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『極限の旅』(山と渓谷社、1973年)その6

 日が沈みかかると、アスラムさんは「もうすぐベラだよ」と言った。やれやれと思わず安堵の胸をなでおろした。すっかり日が暮れ、あたりが暗くなったころ、バスはポラリ河畔に出た。上流で雨が降ったとみえ、かなりの水量。バスは川を越えることができず、アスラムさんは「今晩はここで泊まろう」と言う。乗客は皆、思い思いの格好で寝る用意をした。
 水の減る気配はまるでない。夜が明けるとバスは来た道を引き返し、山を越えて別の道でベラに向かう。昼前ベラの町はずれに着いたが、そこにも川が流れていた。
 対岸の川岸を下って川に入るところには、トラックが一台エンコ、グジャグジャの泥にもぐっていた。それを見てアスラムさんは、助手たちに川岸を登れるような別の道を作らせた。水しぶきをあげて川を越え、勢いをつけて川岸を登ろうとする。だが勾配が急なので、上からトラックに引張ってもらっても登ることはできなかった。
 バスがあとずさりし、川の中に戻ったときであった。なりゆきを見守っていた見物人のなかから叫び声があがった。水遊びをしていた子供の一人が、バスの下に入ってしまったのだ。なにも知らないアスラムさんはなおもバスをバックさせる。子供は敏捷である。とっさに車輪と車輪のあいだに入ったのであろう、全く無傷だった。だがそれを知ったアスラムさんはカンカンに怒り、石を投げながら子供たちを追いはらった。
 何度も新しい道を掘りなおし、皆でバスの後を押し、上からトラックで引張ってもらい、やっとバスは上にあがった。いっせいに大きな拍手がわきあがる。
 クズダールから二五〇キロ、ついにベラに着いたのだ。カラチまでもう道の心配はない。後を振り向くと、苦労して越えてきたバルチスタンの山々が、うっすらと霞んで見えた。

 カラチに戻ってからも、下痢はさっぱりよくならず、おまけに長良丸は入港したものの荷役が遅れており、なかなかハスラーを引き取れない。重苦しい、耐えがたいカラチでの毎日、安宿のベッドで一日中なにするでもなくごろごろしていた。一人天井を見つめていると、八月二日に日本を出てから、ビルマ、インド、ネパールと旅したさまざまな思い出が、ふと脳裏をよぎった。

テーマ : 海外旅行記
ジャンル : 旅行

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