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『極限の旅』(山と渓谷社、1973年)その8

 五十二人乗りの飛行機は、ベンガル湾上のモンスーン期の厚い雨雲の中を飛ぶので、グラグラと大揺れに揺れた。デンマーク人一家の五人、アメリカ人四人、インド人二人、それと私。機内はガラガラである。皆、あまりの揺れのひどさに真っ青である。十字をきる人、合掌する人、大声でうなる人……。ラングーンを飛び立ってから一時間半、雨雲の切れ目から大蛇のようにうねる巨大なガンジス川のデルタが見えはじめた。飛行機がカルカッタのダムダム空港に着陸し、両足がしっかりと地面についたとき、私たちはおたがいに手を握り合い無事を喜び合った。それほどの揺れようであった。
 カルカッタの印象は強烈である。どう表現してよいのかわからない。とにかくすごい町である。
 人、人、人、また人。その人ごみを縫うようにして、市内電車、バス、おんぼろタクシー、自家用車、トラック、オートバイ、スクーター、人力車、輪タク、馬車、牛車、自転車が、けたたましい騒音を残して走り去っていく。
 フグリー川にかかる銀色の橋を渡るとハウラ。ハウラ駅はインド鉄道網の大中心地である。駅の構内に入って、ふたたび驚かされた。まるで魚市場のマグロのように、大勢の人たちが、男も女も子供も、ところかまわずごろごろと寝ころんでいた。そんな人たちを踏まないようにするのは、容易なことではなかった。
 マンダレーにいるとき、八月四日付けのビルマ英字全国紙“ザ・ワーキング・ピープル・デイリー”を読んだが、そのなかに「インドで大洪水―ビハール州政府はガンジス川の氾濫で一千万人以上の住人と、六千の村が被害を受けた……と発表。この洪水は近来になくひどいもので……」という記事があった。汽車でハウラからネパール国境に向かうと、ヒンドスタン平原は一面に水をかぶっていた。それを見て、「あ、これがビハールの洪水だな」と思った。
 どの家も屋根まで水に洗われ、どのくらいの家が流され、どのくらいの人命が失われたのか、見当もつかない。汽車は、海か大きな湖を走っているような感じで、歩くような速度でのろのろと進み、何度も止まった。線路の盛り土は崩れ、引き込み線などは例外なく水中に没していた。ビルマの新聞“ザ・サンデー・サーチライト”紙は「ガンジー首相がビハールの州都パトナで、私はいまだかつてこれほどひどい洪水を見たことがない、と語った」と報道している。
 しかし、私を一番驚かせたのは、洪水の規模ではなく、被災者の明るい表情であった。子供たちはキャッキャと歓声をあげて水遊びをし、男どもはわれ関せずといった表情でゆうぜんと釣糸をたれ、女は女で、せんたくしながらおしゃべりに興じる。彼らが大洪水の被災者だとは、どうしても信じることができない。「国が違うなあ!」と、しみじみ思った。
 毎年雨期になると、川は必ずどこかで氾濫する。今年はその規模が大きかったにすぎないのだ。彼らは強い。私たちのように、大自然から完全に隔離された超過保護、超過密社会に住む人間とは根本的に違うのだ。彼らの中に私は、確かさを見た気がする。どんなことが起きても、どんな天変地異が発生しても、彼らは必ず生きていける、そう思わせる確かさを見る思いであった。
 具体的にいえば、私たちの住む都会東京を例にとると、いまこれほどの災害が起きたら、私たちは死んでしまうに違いない。なぜなら、鉄とコンクリートでできたこの町、ひとたび秩序が失われたら、人々は何をどうやって食べ、どうやって水を飲み、どうやって生きていくのか。米をつくることもできない、魚を取ることもできない、鳥や動物を取ることもできない。野生生物や野草、魚のいる川もない。コンクリートの散乱した大地で、人々は生きるすべを知らない。ガンジスという大自然のなかに生きる彼らとの大きな違いである。
 濁流がうず巻き、ものすごい勢いで流れるガンジス川を越えた。洪水に襲われた地域がやっと終わる。いま見てきた洪水がまるでうそのように、穏やかなヒンドスタン平原の田園風景が広がっていた。





アタシはバイクで旅に出る。―お湯...
国井 律子

テーマ : 海外旅行記
ジャンル : 旅行

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