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秘湯めぐりの峠越え:第10回 天辻峠編

 (『遊ROAD』1994年4月号 所収)

真冬の峠越えに出発!
 午前5時、目をさますと、土砂降りの雨が降っている。バイクにとって、冬の雨ほど辛いものはない。まだ雪のほうがいい。
「行くと決めたからには、行くんだ!」
 冬用のウエアを着込んで身支度を整え、5時30分、神奈川県伊勢原市の自宅を出発。目指すは奈良県の天辻峠。
 峠を越えて紀伊半島を縦断し、国道168号沿いの温泉に入りまくるのだ。

 バイクは「インドシナ一周一万キロ」(1992年~1993年)を走ったスズキRMX250S。秦野中井ICで東名に入り、たたきつけるような雨をついて走る。
 御殿場周辺が悲惨…。雨が雪に変わり、ボソボソと降っている。転倒して、自分が原因で玉突き事故にでもなったらそれこそ一大事なので、より慎重に、より緊張して走った。裾野ICを過ぎるころには、また、雨に変わり、ホッとするのだった。
 牧ノ原SAで豚汁定食を食べ、体を内側からあたためる。浜松を過ぎたあたりでやっと雨は上がる。名古屋ICからは、東名阪→国道25号(名阪国道)→西名阪→国道24号というコースで走り、伊勢原から500キロの奈良県五条市到着は12時。和歌山線の五条駅前でRMXを止め、天辻峠への出発点にした。

天辻峠を越える幻の五新線
 五条から国道168号で紀伊半島に入り、天辻峠に向かう。
 吉野川(和歌山県に入ると紀ノ 川と名前が変わる)にかかる大川橋を渡ると、国道の電光掲示板には、
「この先、積雪。チェーン携行」
 の、注意がでている。さーて、どうなることやら‥‥。
 天辻峠の周辺はけっこう雪が降るのだ。しかしよほどのことがないかぎり国道168号が閉鎖されることはないはずだ。

 吉野川の支流、丹生川沿いに走り、五条市から西吉野村に入る。山々がグッと間近に迫ってくる。柿が名産なだけあって、山の斜面はいたるところ、柿園になっている。
 梅林で知られる賀名生は難解地名のクイズにも出そうだが、これで“あのう”と読む。 賀名生にある食堂で、名物の柿ノ葉ずしを食べる。1皿に4個のって400円。自家製のものだ。
 柿ノ葉ずしは塩サバを使った押しずしで、柿の葉でくるんである。材料の塩サバは、昔は熊野灘の浜から吉野まで、馬の背にのせて運んだという。馬の背で揺られている間に、水揚げ直後に浜でうったひと塩の浜塩が、サバ全体にほどよくまわり、なじんだのだという。

 この塩サバを薄切りにし、握ったすし飯の上にのせ、ひとつづつ柿の葉でつつむ。それをすし桶に並べ、上から蓋をし、重しをかけておく。こうして一昼夜も押すと食べられるようになるが、2日目ぐらいがちょうど食べごろになるという。
 柿の葉のかすかな香りがサバの生臭さをきれいに消してくれる。柿ノ葉ずしは、海から遠い吉野らしい郷土料理だ。

 国道168号を走っていて目につくのは、幻の鉄道、五新線の軌道。五条と新宮を結ぶ鉄道として計画され、建設されたが、途中で挫折‥‥。
 現在、五条と西吉野村の中心地、城戸までは、鉄道の軌道上をJRバスが走っている。さらにその先、天辻峠を貫くトンネルもほぼ完成しているそうで、ループになっているとのことだが、一度も日の目を見ることもなく、うち捨てられてしまった。
 西吉野村の村役場の所在地、城戸にあるのが、西吉野温泉。数軒の温泉宿。ここでは、「にしよしの荘」(入浴料500円)の湯に入った。寒風を切って走りつづけてきただけに、大浴場の湯につかった瞬間、冬ツーリングの辛さ、厳しさを忘れ、しばし天国の気分を味わうのだった。

雪の天辻峠越え
 いよいよ、天辻峠だ。
 城戸を過ぎると一気に山中に入り、峠道を登っていく。
 登るにつれて急速に寒さを増し、峠に近づくとチラチラと雪が降り出してくる。ゴーグルにこびりついた雪をはらいのけ、歯をカチカチ鳴らしながら峠に到着。
 西吉野村と大塔村の境の天辻峠は標高800メートル。長さ1176メートルの新天辻トンネルが峠を貫いている。峠のトンネルを抜けて大塔村に入ると、同じ奈良県とはいっても、吉野川から十津川の世界へとガラリと変わる。
 周囲の山々は一段と深く、険しくなる。

 新天辻トンネルの真上にある峠上の集落、天辻まで登っていく。わずかな高さの違いだが、雪の降り方に勢いがあり、あたりは一面の雪景色になっている。今は廃校になっているが、天辻の小学校分校の校庭には、「天誅組本陣跡」の記念碑が建っている。
 幕末期、十津川郷士や諸藩を脱藩した尊皇攘夷(天皇を崇敬し外国の勢力を排斥しようとした思想)の急進派たちは、天誅組を結成し、世直しだと京都を目指して天辻峠を駆け下っていった。
「天誅(天が下す罰)だ!」
 と叫んで五条の代官所を襲撃し、さらに奈良盆地入口の高取城を襲撃したが、幕府軍との戦いに破れ去り、天誅組は壊滅した。
 そのような天誅組に屋敷を提供し、食料も提供したのが天辻の庄屋、鶴屋治兵衛。
 天誅組の碑と並んで、鶴屋治兵衛の碑も建っていた。

 ところで、天辻峠の“天辻”だが、辻は峠を考える上ではきわめて重要だ。どういうことかというと、峠はまさに辻なのである。“天辻”の文字通り、峠は天の辻で、天上の十字路、つまり交差点になっていた。こちら側の世界から、峠を越えて向こう側の世界へと登り下りする峠道と、尾根を縫って通る山上道が、峠で交差するのである。
 山上道は今の時代でいえばスカイライン。伊豆スカイラインなどを通ってみるとよくわかるが、尾根上を走っていて、一番下ったところが峠になっている。そこで下から登ってくる峠道と十字に交差するのだ。

 日本には地蔵峠が数多くあるが、山伏峠も各地にある峠名だ。
 山を修行の場とする山伏にちなんだ峠名だが、山伏たちは峠道ではなく、スカイラインの山上道を駆け、自由自在に遠方の世界まで行っていた。山国日本にはこのような山上道が、かつては網の目のように張りめぐらされていた。
 天辻峠では、峠のトンネルを抜け出てすぐのところにある天辻大師温泉(入浴料720円)の湯に入り、峠をくだっていく。峠道の途中にある展望台に立つ。エメラルドグリーンの水の色をした十津川が曲がりくねって流れ、川岸を国道168号が走っている。足下には峠下の集落、坂本が見下ろせた。この十津川の水源は、大峰山脈の山上ヶ岳。上流部は天ノ川という。

国道168号沿いの温泉めぐり
 天辻峠を下り、峠下の坂本からは、十津川に沿って国道168号を走る。
 大塔村から十津川村に入る。日本で一番、村域の広い村だ。まわりは山また山。山々は際限なく連なり、その間を縫って、十津川の本流や支流が深いV字の谷を刻み込んで流れている。
 十津川には何本ものつり橋がかかっている。
 その中でも一番長いのは、“日本一のつり橋”で知られる谷瀬のつり橋。長さが300メートルもある。歩いて渡ってみたが、谷間を吹き抜ける強風にあおられ、グラグラ揺れて怖かった。

 十津川村役場近くにある湯泉地温泉の「旅館むさし」で、一晩、泊まった。
 さっそく湯につかる。真冬の寒さにさんざん痛めつけられたあとだけに、なんともありがたい湯だ。無色透明の熱めの湯が、湯船からあふれ出ている。肌にからまって薄い膜が張るような感じの、いかにも温泉らしい湯だ。
 湯から上がると夕食。ぼたん鍋が出た。このあたりで捕れた猪の肉を使っている。野菜やキノコ、豆腐などと一緒に味噌で煮込んだ猪肉は、野生の味とでもいうのか、シコシコとした歯ごたえがあった。
 夕食を食べおえると近くの公衆温泉浴場「泉湯」(入浴料400円)の湯にも入った。

 翌日は抜けるような青空。雲ひとつない快晴だ。そのかわり、とびきり寒い。
“南国・紀伊半島”のイメージとはほど遠い寒さだった。
 強烈な寒さに立ち向かってRMXを走らせ、十津川村の温泉三昧を開始する。
 まず最初は、十津川温泉の公衆温泉浴場(入浴料200円)。
 つづいて国道を右折し、十津川の支流、上湯川沿いにある下湯温泉と上湯温泉に行く。
 下湯温泉では峡谷の一軒宿「十津川観光ホテル山水」(入浴料500円)の湯に入る。湯量豊富。内風呂の大浴場、河原の露天風呂と入った。

 下湯温泉から上湯川沿いにさらに上流にいったところにあるのが上湯温泉。河原には、2つの露天風呂がある。ひとつは村営で、入浴料は100円。料金は入口の料金箱に入れるようになっている。もうひとつは民営で、入浴料は500円。村営→民営という順番で両方の湯に入ったが、民営はコンクリートで囲って岩をめぐらした広々とした露天風呂なので、400円分だけよけいに気分よく入ることができた。下湯温泉にしても、上湯温泉にしても、関西圏では屈指の秘湯だ。

 十津川村の温泉三昧を終え、国道168号で十津川沿いにさらに南下し、奈良県から和歌山県に入る。
 十津川は熊野川と名前を変える。
 険しい谷を抜け、谷間が広がったあたりに、熊野詣で名高い熊野本宮大社。参道入口でくず湯を飲んだが、トロッとした甘味のおかげで、湯疲れした体に元気がよみがえってくる。本宮を参拝し、門前の茶店で南紀名物のめはりずしを食べ、それをパワー源にして、熊野本宮大社周辺の湯ノ峰温泉、渡瀬温泉、川湯温泉の3湯めぐりを開始した。

 まずは湯ノ峰温泉。昔からの熊野詣の湯垢離場として知られているが、この湯ノ峰温泉こそ日本最古の温泉といわれ、その開湯は神話の時代、成務天皇の時代にまでさかのぼるという。
 ここでは、つぼ湯(入浴料200円)に入った。白濁色をした湯。底に黒い石が敷いてあって、その中から湯が湧いている。
 次に渡瀬温泉。「わたらせ山荘」(入浴料700円)の大露天風呂に入る。
 3番目が川湯温泉。河原の仙人風呂に入る。冬の期間だけできる大露天風呂で、千人風呂をもじっての仙人風呂とのことだが、いやー、ほんとうに広い。1000人は楽に入れるくらいの広さだ。ただ、入浴中の男女ともに水着なのが、趣半減といったところだ。

 ゴールの新宮を目指して国道168号を走る。熊野川は北山川を合わせ、ぐっと水量を多くする。瀞峡へのウォータージェットの出る志古を通り、国道から5キロほど入った雲取温泉(入浴料300円)の湯を最後とし、熊野川河口の町、新宮に出た。
 さすがに南紀だけのことはあって、春のそよ風を思わせるようなあたたかい風が吹いていた。

テーマ : 国内旅行
ジャンル : 旅行

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