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  11 ,2017

世界を駆けるバイクライダー・賀曽利隆(かそりたかし)。 20歳でのアフリカ一周から、60歳還暦での「300日3000湯」ツアーまで、そしてその先へ・・・。地球をくまなく走り続けるカソリの”旅の軌跡”をまとめていきます。


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Category: カソリ本「一章瓶」

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六大陸周遊1973-74 [完全版] 017
ヒッチハイクで出会う人々

 キャサリンでの3日目。朝から車を待ったが、昼を過ぎても乗せてもらえず、
「やっぱりオーストラリア縦断のヒッチハイクだなんて、無理だったのかなあ…」
 と弱気になりかかった。そんなときに、ついに、1台の乗用車が停まってくれた。
 隣町のマタランカまで行く車。驚いたことに、アメリカン・インディアンの人たちが乗っていた。ぼくが乗ってぎゅうづめになる。彼らはアメリカ人が経営する牧場で働いているとのことだったが、口々に「こんなところに日本人がいるなんて、ビックリしたなあ」という。ぼくも「こんなところでインディアンに会うなんて、すごくビックリしたなあ」と、いかにも驚いたという顔をした。彼らは車内での酒盛りの真っ最中。なんとも陽気なアメリカ・インディアンの人たちだった。
 きっとウォールさん一家の祈りのおかげなのだろう、このあとのヒッチハイクはまさにトントン拍子だった。
 マタランカからは700キロ南のテナントクリークまで、トムの車に乗せてもらった。彼はハンガリー人で、1956年のハンガリー動乱のあと、一家そろってオーストラリアに移住した。
 トムは35歳で独身。溶接工をしている。ひとつの町で数ヵ月働き、たっぷりと金がたまると、2、3ヵ月は旅をする。金がなくなると、また、数ヵ月働くという。トムの車にはキャンピング用具一式が積まれ、釣り竿が何本もあった。釣りが大好きなのだという。夜中の12時を過ぎたところで、車を荒野のまっただなかに停め、そこで眠った。
 翌朝は夜明けとともに走り出す。銅鉱山のあるテナントクリークには昼前に着き、そこでトムと別れた。
 テナントクリークの町中を歩いていると、なんともラッキーなことに1台の車がスーッと近寄ってきて、「アリススプリングスまで行くの?」と声をかけられた。「オー、イエス」とぼくがうれしそうな声を上げると、その車で500キロ南のアリススプリングスまで乗せてもらった。
 運転しているのはガッチリした体つきの、オランダ人のアルベル。オーストラリアには出稼ぎでやってきた。「あと2、3年働いたら国に帰るよ」という。アルベルの車はフォード・ファルコンの新車。広大な原野の中に延びるひと筋の舗装路を、猛烈なスピードで走る。スピードメーターの針は110マイル(176キロ)から120マイル(192キロ)を指している。南回帰線を越え、アリススプリングスまでの500キロを3時間もかからずに走りきった。
 アルベルにはアリススプリングスの中心街で下ろしてもらい、オーストラリア中央部で最大の町をしばらく歩いた。そして南のポートオーガスタを目指し、町外れまで歩いていく。日暮れが近づくと、急にひんやりとした風が吹き始める。
 そんなときに酔っぱらってフラフラ歩いている先住民のアボリジニの男にからまれた。
「オマエはどこに行く?」
「ポートオーガスタ」
「オマエはどこから来た?」
「ダーウィン」
「オーストラリア人か?」
「いや、違う。日本人だ」
「私はアボリジニースだ。知っているか?」
「知っている」
「ブラディー・ネイティブ(ひどい原住民)だ」
「そうは思わない」
「オマエは金を持っているだろ。すこし、くれ」
 ぼくが黙っていると、アボリジニの酔っぱらいは、ふらつく足でやにわに殴りかかってきた。男の奥さんなのだろうか、すこし遅れてやってきたアボリジニの女が「やめなさい!」といって男を止めた。彼女も男ほどではないが、かなり酔っていた。女は男の腕をかかえるようにして去っていった。
 キャサリンでもテナントクリークでもそうだったが、町でまともなアボリジニを見ることはほとんどなかった。たいていのアボリジニは昼間から酔っぱらっていた。ぼくにはそれが、あとからやってきて、力でもって彼らの土地を奪った白人への復讐のようにも見えた。また、オーストラリア政府は邪魔なアボリジニを滅ぼしたいために、彼らに金をバラまき、アルコール漬けにしているのだという話も聞いた。
 あたりは暗くなりはじめていた。ぼくはすっかりヒッチハイクする気をなくし、アリススプリングスの町の方向に戻っていった。すると、さきほどのオランダ人のアルベルの車が通りがかり、止まった。
「タカシ、どうしたんだ」
「今晩は、どこか、その辺で寝ようかと思って…」
 アルベルも野宿に付き合ってくれるという。彼の車に乗せてもらい、涸川に行った。砂地の河原にシートを広げる。降るような星空のもとで、アルベルのクーラーボックスに入っている冷えたカンビールを一緒に飲んだ。何本ものカンビールを空けたところで、アルベルは毛布にくるまり、ぼくはシュラフに入って眠った。
 翌朝、アルベルはアリススプリングスの郊外まで乗せてくれ、「ここで車を待ったらいい」といって、並木道のところで下ろしてくれた。ポートオーガスタまで、あと1350キロ。
「さー、気合を入れてヒッチハイクするぞ!」

テーマ : ツーリング    ジャンル : 車・バイク

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