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六大陸周遊1973-74 [完全版] 023

すさまじい豪雨

 ブリスベーンの中心街を歩き、そのまま国道1号を北へ。「シドニー~ブリスベーン」間の国道1号は「パシフィックハイウェー」だが、ブリスベーンを過ぎると「ブルースハイウェー」と名前を変える。
 ここでは信じられないような出来事があった。
「早く郊外に出よう!」
 と、急ぎ足で歩いているときのことだった。
 鉄道のガードをくぐったところに1台の車が停まっていて、運転している人がぼくを手招きし、「乗りなさい」というのだ。
「キミの歩いている姿を見て、きっとヒッチハイクしているんだなと思ったんだけど、あそこだと道幅が狭くって、車を止められなかった。それでキミが来るまで、ここで待っていたんだよ」
 なんともありがたいことではないか。
 彼はダニーといって、40を過ぎていた。だが、若いころにはヒッチハイクでオーストラリア中を旅した。ぼくの姿を見て「あのころの自分を思い出したんだよ」という。
 ダニーにはよくしてもらった。車中ではサンドイッチをもらった。腹をすかせているぼくを見て、それだけでは足りないと思ったのだろう、さらにハチミツのたっぷりかかったクッキーや白身の魚のフライも出してくれた。ダニーにはブリスベーンから50キロほど先まで乗せてもらったが、別れぎわにはオレンジをゴソッと袋に入れて持たせてくれた。「これから北に行くと、ものすごく暑くなるから」といって、帽子までくれた。
 ダニーと別れたあとは、ブリスベーンから280キロ北のマリーボロまで行く車に乗せてもらった。ブリスベーンを出るときは、きれいに晴れ渡っていたが、マリーボロに向かうにつれて天気は崩れ、やがて雨が降りだした。雨はあっという間に豪雨に変わった。まるで空が抜けたかのような降り方だ。
 丘陵地帯を走っていたが、道路は川に変わり、濁流が渦巻いている。車のワイパーはまったく役に立たず、前方はほとんど見えない。車は10キロ以下のノロノロ運転。そこまで速度を落としても、ボンネットを越えて、バケツでたたきつけるかのような雨水がフロントガラスを打った。
(オーストラリアはその年の年末から翌年の1974年にかけて、広範囲な地域で、記録的な大洪水に見舞われた。ブリスベーンもブリスベーン川の氾濫で大きな被害を受けた。ぼくはそのころはアフリカに渡っていたが、現地の新聞でオーストラリアの大洪水のニュースを見たときは、まっさきにこの豪雨のシーンが頭をよぎった。)
 マリーボロまで来ると、つい今しがたまでのすさまじい豪雨がまるでうそのように、空は晴れ渡っていた。抜けるような青空。強い日差しがさんさんと降りそそいでいた。

テーマ : ツーリング
ジャンル : 車・バイク

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