目指す。
「さー、オーストラリアのヒッチハイク開始だ!」
 と、気合を入れた。
 ほとんど待たずに、320キロ南のキャサリンまで行くロードトレインに乗せてもらった。幸先のよいオーストラリアでのヒッチハイク。ロードトレインというのは2台、もしくは3台のトレーラーを引っ張って走る大型トラックだ。
 ロードトレインは果てしなく広がる原野の中を突っ走る。人の姿を見かけることはほとんどない。無数のアリ塚が、まるで墓標のようにあちこちに見える。夕暮れが近づくと、カンガルーがひんぱんに道路に飛び出してくる。ロードトレインといい、アリ塚といい、カンガルーといい、それらはまさにオーストラリアそのものだった。
 キャサリンに着いたときは、すでに日は暮れ、あたりは暗くなっていた。運転手にお礼を言ってロードトレインを降り、町外れまで歩く。大陸縦断のヒッチハイクはきわめて難しいと聞いていたので、暑さを避けて夜中に走るトラックに狙いをつけた。ところが交通量が少ないので、なかなかうまく乗せてもらえない。車に乗せてもらえないまま、いつしか道端で寝込んでしまった。
 目がさめると、東の空がほんのりと白みはじめていた。広大なオーストラリアの原野が姿を現し、やがて地平線を赤く染めて朝日が昇る。さわやかな朝の空気。だが、それもほんの一時で、すぐさま猛烈な暑さとの闘いになる。おまけに乾燥しているので、やたらとのどが渇く。水筒の水はあまりの暑さに湯に変わっているが、それでも飲まないよりはマシで、湯になった水を飲む。これが気持ち悪い。昼が過ぎる。太陽光線が強いので、頭が割れんばかりにガンガン痛んでくる。それでも炎天下に立ちつづけた。
 車に乗せてもらえないまま、時間だけが過ぎていく。日は西の空に傾き、やがて沈んでしまう。そんなときに自転車に乗った人が、ぼくの前で停まった。さらに驚いたことには「コンニチワ」と日本語で声をかけてくれた。ウォールさんという30代半ばくらいの人で、近くの熱帯植物の研究所に勤めているという。ウォールさんは奥さんとまだ小さな子供を連れて、北は北海道から南は九州まで、3ヵ月あまりも日本をまわった。特に北海道の礼文島と利尻島が忘れられないと言う。
 ウォールさんは背負ったザックの中からコカコーラのカンを取り出すと、「ドウゾ」と日本語で言ってぼくに手渡す。ぼくも「ありがとう」と日本語でお礼を言った。ウォールさんが立ち去ったあとも、その余韻がいつまでも残り、「今晩こそはヒッチを成功させよう!」という新たな元気が湧き出てきた。
 日中はものすごい数の蠅がまとわりついた。日が落ちると、今度はプーン、プーンと蚊の猛攻だ。たちまち顔や腕を刺され、ボリボリとかきむしる。そんなところへ、ウォールさんと奥さんが一緒に車でやってきた。奥さんは20代の、明るい感じのきれいな人。夫妻は「よかったら家に来ませんか」と言う。ぼくは「今晩こそは」といった思いが強かったので、最初は断った。だが、夫妻に「家では2人の子供が楽しみに待っているんですよ」と言われ、夫妻の好意をありがたく受けることにした。
 ウォールさんの家に行くと、キム君とアンジェル君という2人のかわいらしい男の子が出迎えてくれた。上のキム君が夫妻と一緒に日本に行った。日本ではたくさんの友達ができたと言うキム君は、「ほら、見て」と言って、おみやげに買った日本の箸で器用に豆をつまんで見せてくれた。夫妻は日本に行く前に、半年以上も日本語の勉強をした。カタコトの日本語だとは言っても、2人の、できるだけ正しい日本語を話そうという姿勢に心を打たれた。
 利尻島のユースホステルで教えてもらったのだと言って、奥さんは透き通ったきれいな声で、
「チエコハ トーキョウニハ ソラガナイトイッタ…」
 と、大好きだという「智恵子抄」の歌を歌ってくれた。そんなウォールさん一家と夕食をともにし、一晩、泊めてもらった。
 翌朝、朝食をご馳走になると、ウォールさんは自転車で研究所に行く。奥さんはぼくを車で前夜の場所まで送ってくれる。「お昼に食べてね」といって、サンドイッチやフルーツ、飲み物の入った紙袋を手に持たせてくれた。「タカシが無事にシドニーまで行けることを祈ってるわ」と言って、ぼくの頬にキスしてくれた。胸がジーンと熱くなるようなウォールさん一家との別れだった。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク

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