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カソリの食文化研究所:第13回 浜松編

 (『ツーリングGO!GO!』2003年8月号 所収)

 夏の厳しい暑さを乗り切るのには食べるのが一番。その中でも栄養価の高いうなぎの効果は絶大だ。
 うなぎには良質なタンパク質やカルシウム、ビタミンA、Eなどが豊富に含まれているが、とくに夏バテに効くビタミンAは牛肉や豚肉の160倍も含まれ、ビタミンAのナンバーワン食品になっている。
 それだからこそ、日本には一年でも最も暑い夏の土用の「丑の日」にうなぎを食べる習慣がある。
「うなぎ」といえば浜松である。

 浜松の天然うなぎを食べさせてくれるうなぎ専門店、「うな正」のご主人、伊藤晴夫さんから、
「浜名湖産の天然うなぎが入りましたよ!」
 との電話をもらった。
「それ、行け!」とばかりに、スズキDR-Z400Sで東京から東名を一気に走り浜松へ。気持ちがはやる。
 今となっては食の貴重品にすらなった感のある天然うなぎが食べられるのである。
 思わず「うなぎ、うなぎ!」と声が出てしまう。

 浜松ICで高速を下りると、浜松の三方原町にある「うな正」に直行した。
 調理場でさっそく浜名湖産の天然うなぎを見せてもらう。養殖うなぎとは動きがまるで違う。養殖うなぎと違って大きさも不揃いでまちまちだ。
 息子さんの正樹さんが「これが天然ものの証明です」といって黄色味を帯びた胸を見せてくれた。うなぎの語源は「むなぎ」。「胸黄」からきているのだという。養殖うなぎでは「胸黄」にはならないのだ。
 伊藤さんはさっそく一番の大物をつかむと、裂き台(まな板)にのせる。
 頭を落とし、金串を打って止め、鮮やかな包丁さばきで背中側を裂いていく。生命力旺盛な天然うなぎは頭を落とされてもまだ暴れまくるので、裂くといってもそう簡単なことではない。
 開いたところで肝などをより分け、背骨を取り、向骨と呼ぶ小骨も取る。

 伊藤さんは弾力のある身を親指で押しながら、
「これが天然ものですよ」
 といった。天然ものと養殖ものでは身の弾力が全然違うという。
 開いた身に筋を入れ、2つに切って串刺しにし、強い火力で焼く。
 焼きながら水に入れ、余分な脂分を取り除く。最初は素焼きの「白焼き」。次にタレをつけての「蒲焼き」。このタレが勝負なのだという。
「うな正」秘伝のタレは昔からのもので、醤油、たまり醤油、味醂、砂糖をベースにしている。これを25年間、つぎ足し、つぎ足しながら使っている。
 この中にはうなぎの旨味がたっぷりと蓄えられている。
 伊藤さんは甘味系のタレが多くなっている中で、甘味を抑えたタレにすごくこだわっている。

 焼き上がったうなぎをさっそくいただく。
 まずは「白焼き」だ。タレをつけずにこんがりと焼き上げただけあって、うなぎ本来の持つ香りと味を堪能できる。「白焼き」の上には木の芽(山椒の葉)がのせてある。その香りもいい。「白焼き」は塩をつけて食べるのが一番と伊藤さん。「うな正」では塩にこだわり、対馬産の天然塩、「玄海の塩」を使っている。なるほど、コクのある天然の塩とうなぎは絶妙の取り合わせだ。
 すり下ろしたワサビにもつけて食べてみた。ピリリッと舌を刺激する辛味とうなぎというのは初めて経験するとり合わせで、何か、すごく新鮮な味がした。

 次に「蒲焼き」だ。
 ぷ~んと漂ってくる匂いがたまらない。この匂いだけでご飯を1杯、食べられる。タレのよくしみ込んだ身を一口、口に入れたときは感動の瞬間。さきほどの指を弾き返すような弾力を今度は歯で感じることになる。
「これが天然ものか…」
 と、思わずうなってしまう。
 さらにぼくを驚かせたのは、皮のうまさだった。しっかりとした歯ごたえのある皮、とくに脂分のついたその裏側のうまさといったらなかった。

 食べ終わったときの一言は「生きててよかった!」。
「うな正」を出たときは、ぼくの体にはパワーがみなぎっていた。
 天然うなぎの持つ生命力がまるで自分の体にのり移ったかのようで、「浜名湖一周」を走りはじめると、このまま1000キロでも、2000キロでも走りたくなったほどだ。うなぎは夏場には最高の滋養強壮の食べ物といわれるが、ぼくは1本の天然うなぎをまるごと食べて、それを強烈に実感した。

 日本の東西文化の違いは「うなぎ」にも鮮明に表れている。
 裂き方が違う。関東では頭を落としたあと「背開き」にして裂く。関西では頭をつけたまま「腹開き」にする。
 焼き方も違う。関東では開いた身を2つに切り、白焼きにしたあと、いったん蒸してからタレにつけながら焼く。蒸すことによって脂分が抜け、身も皮も柔らかく、とろっとした口あたりになる。
 それに対して関西では白焼きにしたあと、蒸すことなく、すぐにタレをつけて一気に焼き上げる。こうすることによってしっかりとした歯ごたえと脂ののった濃厚な味覚を味わえる。
 タレも違う。関東では醤油と味醂、砂糖をベースにしているが、関西ではたまり醤油と味醂、砂糖がベースになる。

「うな正」では裂き方は関東風、焼き方は関西風、タレは関東関西混成風。
 関東風と関西風のうなぎ店が混在している浜松をまさに象徴しているかのような「うな正」のうなぎ。
 浜松でうなぎを食べると、この地が日本の東西文化のほぼ中間地点に位置していることが、じつによくわかるのである。

テーマ : 旅の思い出
ジャンル : 旅行

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